サーバー室のとなりから

カテゴリ:古い教科書参考書(教研所蔵)

逆さま、イカサマじゃないの

 イカの絵を描いて下さいと言われたら、まず三角形のヒレ、その下に縦長の楕円形、そして下に足(腕)を10本つけるのが普通だろう。
 中学校2年生理科の教科書にイカの解剖が載っている。その教科書のイカはいわゆる足(
腕)が上になっている。「えっ!逆じゃないの」と教科書を見て生徒は思わないのだろうか。
 明治43年に発行された尋常小学理科書、国が初めて発行した6年生用国定教科書の挿絵も下の写真のように足が上になっている。イカの足は頭の上に付き、頭の下に内臓、いわば胴が付いている。頭足類といわれるゆえんである。100年以上も前から教科書は変わっていない。この不思議さが授業で生徒に伝わっているのだろうか。
 
0

日本語の標準語化を知る

 先日、NHK1chで「歴史秘話ヒストリア」を見た。明治時代に日本語の標準語化に取り組んだ話である。300諸藩からなる日本の国には様々な方言があって、日本人同士でも言葉が通じなかった。そこで、ひらがなだけ使おうとか、ローマ字がいいとかいや日本語をやめて英語にしようとか様々な論議があった。上田万年は東京山の手の言葉を標準語にすべく努力し、教科書、文部省唱歌にも取り入れられた。漱石の『吾輩は猫である』も標準語で書かれた。
 この番組で「尋常小学校読本巻1」が取り上げられた。小学校1年生が初めて出会う教科書の言葉が「イス」「エダ」だ。なぜイス(椅子)とエダ(枝)なのか疑問に思っていた。イとエが方言で混じり、通じないための対策、納得である。江戸っ子はシとヒの区別ができない、別のページで「シカ」「ヒト」で扱われている。明治40年ごろの日本の実態である。
   
0

明治22年高等小学読本の「万物の元素」

   今回は巻7の第21課「万物の元素」を取り上げる。当時、知られていた元素はいくつ位あっただろうか。本文をみると、六十有余と記述されている。現在、原子の周期律表を見れば100以上の元素が載っている。もっとも自然界に安定して存在するのは92番のウランまでである。新しい元素を作る試みが世界で進められているが、亜鉛とビスマスから作った113番目の元素は日本が命名権を得た。日本で初めての快挙である。

  さらにこの六十有余の元素を分類して記述が続く、まず金属48種と非金属15種あり、大気は2元素、海水には30元素が含まれるが、今後新しい分析法で分離できれば元素数は増えるだろう。また、砒素やアンチモニーのように金属と非金属の両方の性質をもつものもあると記述されている。

0

明治22年高等小学読本の太陽系

   明治22年初版巻6、第35課の「太陽系」をとりあげる。120年以上前の記述だけに興味がわく。惑星を遊星とよんでいるが、水星から海王星までで冥王星は載っていない。100年以上も後に冥王星が惑星から外されることを予期していたわけではないだろうが。

   また、はやぶさ2がめざす小惑星も小遊星として112個あると書かれている。現在小惑星は軌道が確定し番号が付けられたものだけでも30万を超え、それ以外を含めると60万近い数になるという。火星と木星の間にあるだけに、大きなものしか当時は確認できなかったのだろう。

   遊星の周りを回る衛星、この呼び方は衛星で今と変わらない。地球に月、木星に4個、土星に8個などと載っている。天文学の進歩を実感できる35課である。

0

明治22年の高等小学読本「泳気鐘」

   ずっと明治22年発行の高等小学読本から連載しているが、今回は巻4第26課「泳気鐘」である。泳気鐘というものをご存じだろうか。写真のような釣鐘状の物の中に人間が入り、海の底に沈めて、海底の物品を拾うための水中歩行器械である。

   四角形も近頃多いと書いてある。内部には人が座る椅子がある。鉄製で上部はガラスで採光をとり、皮製の二つの長い管で地上とつなぎ、新鮮な空気の取り入れと汚れた空気の排除に使用する。

「いかなる物体も同時に同所を占有できない」という自然の法則を確かめるコップを使った実験も紹介されている。

0