校長雑感ブログ

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5月22日(月)令和5年度教育実習&2学年英語「have to」

〇本校の卒業生を含む5名が、今日から3週間、教育実習を行います。彼らにとっては「大学の単位を取得する」という面もありますが、我々の後進を育成するという重要なインターンシップ(現場に出る前に仕事の場を体験してみること)の機会だと思いますので、精一杯バックアップしていきます。

 

 

 

須藤昌英

 

5月18日(木)熱中症に注意&2学年国語「説明文(日本の花火の楽しみ)」

〇5月にもかかわらず、今日も気温が30度を超えるとの予報から、熱中症にかかる危険性があります。実際に午前中から体調の悪い生徒が多く、一日をとおして全職員で注意深く見守りしています。

〇最近は特に、「暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)」に注目が集まっていて、判断の目安にしています。暑さ指数(WBGT)は従来の気温だけではなく、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。

〇今日の正午の時点では、「21~25(積極的に水分補給)」でした。ご家庭でも気温にあわせた服装やマスクの着脱、水筒の持参について、再度確認してください。

 

須藤昌英

5月12日(金)部活動保護者会

〇本日の部活動保護者会の中で、私からは日本の部活動のこれまでの経緯を、その背景となる21年前からの学校週休2日制開始や6年前の柏市部活動ガイドライン施行も含めてお話ししました。続いて担当からは、部活動地域移行や本校の活動方針などの説明を行い、その後、各部活動ごとに分かれて顧問から細かい説明や意見交換などを行いました。

〇部活動は、生徒に生涯にわたってスポーツや文化に親しむ能力・態度を育み、体力の向上や健康の増進、技能・技術の向上を図ることのできる教育活動です。またそれ以上に、自主性や協調性・責任感・連帯感などを育成するとともに、部員同士が同じ目標に向かって取り組むことで、豊かな人間関係を築くなど心身ともに健全な育成を図ることができる有意義な教育活動です。地域移行の流れはありますが、以前の勝利主義に戻ることなく、上記のねらいに向けて、取り組んでいきたいと思います。

須藤昌英

5月11日(木)学ぶ意欲と習慣を身に付ける

〇「学校で習ったことを一切忘れてしまった時に、なお残っているもの、それこそ教育だ。」とは、誰が残した言葉かご存じですか?大分昔、私はこの言葉を初めて知ったとき、その意味について深く考えたことを今でもはっきりと覚えています。

〇答えは、20世紀の天才理論物理学者のアルベルト・アインシュタインです。学校では教科書を中心に授業を行っていますが、それは生徒が学ぶために、効率よく配列・整理されているので、ついつい一般の知識なども順番立てて学べるものだと思いこんでいます。しかし、社会に出ればいつどこに、何らかを学べる材料があるのかはわかりません。そのため生徒が学校を卒業してからも困らないように、教育の本質とは、教わった内容だけではなく、それを自分なりに解釈したり統合・分析したりすることができる資質・能力だろうと思っています。

〇またそもそも学校で学習したことをすべて覚えている人はほとんどいません。もし、内容を忘れてしまったとしても、その調べ方を覚えていけば、疑問の答えにたどりつくことができます。調べ方を覚えているとは、過去の体験が経験となり、感覚として身体が覚えている状態だと言えます。あらためてまたアインシュタインの言葉をかみしめています。

〇柏市も「第2次柏市教育振興計画」の中で、この変化の激しい時代を生きていく生徒に、最低限身に付けて欲しい力を設定しています。それを4つの力(コンセプト、チャレンジ、コミュニケーション、コントロール)を「4つのC」と銘打っています。先ほどのアインシュタインの言葉のような教育の実現が、「4C」に込められています。そして2学期に行う「柏市学力・学習状況調査(生徒アンケート)」を分析し、生徒一人ひとりの強みと弱みをはじめ、学級・学年・学校・学区全体、そして柏市全体の強みと弱みを,同じ尺度で測れるようにしています。

〇昨年もこのブログで、「柏市学力・学習状況調査(生徒アンケート)」における本校生徒の分析結果について書きましたが、今年度も本校では、上記のように一番左の「見通す力」の育成を最優先していきます。校長としては、目の前の出来事や将来のことについて、焦らずじっくりと考えていく力を身に付けてほしいと思っています。

須藤昌英

5月10日(水)全国学力・学習状況調査(英語・話すこと)

〇昨日、中学校3年対象で、英語の「話すこと」テストがあり、生徒が音声で回答をするなど、初めてオンラインで実施されました。生徒は個人に貸与されているタブレットを使い、文部科学省の特設のWebシステムへ個人IDとパスワードでアクセスします。そして映し出された画面のイラストを見ながら、ヘッドセットから聞こえる問題に対し、制限時間内で、各自マイクへ向かって口述による解答をします(その音声は録音されます)。

〇ただし、1つの教室内で全員が調査を受けるには、音声が混ざってしまうなどの困難がありますので、クラスを三分割して実施しました。個別の調査ですので、周囲には何を問われているのかはわかりません。終わった生徒に聞いてみると、「周りからぼんやりだけど、英語で答えている友達の声が少し聞こえて来た」や「一人一人がバラバラ答えるから面白かったけど、答えがあってるかどうか分かりません」と答えていました。いつもとの違いに、少し緊張気味な生徒もいたようです。

〇英語で身に付けたい4つの力(4技能)に、「聞く(リスニング)」「話す(スピーキング)」「読む(リーディング)」「書く(ライティング)」があります。これまでも日本の英語教育の現状として、日常生活に関わる基本的な単語の発音や相手の話しかけ(質問)に対し、状況に即して定型表現を用いて適切に英語で応答する能力は、良好であるものの、自分の考えや気持ちなどが聞き手に伝わるように話す力に課題があると指摘されています。そのため定型としての対話練習ばかりでなく、意味を考え、正確に伝える練習が日ごろから大切です。

〇この4技能は、大きく2つに分けられます。「聞く・読む」が受信(インプット)技能と、「書く・話す」が発信(アウトプット)技能で、最近よく紹介していますが、「インプットとアウトプットのバランスの理想は、3:7」と言われますので、前者の「聞く・読む」をベースにしながら、どんどん後者の「書く・話す」に挑戦していった方がよいと思います。

〇乳幼児(あかちゃん)が言葉を覚える際も、親が話している言葉や、「それは◯◯だよ」といった周りの人たちの会話を聞いて、まだ言葉を話せない段階でも、徐々に脳を日本語に適応させています。そしてその言葉を、口真似で何度もつぶやくことを繰り返しているうちに、自然と言えるようになってきます。

〇注目すべきことは、乳幼児が決して無理して覚えているのではなく、楽しみながら覚えていることです。周囲の大人が話している言葉を自分もアウトプットすることで、大人は褒めてくれるし、もしかしたら何よりも自分も同じことができるようになったという自己有用感を感じているのかもしれません。

〇今回は「英語を話す」という調査であり、生徒はどうしても出来栄えや評価を気にしてしまいます。それは仕方のないことだとしても、授業の中では会話する方法を工夫して、乳幼児と同じようなモチベーションをもたせてあげたいと英語科の教員と話をしています。

須藤昌英

 

5月9日(火)対話活動の大切さ(学びはわからないことから始まる)

〇先月から行っている教職員との面接の中で、生徒の授業中の様子を聞き取っています。特に気になるのが、答えがわかっていても発言を避けたり自分の考えを表現することが苦手だったりする生徒がどのクラスにもいることです。生徒の心理面からすると、自分の考えに自信がないことで、発表や質問をしたがらない傾向がありますので、授業の中で意図的に、2人組のペア学習・それ以上の複数人のグループ学習などの小集団交流を取り入れることで、生徒が自分の考えを表現しやすくしたり他者の考えを取り入れたりすることを行っています。

〇指導者側からすると、生徒にペアやグループでの学習による深め合いのよさを実感させることが一番難しく、もしそれが理解できれば、生徒は自ら進んで対話活動をすると思います。学習指導要領が唄う「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、自分の考えを表現し、考えを深め合うことが欠かせません。

〇都立の特別支援学校の主任教諭である川上康則氏は、その著書「教室マルトリートメント」の中で、ペアでの活動等のメリットを次の5つで示しています。

①インプットしたことをアウトプットして記憶に残す

②理解レベルや活動の進捗状況をそろえる

③他の人のフィルターを通して学ぶ

④集中を続けるために、いったんガス抜きする

⑤考えを整理させたり、発表に自信をもたせる

〇教職員には授業を進める中で、次のようなことを意識してほしいとお願いしています。

・意見の交流をためらいなくできるクラスの雰囲気(生徒同士の人間関係を含む)を構築しつつ、各自の発言を共有し、「分からない」や「間違い」から学びが始まることや意見や質問し合うことが深め合うことにつながることを理解させていく。

・生徒自身の気付きや考えから、授業を構成する視点をもち、冒頭の学習問題を工夫して提示し、既習事項との違いに気付かせ、生徒自身に今日のめあてを設定させる。聞く、読む、書く、話すなどの言語環境を整備し、自分の考えをもたせ、自分なりの納得解(まとめ)へと導く。

〇私達教職員の間では、昔から「授業は生もの」といわれ、その時間のゴールは設定しますが、生徒の反応によってどっちに転ぶかわからない面もあります。それが面白いところでもあります。

須藤昌英

5月8日(月)楽しく学ぶ土台は「アハ体験」

〇連休の最後の日と今朝は、風雨が強くあいにくの天気でしたが、また通常の学校生活が再開しました。昨晩からのお子様の様子はいかかでしたでしょうか?火曜日のブログに、人間の脳は、「ボーッ」としている方が、何かを考えているときよりも多くのエネルギーを使っていて、そのデフォルト・モード・ネットワークが働いているときは、あらかじめ蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアや発想が生まれやすくなる、つまり「創造性」に富む可能性があると書きました。私もこの連休で、いつもと違う生活パターンで逆に疲れたこともありましたが、「そうだ!次は~をやってみよう」などの思い付きがいくつかありました。脳の働きは、まだまだ神秘的で、未解明なことが多いそうです。

〇同じく脳の不思議な能力として、昔一時期、テレビなどで話題になりましたが、「アハ体験(a-ha experience)」があります。簡単に言うと、「あ、そうか、わかったぞ!」という心のつぶやきや体験を表す言葉で、やはり「ひらめき」や「創造性」に関する脳のはたらきのことです。よく使われる例として、古典物理学者のニュートンが、木から落ちるリンゴをみて万有引力の法則を発見したことがありますが、あれも日頃から常に一つのことを考え続けた末、フッとした瞬間に知識どうしが結び付く一つのアハ体験だと言えます。

〇少し調べてみると、人間はアハ!体験の最中に、0.1秒ほどの短い時間に、脳の神経細胞がいっせいに活動して、世界の見え方が一瞬で変わってしまうそうです。大げさに言うと、それまでわからないで悩んでいる時の不安感や焦燥感が、ひらめいた時の「ああ、そうか!」で一気に消え去り、と同時に大きな喜びや解放感を感じることによって、今までとは違った自分になってしまうということです。そのような感覚を体験することで、関係する脳の回路を強化され、その後は、わからないことが出てきてもじっくりと考え、ひらめきを育むことの大切さを、楽しみながら学ぶことができるようになります。

〇ただし、アハ体験は、いつ起こるかなど予測は不能で、コントロールもできないという面があります。またそれに近い体験を実際にしても、いつのまにか見過ごしていることもあります。やはり今の自分が何を感じているのかを、常に意識しておく必要がある気がします。生徒達には、毎日の授業の中で、何か一つでいいので、小さなアハ体験をしてもらいたい・・と思っています。「この漢字はこういうときに使うのか!」とか「この数学の公式は確かにこの場合には便利だ!」など、自分で感じたことを書いたり、人に話したりするアウトプットを積み重ねると、普段の学習への意識が高まります。

〇脳科学者の茂木健一郎氏は、インタビューで次のように語ります。

「生きていくのは何が起こるか分からないこと。学校では答えの決まっていることは教えてくれますけど、人生をいかに生きるべきかという教科はありません。何が起こるか分からない人生をどう生きるかという時に、感情がフル回転するんです。脳にはうれしいことが起こった時に放出される『ドーパミン』と呼ばれるものがあります。何か行動してドーパミンが出ると、その回路が強化される。これを強化学習と呼びます。ですから、頭を良くしようと思ったら、何かを学んで喜ばなくてはいけないんです。アハ体験は気付くことに喜んでドーパミンを出してほしいというもの。気付くということに対して、トレーニングする機会はないんです。答えが決まっていることを素早くやることも大事ですけど、それだけでは今の世の中はやっていけない。何か新しいことに気付くことがすごく大切なんです。脳はオープンエンド、一生学び続けるものですから」

〇今日からまた、生徒達にとって学びの日々が再開しています。

須藤昌英

5月2日(火)デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)

〇今日は柏市内一斉に教員の研修会があるため、生徒は3時間授業で下校となります。しかも明日からゴールデンウイークも後半で、5連休に入ります。時間をもてあまし、「何もしないで一日ボーッと過ごすことが多い」という生徒も多いかもしれません。保護者会でも話しましたが、効率(コスパ・タイパ・スぺパ)を優先する傾向のある現代では、これを「時間の無駄」と切り捨てる風潮があります。しかしその一方で、生涯にわたって学び続ける上には、この「無駄」と思われることが、案外意味があるということがわかってきています。

〇それが脳科学の分野で研究が進んでいる「デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network)」という状態で、端的にいうと、ぼんやりした状態の脳が行なっている神経活動のことです。ある一つのことに集中したり注意が払われたりするのではなく、ただぼんやりとしてあれやこれやと雑念している時や睡眠中の脳が示す神経活動のパターンのようです。

〇これはよく車のイメージに例えられ、デフォルト・モード・ネットワークは、車のエンジンのスイッチはONですが実際には走行していない時の「アイドリング状態」です。日常生活の中で、何も考えずにボーッと散歩しているとき、一息つくために好きな飲み物を飲んでいるとき、身体がリラックスした状態で入浴をしているときなどに、デフォルト・モード・ネットワークは活発化しています。

〇脳神経外科医の奥村歩氏によると、脳は以下のプロセスで情報を処理しているのだそうです。

1 入力(インプット):五感を通して情報を収集する

2 整理:(DMN)入力した情報を取捨選択する

3 出力(アウトプット):言葉や行動として表す

デフォルト・モード・ネットワークが重要になるのは、2番目の「整理」段階で、この状態で自分の過去の経験や記憶を整理・統合したり、これから起きる出来事にどう対応したりするかを想定しています。

〇逆にデフォルト・モード・ネットワークの働きが弱いと、脳内で情報が整理されず、物が散乱した机上のような「脳過労」状態になり、インプットした情報が脳に定着しづらくなったり、脳の活動自体が低下してスムーズなアウトプットにつながらなかったりするといった恐れがあるそうです。脳内にたまった情報をスッキリと片づけ、脳疲労を防ぐためにも、DMNをオンにすることは重要です。

〇一番注目したいのは、デフォルト・モード・ネットワークの働きは「創造性」と関係しているらしいことです。これが活発になるとあらかじめ蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。私も先ほどのように散歩などをしてリラックスして過ごす時間に、フッと「そうだ!あれをやってみよう」などの思い付きがあります。これを実行に移すアウトプットは、どこか楽しくたとえ予想通りの結果が得られなくても、次のチャレンジの意欲につながっていることが多いです。

〇ただデフォルト・モード・ネットワークが活発化していると、脳内では通常時よりも数倍以上のエネルギーを必要としているそうです。つまり「ボーッ」としている方が、何かを考えているときよりもエネルギーを使っていることは意外な感じがしますが、それほど重要だともいえます。

〇少し時間があると、大人も子どもスマホとにらめっこして、ボーッとする時間が少ないようです。もしお子様がボーッとしていても、脳はその子に新しいアイデアを用意してくれているかもしれません。ぜひ「何か思いついた?」のような声掛けをしてあげてください。

須藤昌英

5月1日(月)自立とタンポポ

〇今日と明日は、連休の間ということもあり、今朝登校する生徒の表情も様々でした。ある生徒は「明後日からまた休みだから、今週は今日と明日だけ頑張ればいい」と言うかと思えば、別の生徒は「今日と明日も休みなら、もっとゆっくりできたのに・・」と本音をつぶやきます。これだけみても、人の見方や考え方は時として両極端があるなと思います。

〇5月に入ってもまだまだタンポポの花をよく見かけます。もともとタンポポはキク科の多年草で、一年でその生を終えるのではなく、深く土の中に根を張り、冬の寒さにもじっと耐えて咲きます。東京大学名誉教授で国際政治学者の猪口孝氏は、その著書「タンポポな生き方」の冒頭で次のように書いています。引用します。

「『生き方』を考える時、私がいつも思い浮かべるのはあの黄色い花、タンポポです。春に家の近くを歩いていると、塀と道路の狭い隙間や、ヒビの入ったアスファルトの割れ目などから、ヒョロリと首を持ち上げて咲くタンポポを見ることができます。その姿は明るく健気で、『頑張っているね』と思わず声をかけたくなります。(途中略)

踏みつけられても立派に花を咲かせ、次世代につなげるタンポポのような生き方は、青春を生きる人たちにはピッタリだと思います。青春を生きる人とは、年齢が若い人ばかりではありません。よりよい人生の意味を考える人すべてです。先生も親も、教育関連の人も含めた多くの人を指すのです。」

〇中学生には、「自ら主体性をもつ」ようにしてほしいと願っています。そのためには、まずは私も含めて大人である教職員が「ただの自立からその先の自律」へと意識を変えていくことが大切であり、「自立」は、「他人に頼らず、自分で独立した状態」ですが、「自律」は、「自分で考え、行動の主体となった状態」です。どちらも先ほどのタンポポの姿がオーバーラップしてきます。

〇さらに猪口先生は続けます。

「『あなたは自分の性格で好きなところはどんなところですか?』これなら答えられるかもしれません。では、『あなたの欠点と思われるところは?』について考えてみてください。こんなふうに少しずつ自分を分解して考えていくと、自分の輪郭がはっきりしてきます。なぜ自分のことを知る必要があるのかというと、誰でもいつかは自分の力で生きていかなければならないからです。そのときに、自分のことがわからなければ『自立』できません。(途中略)

他人にいわれなくても、自分がどんな人間かを自分で知るためには、まず何かをやってみることです。自分で何かをやろうとしたら、うまくいかなかった、次に方向を変えたらうまくいった、というように行動を重ねることで、だんだん自分の傾向がわかってきます。その傾向が個性と呼ばれる核となるものなのです」

〇生徒が「失敗したくないから・・」と尻込みする気持ちはわかります。でもそれは、「失敗は悪いこと、効率が悪いこと、恥ずかしいこと」という固定観念があるからです。そして生徒の固定観念は、そのほとんどが大人や社会の影響によるものです。以前から学校でも生徒たちに、「効率よく学ばせる」ことを最優先してきた経緯があります。生徒はある意味でその「犠牲者」になっていましたが、これからはそういう状況からはやく脱却しなければなりません。たとえ失敗してもその原因を探しているうちに、修正して再チャレンジしたくなるのが生徒の本性だと私は思います。

〇冒頭に書いた生徒の様子を、明日はもう少し別の視点から分析したいと思います。

須藤昌英

4月28日(金)アウトプットを前提としたインプットと自問自答

〇先日、精神科医の樺沢紫苑氏が著書(アウトプット大全)の中で、「心理学」「脳科学」の見地から、人間が学ぶ際には、「インプット時間の2倍近くをアウトプットに費やすようにする、つまりインプットとアウトプットの黄金比は3:7」と指摘していることを紹介しました。

〇その樺沢先生が、姉妹本である「インプット大全(サンクチュアリ出版)」において、学び方の本質にかかわる内容を書いています。引用させてもらいます。

「ロンドン大学の興味深い研究があります。あるものを暗記してもらう実験で、最初のグループには、『これが終わったらあとにテストをしますので、暗記してください』といいます。もうひとつのグループには、『これが終わったあとに他の人に教えてもらいますので、ちゃんと記憶してください』といいます。同じ時間をかけて暗記してもらい、両方のグループに同じテストをしました。結局、『教える』ことはしませんでしたが、『教えてもらいます』と伝えたグループのほうが高い得点をとったのです。『テストする』も『人に教える』も両方ともアウトプットですが、『教える』ほうが圧倒的に心理的プレッシャーの大きいアウトプットです。心理的プレッシャーのかかるアウトプットを前提にするだけで、実際にはそれをやらなかったとしても、脳は活性化し、より記憶力はアップし、学びの効果が上がるのです。」

〇いかかでしょうか?私も本を読むときに、ただ漠然と読むよりも、例えば「これは雑感ブログに内容を紹介したい」と思ったときの方が、頭に内容がスムーズに入ってきます。学校の授業でもこの心理を利用し、生徒に自分の考えを友達に説明(アウトプット)する機会を多くしています。生徒は相手に説明する際、自分は何がわかっていて、何が不明なのかを瞬時に判断し、説明を聞く相手の心情までを想像しています。

〇もう一つ、日頃から私も考えていることを、樺沢先生が後押ししてくれている箇所があります。引用します。

「『質問』は、自分の興味・関心をキャッチするアンテナを立てるための最も簡単な方法といえます。たとえば、『自分の短所は何か?』と自分で自分に質問します。『コミュニケーションが下手』と答えたならば、『コミュニケーションを上達させる方法』はないのか?とアンテナがたちます。脳は『質問』されると、その『答え』を探そうとするのです。」

〇これはいわゆる「自問自答」にあたります。わからないことを先生などに質問する前に、まずはこの「自分で自分に質問する」ことがその質問を焦点化します。私の経験からもよく考えている生徒は、「自問=素直に疑問を持つ力」と「自答=自分なりに仮説をたてる力」の2つを無意識レベルで繰り返しています。そしてこの力が、どの教科学習においても必要不可欠な力です。

〇この人間の心理をうまく活用しているのが、NHKの「チコちゃんに叱られる!」というクイズ番組です。日常に潜む素朴な疑問をテーマにしており、その質問は「人と別れるときに手を振るのはなぜ?」など、あらためて考えてみるとよくわからない問題ばかりです。でもチコちゃんに問われると、だれでもすぐに考え始めてしまいます。「自問自答」は、それを絶え間なく自分の中でやっているイメージです。逆にいえば私も含め大人の多くは、根本的な問題を「そんなこと考えても無駄」と切り捨て、自問自答する時間を避けている気がします。チコちゃんに「ボーっと生きている」と叱られないようにしないといけません。

須藤昌英

4月27日(木)教職員と面接を行っています

〇本校には私を含めて46名の職員がいて、それぞれの役割や仕事を担うことにより、生徒の健やかな成長・学びに資するように努めています。毎日、職員と職員室などでお互いに顔を合わせた時は、予定の確認や連絡事項などの会話をしていますが、なかなか座ってじっくりと意見交換をすることはこれまで出来ていません。そこで昨日から再来週にかけて、私と職員一人ひとりと年度当初の面接を行っています。

〇生徒にも個性があるように、もちろん職員にも一人ひとりいろいろな持ち味が違います。しかし共通していることも多く、その一部を書いてみます。まず明るく誠実さをもって、生徒の考えや意見をしっかりと受け止めようとする「人間性」、次に教育公務員として自覚と情熱をもち、生徒の興味関心や発言を引き出すための工夫をする「資質・情熱」、さらに教員としての識見を一定以上に備え、授業のねらいを明確にして、生徒の発達段階と場に応じた指導をする「指導力」などです。

〇ただしこれらはすべて最初から身に付けているわけではなく、私もそうでしたが、日々目の前の生徒と接している中で、嬉しいことやうまくいかずに悩んだことなどを自ら内省し、それを次にいかしていこうとする努力によって、段々と自然に仕込まれていくものです。

〇校長にとって、職員との面接の機会はとても貴重な時間です。まずは次のような学校経営の理念を理解してもらうことを目的にしています。

①   生徒の学びを引き出すファシリテーターの教職員

基礎・基本となる知識・技能の定着を図り、それを応用する力、活用する力を育む学習指導を行い、「確かな学力」を身につけさせる。

②   生徒の生活に寄り添うアドバイザーの教職員

生徒一人ひとりの個性や能力を生かした集団づくりに努め、個と集団の成長を促す生活指導を推進し、豊かな心と健やかな体を育む。

③   教職員組織の一員(調整・連携)

校務に関する業務内容と意義を理解し、計画的に取り組み、情報と課題を共有し、的確に業務を遂行する。

〇そしてそれ以上に、職員が先ほどのような自分の良さを気づいていない場合にはそれを伝えつつ、可能な限り本音の部分を傾聴していくようにします。職員の個性やもっている力を把握し、さらに伸ばしてもらい生き生きと働いてもらうことが、必ず最後はそれが生徒への教育にも還元されていくと思います。

〇最後は学校を企業に例えると、「主力商品は授業」でありますので、授業を担当する職員から、「単元のねらいや生徒に身につけさせたい資質能力」、「生徒が困難と感じる点やその克服のための指導上の工夫」などを聞き、私がその授業を来月からこのホームページで紹介していくための日程を調整しています。

〇ただの「人材」ではなく、「人財」である教職員と、今後も年数回の面接の設定をしていきます。

 須藤昌英