校長雑感ブログ

2024年12月の記事一覧

12月20日(金)創立80周年に向けてのワーク&年末大掃除

〇富勢中は2年後に創立80周年を迎えます。市内では同じく昭和22年に新制中学校としてスタートした中学校があと3校(柏中、土中、田中中)あります。本校創立当時は生徒数199名(4学級)で、軍隊の旧兵舎を仮校舎としていた記録が残っています。

〇平成9年の創立50周年には、柏市長をはじめ多くの来賓に来ていただき、創立記念式典を盛大に行いました。その後の60周年、70周年は記念集会という形で、記念誌を発行したり講師を招聘して講演をしたりしました。大きな次の式典は創立100年になります。

〇過去の式典は、教員や地域の方々、PTA役員などの大人が企画・運営していました。これは入学式や卒業式と同様の学校行事であり、来賓をお招きしてみんなでお祝いするという目的がありますので、ある面では仕方ないと思います。

〇ただ私も過去の勤務校で何度か創立記念に関わってきましたが、どうしてもその創立記念の場に立ち会い、本来は主役である生徒たちがお客さまのようになってしまうことが気になっていました。生徒の心の中は「●●周年だからおめでたいことはわかるけど、これからこの学校の歴史をつくっていく私たちは何をしたらいいんだろう?」みたいな気持ちがきっとあったと思います。

〇そこで来る80周年はこれまでとは異なり、生徒会が中心となり自分たちが調べたり考えたりした富勢中や富勢地域の歴史や先輩方の思いを振り返り、これからの未来へのビジョンを共有する場に保護者や地域の方々を招く創立記念集会をしたいと考えています。

〇自分たちの言葉で発表する場に、日頃からお世話になっている保護者や地域の方々への感謝の意を表し、さらによりよい関係性を向上させることを目的としたて実施する「生徒主体の行事」にすることを目指します。

〇そのためのベースづくりとして、1・2学年の生徒会役員たちと校長室でワークショップをしています。主な課題は次の3つです。

●今の富勢中で保護者や地域の方々に自慢できる素晴らしい点やあまり目立たないがこれからも継続していきたいことは何か?

【主な意見】

・素直でフレンドリーな生徒が多い ・友情を大切にし笑顔が多い ・クラスの団結力や雰囲気がよい ・生活のきまりやルールを守っている人が多い ・気軽に挨拶を返してくれる ・昼休みに元気で遊ぶ生徒が多い ・下駄箱の靴がそろっている ・授業も真剣に受けている ・リーダーの声掛けがさかん ・元気で積極的 ・歌声きれい ・黙働清掃ができている ・富中大好きと言える ・委員会も部活動も全力で取り組む ・学校行事に積極的 ・先生方が生徒に寄り添ってくれる ・三大伝統(あいさつ、清掃、歌声)

●来る創立80周年に向けて、今後さらに理想とする富勢中になるために必要なことや取り組みたいことは何か?

【主な意見】

・校内の花を増やし華やかにする ・富勢中学区の小学校の児童に富勢中やその歴史をしってもらう ・80周年ポスター制作をする ・地域とのコラボレーション ・コミュニケーションの活発化 ・富勢中のキャラクター作成 ・周年プロジェクトチーム結成

●これを踏まえて、その狙いを達成するために来年と再来年の生徒会行事をどうするかを話し合いました。体育祭 合唱コンクール あけぼの祭 新規行事 など

【話し合い継続中】

〇今日の午後の職員会議で、生徒会役員が話し合いの進捗内容をプレゼンします。職員会議で生徒が提案するのは異例なことですが、学校の一番の当事者である生徒の声を聞くことも大切です。

〇今日は全校一斉の大掃除を行います。日本では年末に大掃除を行い、「心機一転して新年を迎える」という「しきたり」のようなものがあり、これに異を唱える人をあまり聞いたことがありません。確かに普段は見逃している(見えないふりも含む)場所もきれいにしますと、新しい発見があったり何より気分が明るくなったりします。

〇「仕来り(しきたり)」を辞書で調べますと、「昔からの習慣、ならわし、慣例」とあり、用法としては「~を守る」「~に縛られる」とありますが、この2つでは180度違う姿勢になります。

〇「~守る」は、正しいと信じていることを今まで通りにやることですが、さらに自主・自律的に自らやろうとする意志のもと、「どうせやるなら楽しく」なるように、創意工夫をしていくまでになると、たとえ誰かに「もうそんなことやめたほうがいいよ」と言われたとしても、全く意に介せず、続けていくことができると思います。

〇その一方で「~に縛られる」の方は、自分の気持ちに関係なく仕方なくやることになり、創造性・想像性は生まれません。むしろやる意義や意味、それをやることによる効果などを考えていないので、とにかく「はやく終わればいい」しかないと思います。

〇以前にサッカーワールドカップでは、日本人サポーターが客席のゴミ拾いを自主的にしたり、選手ロッカーが最後きれいに片づけられたりした写真がアップされ、世界から賞賛されていることが話題になりましたが、使用させてもらった場所に感謝していることを行動に示したとも言えます。

〇ただ一部には、「清掃をする人の仕事を奪っている」との見方や、もっと厳しい意見は「単なる売名行為?にすぎない」まであるようです。私などもさすがにそれには頭の中で疑問符がいっぱいになりましたが、しかし日本人的見方を超えた世界レベルではそういうこともあることは知っておくべきでしょう。

〇学校の清掃も多くの国では、雇われた清掃人が仕事として行っており、生徒自身が清掃をするのは稀だそうです。先ほどのワールドカップの話でも、我々は学校で清掃活動をしてきたので、違和感はありませんが、成長過程でボランティアベースの清掃を経験してこなかったならば、理解できなくても当然なのかもしれません。

〇しかしその日本型教育が注目され、アフリカでは生徒による清掃を取り入れた国もあるそうです。さて、「今日の大掃除をどんな気持ちでやっていますか?」「大掃除って必要だと思いますか?」などと、見かけた何人かの生徒に尋ねてみようかなと思います。

 〇部屋の窓は開けっぱなし、しかも水道の水は冷たい状況でも、自分たちの分担をキレイにしようと、黙々と身体を動かす生徒たち。この経験により少なくとも、意図的にゴミを落としたり汚れている場所をさらに汚したりすることのない大人に成長してくれると信じています。

須藤昌英

 

 

 

 

12月19日(木)2学期保護者会&2学期給食最終日

〇昨日、2学期の保護者会を行いました。1学期末の7月には実施しなかったので、4月の当初保護者会から8カ月ぶりとなります。全体会で私からこの8カ月間の本校における学びや富勢中学校4区の児童生徒に身に付けさせたい力、来年度のクラス編成の方向性を説明しました。その後教務主任から保護者アンケートの結果報告、生徒指導主任からいじめアンケートの結果と冬休みの過ごし方などを話し、クラスや学年の懇談会となりました。

〇保護者会のあいさつでも言いましたが、以前よりも世の中の変化の割合が数倍で、あらゆる技術革新のスピードが加速しています。その様子を、犬の成長の1年がおよそヒトの7年に相当する(ヒトの7倍速く進む)ことから「ドッグイヤー」、または鼠の1年がおよそヒトの18年に相当する(ヒトの18倍速く進む)ことから「マウスイヤー」などに例えられることもあります。よく「不易と流行」と言われますが、世間の変化に対応しつつ、生徒の学びのはやさは従来と変わらずにある程度余裕をもたせた環境で、じっくりと考えたり話し合ったりする時間を確保していきたいです。

〇普段はシグフィーやホームページなどでのこちらからの一方的な情報発信が多いですが、年に数回でも顔を見ながらお互いに話をすることが大切であると思います。お越しいただき、ありがとうございました。私がお話しさせていただいたスライドを掲載します。

〇今日は2学期最後の給食となります。2年前の今頃はコロナの後の対応として、「あなたはこれからも黙食を続けたほうが良いと思いますか」と生徒アンケートを実施したのを覚えています。結果としては「継続した方が良い」が6割、「継続は必要ない」が4割でした。生徒の中ではまだ続けた方が良いと思う人が思わない人の約1.6倍であり、その後もしばらくは継続していくことにしたのでした。今は前と同様に楽しく喫食しています。

〇振り返るとコロナ禍で、生徒たちもいろいろな経験をし、「自分は~したらよいと思う」と考えるようになってきたと思います。ただ当然のことながら、同じような経験をしても人によって考えは異なります。一見すると意見が対立し、白か黒の2つに一つしかないように見えますが、この時こそ、「広くて深い思考」が必要で、そのためまずお互いに目的が一致していることを確認し、次に対話する姿勢(相手の真意を理解しようとする)を持ち続けることしかありません。

〇先週から今週にかけて、給食の残菜・残乳ゼロ週間に取りくみました。担当の鹿野栄養教諭からのメッセージです。

先日の白ご飯は、全校で110㎏炊きましたが、残ったのはたった460g(0.4%)でした。これは約2.4人分だけです。生徒と教員合わせて550人ですので、これだけしか残らないことがどれだけ凄いことか。チェック表でみると〇や×なので「×がついてしまった・・」と感じる時もあると思いますが、皆さんが残さないように頑張ってくれていることが給食室にも伝わっています。

栄養教諭という仕事をしていて常々思うのは、「給食は食べてもらってはじめて完成」ということです。どれだけ栄養価を整えても、みなさんに食べてもらえなければ意味がありません。この一週間はみなさんのおかげでとても完成度の高い給食でした。これからもたくさん食べて、学んで、遊んで、健康な体と豊かな心を育んでくださいね。

〇今朝は少し雪がちらつきました。だからというわけではありませんが、今日のメニューは、「キャロットライス、チキンクリームソース、ゆで野菜のごまサラダ、ブルーベリータルト、牛乳」で、来週のクリスマスをイメージしています。またお話し給食(生徒からのリクエスト)で、「赤毛のアン」にちなんでカナダ産のブルーベリーを使用しています。

 須藤昌英

 

 

12月18日(水)「ほめて認める」から「学び成長する」へ

〇少し調べると昨日のアリとキリギリスの物語の結末や解釈以外にも、最近は興味深い2つの説(現代の日本版アリとキリギリス)があるようです。

【現代日本版アリとキリギリス その1】

酷暑の夏、毎日アリが一生懸命働いているとき、キリギリスは歌ってばかりいて遊んでいました。冬になり食べ物がなくなり困ったキリギリスがアリの家を訪ねるところまでは同じですが、ノックしてもアリの返事がありません。家の中でアリは死んでいました。いわゆる働き過ぎの「過労死」だったのです。

【現代日本版アリとキリギリス その2】

冬が近づき食べ物に困ったキリギリスは、自ら演奏会を開くことを考え、アリの家を訪ねてチケット代わりに食べ物をもらい、そのおかげで冬を過ごすことができました。夏の間は遊んでいたのではなく、しっかり音楽の勉強をして、キャリアを積んでいたのです。

〇前者は実際にこれまでも日本でも起きていることなので笑えないですが、後者は先日の本校一年生の生徒の授業中の発言と本質は同じです。だれでも得意な面をいかしていけばよい・・と明るい気持ちになります。

〇昨日に紹介した菊池省三氏の実践は、子どもや青年の成長発達に伴う心や行動の変化の過程を明らかにした教育心理学に沿ったもので、小学校はもちろん中学校のすべて教科の授業の基盤となるものでもあります。

〇菊池氏の著書「一人も見捨てない!菊池学級12カ月の言葉かけ(小学館)」の「はじめに」から抜粋させてもらいます。

初めて出会う子どもたちに授業を行う日々のなかで、私は「一時間の授業」をよりいっそう意識するようになりました。自分を開示し、友達と認め合う関係をたった一時間の授業でどのようにつくっているか。それは「私(教師)が子どもたちと一緒に成長していく」という思いを子どもたちと共有することでした。「どんな意見を言ってもいい」「間違っても大丈夫」「いろいろな意見があって当たり前」という安心感を持たせ、「自分の意見を話すことができた」「友達の新たな一面に気付いた」「みんなで考え合うって楽しい」と実感できる授業をつくりたいと思います。

言葉がけは「ほめて認める」視点が大切です。ほめて認めるというのは、プラス面に目を向けることであり、望ましい方向性を示すことでもあります。教師がほめて認める視点で子どもたちに言葉がけをすることで、子どもたちもまた同じ視点を持つようになっていきます。

(途中略)

教室はみんなで学び合うところです。そして、みんなが協力して一緒につくり上げていくものです。マイナスの場面があっても否定せずプラスに活かしていく言葉がけをすることが大切です。「主体的・対話的で深い学び」が現行の学習指導要領の大きな柱になっていますが、子どもの活発な学びは、自分に自信を持ち、お互いに認め合う信頼関係がある温かい学級が土台にあってこそ成り立つものです。

〇柏市は「第2次柏市教育振興画(令和3年度から令和7年度の5年間)」の中で4つの力(コンセプト、チャレンジ、コミュニケーション、コントロール)を4Cと銘打ち、バランスのとれた児童生徒の育成を目指しています。またそれとリンクするように先日も書いた富勢中学校区小中学校4校の共通の「児童生徒に身に付けさせたい力」を4つの柱を立てています。

                  

〇富勢中の実態からもう一度その4つの力を整理します。

【本校の生徒の実態】

・コミュニケーション(関わり合う力)については、地域の行事やボランティアに参加する生徒は、以前よりも少なくなってきている。しかし、他人の話をしっかり聞く姿勢を持っている生徒が多い。自分の考えを説明することが、若干苦手な生徒が多い。今後の課題といえる。

⇒1 自分を大切にし、他者を尊重する力

自分の意見や感情を大切にしつつ、他の人の気持ちや考えも理解し尊重できる力。多様な社会の中で、お互いを尊重し合いながら成長するための基盤となる。

キーワード: 「まずは自分が大切、ならば皆も同じく大切にしよう!」

【本校の生徒の実態】

・コントロール(自律する力)については、どの学年も学習に意欲を持って取り組む生徒が多い。学校の決まりやクラスで決めたことを守ろうとする意識が高い。

⇒2 考えを伝え、協力する力

自分の考えや意見をしっかり表現し、他者と協働して物事を進める力。チームでの協力やコミュニケーションを大切にし、共に目標を達成できるようになる。

キーワード: 「親しくはない仲間の中でも、お互いに考えを伝え合おう!」

【本校の生徒の実態】

・チャレンジ(挑戦する力)については、物事に取り組むときに、あきらめずに粘り強く取り組み事ができる生徒が多い反面、失敗を恐れずに挑戦する意欲は、若干弱い。

⇒3 しなやかに挑戦し続ける力

困難に直面しても、失敗を恐れずに挑戦し、学び続ける力。未来に向かって、自分の道を切り開くために必要な自己肯定感や、柔軟な思考を身につける。

キーワード: 「失敗を失敗のままで終わりにせず、それを活かそう!」

【本校の生徒の実態】

・コンセプト(見通す力)については、分からないことは、そのままにせず、人に聞いたり、自分で調べたりすることができる生徒が多い。その反面、計画的に取り組むことは、若干弱い。

⇒4 社会で活かせる学びの力

基礎学力をもとに、実社会で必要な知識やスキルを使いこなす力。自分の興味を活かしながら、これからの社会で役立つ力を身につけていく。

キーワード: 「学んだことのエッセンスを、自分の将来のベースとしよう!」

〇特に朱字の4つのキーワードは、学校全体で合言葉のようにしていきたいです。本校にはアリやキリギリスだけでなく、それぞれ独自の個性をもった生徒がいます。それをほめて認め、自分から学び成長していく生徒たちを支援していきます。

須藤昌英

 

12月17日(火)「アリとキリギリス」の立場になって考えると

〇先週の金曜日の午後、1学年4クラスを対象に外部から講師を招聘した授業研修会を行いました。今回の講師は菊池省三氏で、全国各地で教員同士の学びの場「菊池道場」を主宰し、これまで文部科学省「『熟議』に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会」委員も務められています。

〇元小学校教員で、著書は多数あり、「ほめ言葉のシャワー」「成長ノート」「白い黒板」など、教員ならば一度は聞いたことがあるキーワードを自ら実践されてきた方です。お住まいは北九州市なので、先週一週間は柏駅のホテルに連泊し、連日柏市や周辺市の小中学校へ講師として出向き、その最後の研修が本校でした。

〇午前中は富勢東小で授業を行い、富勢東小の教員も午後3時からの本校での授業振り返りに参加していました。1学年4クラスの4組で菊池先生が飛び込み授業(これまで生徒とまったく人間関係のない指導者が生徒たちと心を通わせつつ、1時間の目標達成を目指して行う)を展開し、それをオンラインで他の1~3組までつなぎ、各担任が4組と同様の課題のワークに取り組みました。

〇題材はイソップ物語で有名な「アリとキリギリス」でした。少しあらすじを確認しますと、「夏の暑い盛りに、アリが汗水ながして餌を巣に運んでいるとき、近くの涼しい草むらでは、キリギリスが楽しく歌っていました。『アリさん、アリさん, どうしてそんなに働いているの。まだまだ冬はやって来ませんよ』とキリギリスが言うと、『やがて冬がくるんだよ。その時困らないためさ』とアリは言い、熱心に働き続けました。一方、キリギリスはすずしい夕方になるとバイオリンを弾き、毎晩舞踏会を楽しみ、暑い日中は昼寝ばかりしていました。いつしか季節は寒い冬になりました。野の草は枯れ、キリギリスは食べるも のがなくなってしまい、餌を求めてアリの所へやってきました。『アリさん、 何か食べるものを分けてもらえませんか』とキリギリスが言うと、『それは、 お困りでしょう。どうぞお入り下さい』とアリは言い、キリギリスを暖かい部屋へ招き入れ、食事を与えてやりました。」

〇アリとキリギリスの話は、人間は勤勉であることが大切であり、怠けていてはその報いを受けるという教訓や「備えあれば憂いなし」などを考えさせる題材です。私が子どもの頃の昭和時代は、「子ども時代に必死で勉強しておけば、後から苦労しないで済む」、「将来のために、今を犠牲にしても頑張るのだ」などの考えが主流で、当時の日本人はこのおとぎ話の教訓を心の支えにして働き、日本は高度成長を遂げた歴史があります。

〇この物語は日本ではハッピー・エンドなお話になっていますが、あるイソップ研究者の調査では、世界を見渡すと日本と同じくハッピー・エンドになっているのは他の1国のみで、その他の国は「アリはキリギリスが飢えて死ぬのを待って、その死体を全部食べてしまいました」になっているそうです。欧米の社会では国境が地続きでこれまでも多くの戦争に明け暮れた歴史と風土があるので、幼い頃から人間社会の生存競争の厳しさを教えていることが背景にあるようです。

〇授業では3つのワークがありました。

1「ペアでアリとキリギリスのあらすじを説明しあう」

2「クラス全体でアリとキリギリスの2つに分かれ、どちらが偉いかを主張しあう」

3「もしキリギリスが人間だったら、あなたは助けるか助けないか」

〇ある男子生徒はキリギリスを助ける理由として、「キリギリスは音楽も演奏できるし体も大きいから、助けて仲間に入ってもらえば、何かの時に逆に助かるから」と堂々と発言しました。その瞬間にクラスはシーンとしました。「なるほど」と思って固唾を飲んだのです。菊池先生はもちろん参観していた私たち教職員もそんな見方をできるのかと目からうろこが落ちた気持ちでした。

〇私たち教職員は常に生徒と向きあっていますので、ともすると「こういう質問をすると~のような答えが返ってくるな」と自動的に予想しています。悪い言い方をすると先入観が働きます。ところがそのようなこちらが想定していなかった答えを生徒が発表したときには、指導者側が学べるのです。授業は新しい発見の連続です。

須藤昌英

12月16日(月)新着本展示会&味見読書

〇先日の市議会の話題の中でも教育予算の話をしましたが、毎年本校でも新しい本の購入費として85万円が市から支給されています。1学期に生徒や職員から読んでみたい本のアンケートをとり、予算内中で優先順位を決めて購入しています。今その「新着本」を図書室で展示しています。

〇また全クラスの国語の時間を使って、図書委員会の司会進行により、新着本を並べての「味見読書」を行いました。「味見読書」とは聞きなれない言葉ですが、あえていろいろな本を手に取り、興味のあるないも含め、今後読んでみたい本やその種類などを自分で確認する目的があります。

〇ちなみに「日本十進分類法」によると、本は次の10の類目に分けられます。

0 総記 1 哲学 2 歴史 3 社会科学 4 自然科学 5 技術  6 産業 7 芸術 8 言語 9 文学

さらにこの類目を細かくした網目があり、例えば最後の「9 文学」には、「日本文学、東洋文学、西洋文学、その他文学」と4つに分かれています。

〇最初に図書委員から説明があり、1テーブル5分ずつ6テーブルを班ごとにローテーションします。一つの本をじっくりと読むのではなく、料理を味見するように、気になる本をチェックしていく活動です。

〇生徒の感想の一部から抜粋します。

・見たこともない本や名前すら聞いたことのない本がたくさんあり、いろいろなジャンルの本に触れることができた。そのおかげで今までチャレンジしなかった本を借りてみようと思った。色々な本から新しい知識を身に付けたり理解を深めたいと思った。

・本を読んでいると自分がなんだか大人になった気分で気持ちがよくなる。できれば日向のテラスやハンモックで本が読んでみたい。

・私の場合は受験が終わってから卒業式まで約1カ月くらいあると思うので、今日見つけた本を読んでみたい。

・考えさせられる本だったり勉強になる本だったり、感動したりと本はいろいろな感情や想像ができるので、時間を忘れるくらい読んでいると楽しい。本にはテレビなどとは違う楽しさがあり、これからも興味をもっていきたい。

・自分で買いたかった本や読んで見たかった本があってよかったです。新着本の貸し出し日にはすぐに借りたいです。

・昨年よりも自分の読みたい本が多く見つかってよかった。もともと特に生物系の本や国の本が好きなので、これからは歴史や宇宙に関する本にも興味が出てきた。

・いろいろな本をいっぺんに見ることはないので楽しく、各本の特徴や情報を得ることができた。また小説でも限りなくいろんな種類があったので、ゆっくり考えながらたくさんの本と出合っていきたい。

・普段本を読むときは、あらかじめあたすじを見てから読むことが多いので、あらすじを見ないで読むことが新鮮でとても面白かった。

・最近ぜんぜん図書室に来ていなかったので、やはり図書室の雰囲気は良いと思った。

・高校受験や勉強法など、受験生にはとても大切なことがのっている本があったので、読んでみたい。

・久しぶりに絵本を読むと意外と面白いことに気が付いた。普段は小説ばかり読んでいるので、違うジャンルの本も楽しい。多くの本が歴史系で手が出しづらかったけど、考察系は自分と違う考えを知ることができて良かった。

・今は朝読書以外に本を読む時間がないので、読む機会を与えてもらってよかった。味見読書は初めの方だけ読むから、そのあとの内容が気になって今度借りようと思った。

・味見読書はすごく楽しみにしていて、今日も読めてうれししいです。自分から手にとらない本でも、味見読書だと読むことができるので、より本が好きになりました。

・まだ読んだことのない本など、たくさんの本を読んで、どの本もとても読みやすくて、ワクワクして面白かったです。

・久しぶりに自分が本当に読んでみたいという本を見つけられたのが良かったです。味見読書なので、短い時間でしたが、新しい発見がありました。

・こんど本屋で本を選ぶとき、いつも見ないジャンルの棚もみてみようと思いました。

・受験もあり朝読書以外に本を読めませんでしたが、この機会を通し読むことができてよかった。

・有名な本はだいたい知っていますが、あまり聞いたことのない本もとても面白そうで、読んでみようかなと思いました。

・毎回恒例の味見読書ですが、今年も新しい本を読むことができ、とても良い時間でした。

・新着本の中で、何冊も読みたい本があった。

・自分で今まで読んできた本とは違うジャンルも読みたくなりました。同じジャンルに限らず、もっと色々読もうと思いました。

・本それぞれに良い点があったり面白さがあったり、読んでいて苦ではなかったです。

・気になるような表紙とか挿絵を選ぶことが多いですが、本の出版社にとっても大事な視点かなと思いました。

・自分はあまり図書室に来たことがなく、本を読みたい気持ちはあったので、冬休み前に本を借りたいです。

・普段から読むような本とそうでない本まで、色々な本を手に取る機会になりました。すごく楽しかったです。

〇柏市では学校の図書室を「図書室」ではなく「学校図書館」と呼んでいます。そして学校図書館指導員という図書専門の方を市から配置していただき(これも教育予算に入っています)、日常の図書整理や各教科とのコラボ授業などのコーディネートを担当してもらっています。学校図書館が生徒たちにとって、知的で心地よい空間であるように・・・。

須藤昌英

 

 

 

12月13日(金)「2学期いじめの状況調査」より

〇先日、全校生徒を対象とした「いじめ」を把握するためのアンケートを行いました。通常学校がいじめを認知するのは、「本人からの相談、他の生徒からの情報、職員による観察、保護者や地域の方々からの情報」となっていますが、定期的にアンケートによる状況把握を行っています。

〇そもそも「いじめとは、日常的なトラブルでも、本人が『いじめられた』『不快な思いがした』などと感じるものをすべて」と定義されており、生徒も職員もそれを意識しています。いじめが発覚すると必ず複数の教員で、本人及び関係生徒から事情を聴きとり、今後の謝罪や人間関係の再構築ついての話し合いを行いました。

〇集計した2学期の認知件数は5件で、その内訳は「冷やかしやからかいを受けた」「無視された」「悪口・陰口を言われた」「勝手にシールを貼られた」となっており、最初の「冷やかしやからかい」が毎回の調査では一番多くなります。それぞれの案件で、職員がまず事実の確認を行います。

〇1学期の認知件数は8件でしたが、例年ですと1学期は進学や進級などで新しいクラスになったり、各学年とも旅行的行事があったりと、まだ人間関係が不安定な面があり、多くなる傾向にあります。ただ柏市では、「いじめが解消した」とする条件の1つが、「発生から3カ月以上当該生徒の関係の中で継続したいじめはない」となっていますので、先ほどの5件の場合も、これから3カ月間は経過観察を行います。安易に謝罪などをもって「解消」としないこととなっています。やはり人の心の中までは見えませんので、時間が必要です。

〇ひと昔前のように、二人で喧嘩しても「喧嘩両成敗」とはいかず、お互いがそれぞれ嫌な思いを抱くと、それはすべて「いじめ」とカウント(2件)しますので、簡単にその場で相手に謝って終わりとできないところが、正直難しいところです。ただ大人も含めて生きていく上で一番の悩みは「人間関係」ですので、「こうすればいじめはなくなる」のような究極の方法はなく、丁寧に対応していくしかありません。

〇いじめに対しての対応は、「柏市いじめ防止基本方針」にも示されているように、早期発見と早期対応、学校組織内の情報共有、必要な指導・措置ですが、いじめのアンケートはその一つの入り口になります。いじめの未然防止も重要なのは言うまでもありませんが、こちらは、道徳教育を充実させたり人権意識を高めたりする地道な取り組みしかありません。

〇要するに最後は生徒の想像力を引き出すしかありません。「〇〇をしてしまったけど、された方の気持ちはどうなんだろう?」「●●と言ってしまったけど言われた方の今の気持ちは?」など、だれもが意地悪をする側と意地悪をされた側の両方の経験をしているはずですので、「今の自分はどちらの立場が多いか?」と自分をメタ認知できるようになってほしいです。

〇いじめアンケートの中に「普段の生活で困ったことや悩んでいることはありますか」の項目を故意的に設けています。これはいじめではないけれど、その他の相談もしやすいようにとの配慮からです。その中に、「親子や兄弟姉妹関係について」 「クラスの雰囲気について」「受験する高校について」「塾での人間関係について」「自分自身の身体や性格について」などがあります。それらについても一つひとつ話を聞くなど丁寧に対応しています。

須藤昌英

【いじめ防止啓発カード(千葉県教育委員会)】

 

12月12日(木)地方自治への関心(柏市の教育施策と予算)

〇3年生が社会科(公民)で「三権分立」を学習していますが、日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。

〇国よりも我々にもっと身近な都道府県や市町村などの地方公共団体は、大きく2つの組織から成り立っています。一つは「議決機関(地方議会:条例の制定や予算の決定などを行う)」、もう一つは「執行機関(市長と市役所:予算に基づきそれぞれ担任する事務を行う)」です。簡単に言うと、前者は後者のやっていることをチェックする機能を果たしているということです。

〇現在令和6年度第4回柏市議会定例会(一般質問:12月5日~12日)が開会中です。その様子は市役所7階の議場に行かなくても、インターネットで視聴することができます。柏市には36名の市議会議員が市民からの負託を受けており、柏市議会定例会は年4回(3月、6月、9月、12月)開催しています。

〇その議員の中には、私の小学校時代のクラス担任や中学校のクラスメイトもいます。以前は関心が薄くその存在も遠くに感じていた市議会も、知り合いがいると柏市に関するいろいろな情報が入りますので身近に感じます。逆に今は本校の卒業生でもある上橋しほと議員には、学校行事や生徒のボランティア活動に積極的に参加していただいており、その様子を柏市の各担当部局に伝えてもらっています。

〇市議会の前に市役所の各部へは、事前に質問する各議員から質問事項が通告され、それに対して各担当が答弁書を作成します。私も教育委員会事務局に勤務している時は、いろいろな答弁書を作成していました。前述のように、市議会は市役所業務のチェックをするのが役割ですので、答弁書には誠実に、各業務の進捗状況や今後の方向性を盛り込みます。国会での答弁も同様ですが、質問が多い際には、期限日の夜中までかかって作成しています。

〇今回の定例会でも、多くの議員が、教育に関する質問をしています。その一部が、「柏市未来につなぐ魅力ある学校づくり基本方針と柏市教育大綱、小中一貫教育と義務教育学校、ICT教育とタブレット端末活用、学校での感染症対策、自転車のヘルメット着用と交通安全対策、子どもの権利条約と柏市子ども・若者総合支援センター、特別な支援を要する児童生徒、不登校児童生徒支援、学校施設開放と部活動地域移行、コミュニティースクール、子どものネット依存、子どもの運動能力、いじめ対策、学校給食と給食センター、給付制奨学金、教員不足と働き方改革、市立柏高校、公立夜間中学」など多様です。

〇いかがでしょうか?私たちがあまり意識していない裏で、これだけ教育に関する施策や予算などが議論され、その結果として学校の教育活動を下支えしてもらっているのです。先日終了した本校の体育館空調機設置工事などもすべて、昨年度までの市議会で予算案の承認を受けています。

〇大切なことはその建設費も含めてすべての教育予算は、もともと市民の税金があてられているということです。また毎日の電気・水道も市の予算があるからこそ使用できるのです。生徒たちにもその仕組みを教えていくことは大切であり、公民の授業でも扱っていると思いますが、再来週の終業式に私から話をしてみようかなと思います。

須藤昌英

12月11日(水)私たちのクリスMATHツリー(空間認知能力)

〇今1学年の数学では、空間図形を学習しています。小学校の算数では、まず1学年から身近な立体について観察したり分類したりして、ものの形を次第に抽象化して、図形として捉えられるようにしてきています。その後立体図形の点や線や面などの構成要素に着目したり、立方体・直方体・角柱・円柱・球などの多様なものを取り扱ったり、それらの見取図や展開図をかくことなどを通して立体図形についての理解を深めてきています。例えば家庭から身近な箱(お菓子やティシュペーパーなど)を持ち寄って、好きな形(タワーやロボットなど)をつくって空間意識を育てます。

〇それを踏まえ中学校数学科において1学年ではこれらの学習の上に立って、空間図形についての理解を一層深めていきます。特に数学では空間図形を空間における線や面の一部を組み合わせたものとして扱うという点に留意させます。また図形の性質や関係を直観的に捉え論理的に考察する力を養うために、立体の模型を作りながら考えたり目的に応じてその一部を平面上に表す工夫をしたり、平面上の表現からその立体の性質を読み取ったりするなど、観察や操作,実験などの活動を通して図形を考察することを基本にして学習を進めていきます。

〇展開図は平面図形ですが、それを組み立てることにより立体(空間図形)になります。問題を理解ためには例えば立方体を開いて展開図にしたり、展開図を組み立てて立方体に戻したりと、頭の中でイメージする必要があります。例えば立方体の展開図は全部で11種類あります。昔教えた時に、「へぇ意外と多いな~」と感じる生徒も多かったです。

〇数学担当の宗形教諭は、生徒たちに正多面体の展開図から立体を作成させ、それをクリスマスツリーの飾りとして廊下に展示しました。数学は英語で、Mathematics(略してMath)ですので、クリスMATHツリーとしてかけことばにしています。生徒たちの作成場面を見ていましたがとても楽しそうで、「昔はこんな授業はなかったなあ~」と思いました。

〇私が数学を担当していた時に、特に図形は生徒の好き嫌いが激しく、特に女子の苦手意識が高かったのを覚えています。その一つの要因として、幼少期から男児は積み木やブロックに熱中しやすいのに対し、女児はお絵描きやおままごとを好むことがあります。絵やおままごとセットは現実の生活に近い(具体的)のに対し、積み木やブロックは組み合わせによって何かの形をつくって(想像・創造)いくので、より抽象的な概念を必要とすることが考えられます。

〇根拠はわかりませんが、男性脳はデータなどの根拠を元に論理的に考えがちで、一方の女性脳はその場の感情や共感性を重視する…といったことを聞いたことがあります。身近では空間認知能力が高い男性の方が女性よりも地図を読める場合が多いです。最近の車はナビゲーションがありますが、昔は地図本を見て運転していましたので、男女の差があった気がします。

〇ただしこれはあくまでも一般的な話であり、近年では「理系女子(リケジョ)」も多くなっていますし、先日の1年校外学習で行った国立科学博物館に、いかにも研究者のようなオーラのある女性が多くいたことも印象に残っています。

〇ともかくこのクリスMATHツリーは、クリスマスという現実の生活と多面体という抽象物がコラボしています。年末が近づいていることを感じます。

須藤昌英

12月10日(火)自分のトリセツ(メタ認知)

〇ご存じの通り「取説(とりせつ)」は「取扱説明書」を短縮した言葉で、カタカナで「トリセツ」と書くことも多いようです。10年ほど前に、若い女性の歌手が歌っていた同名のヒット曲を聴いた際、私も初めて取扱説明書を略してトリセツと呼ぶことを知りました。

〇トリセツには普通、その製品の「スペック(性能)や特徴」「正しい操作方法」「上手な使い方」「使用上の注意」「故障の見分け方」「安全に関する注意事項」などが記載されていますが、冒頭からすべて読む人は皆無でしょう。必要な時に該当箇所を読んで対処することがトリセツの目的だと思います。

〇このように家電などの操作を書いたトリセツはなじみ深いですが、「『自分のトリセツ』とはいったい何のことだろう?」と疑問に思う方もいると思います。簡単に言えば、「自分を知る」ということであり、日頃から統計的に「自分はこういう時にはこう考えたり行動したりすることが多い」と自分を客観視することです。

〇そのように、自分の「心や内側」に関心をもち、徐々に自分の「輪郭や本質」を理解することは、大人になる過程では欠かせないものであると思います。ただし「どうせ自分は~のような人間だから」と開き直るのではなく、今の自分を出発点とし未来のなりたい自分をイメージしながら、やりたいことやるべきことに取り組めることが理想だと思います。

〇自分のトリセツのきっかけになり得る一つの方法として、日記も有効です。また最近は日記に似ていますが、ライフログという記録方法も広まっているようです。ライフログとは、LIFE(生活)とLOG(記録)を組み合わせた造語で、日々の生活体験、気づいた情報などを紙や手帳、スマホのアプリやブログ等にデジタルデータとして記録していくことを指すそうです。それにその時の気持ちや行動も一緒に記録することで後で振り返りやすくなったり、自分だけのオリジナリティに富んだライフログとなったりするのが利点でしょう。

〇私も昭和から平成に変わる時、何か新しいことを始めよう(それまで簡単な手帳に出来事を書いていましたが・・)と思い立ち、本格的な日記帳を使い始めました。当時は25歳でしたので、間もなく37年になり、自宅には数冊の日記帳(3年日記、5年日記、10年日記など)があります。

〇日記から転じて「自分のトリセツ(メモ)を書く」にはまず、自分の強みや弱みを把握することから始めるのがよいと思います。人にはそれぞれ物事の見方や感じ方の癖がありますが、それを癖ではなく自分軸と捉え、生きていく途中に迷ったりつまずいたりした時に参考に見るメモがあれば、安心感を得るなどの大きな要素になります。

〇昔から「己事究明」といって、「自己とは何かを究めて明らかにすること」を若者は求める傾向にあります。先月に「一つのことを考え抜くのは大人への一歩」と題して「哲学」について書きましたが、中学生くらいになると、やたらに理屈っぽくなり、世の中の出来事も批判的に見るようになります。この屁理屈こそ中学生には大切ではないか?と思います。ただ外ばかりでなく、自己に対してもも批判的になりますので、極端に自己否定にならないようにすることも重要です。

〇自分のことを見つめることをマインドフルネスでは「内観」とも言います。よく生徒の学習や大人の仕事でも予習よりも復習が肝心だと言われますが、私も含め想像するに自分自身について丁寧に復習している大人はあまりいないのではないでしょうか。忙しいことを理由に、SNSなどの外部の刺激には反応しても、自分自身の身体にだけ意識を通し続けることは避けているのが実情でしょう。

〇自分のことを客観視する「自己モニタリング」は、ストレス対処やパフォーマンスの向上に役立つといいます。その自己モニタリングに欠かせないのが、「メタ認知」で、「メタ認知」とは「自分自身の認知(考える・感じる・記憶する・判断する等)を第三者的な立場から冷静に客観視できる能力」のことです。この能力によって自分が行っていることが正しいのか、また間違っているのであればどのように修正すればよいのかを判断することができるようになります。もちろん中学生にもこの能力は十分にあります。

〇メタ認知が高くなれば、自分の得意・不得意なことを的確に認識し、「自分ができないことをするためにはどうしたらいいのか?」という問いに対して自分で答えを出そうとします。この客観的な視点から自身を認識することと他人から見た自分の姿を一致させていくことで、本当の自己肯定感が生まれます。「自分には●●という長所があるので、それをいかして〇〇を頑張っていきたい!」とすべての生徒が言えるようにしていきたいと願います。

須藤昌英

 

12月9日(月)「推し活」についての一考

〇最近よく耳にするようになった「推(お)し活」とは、アイドルやキャラクターなどの「推し」、いわゆるご贔屓(ひいき)を愛でたり応援したりする活動のことのようです。

〇この時期によく「新語・流行語大賞」が発表されて話題になりますが、「推し活」は3年前にノミネートされています。そもそも「推し」という言葉は 1980年代頃からアイドルオタクの世界で発祥した俗語のようで、「あなたが推しているモノは何ですか?」などと、好きなモノを聞く文脈で使われています。

〇誰でも好きなグッズを集めたりすることはありますが、少し調べるとその他広い範囲で次のような使われ方があります。

【推しに触れる】

推し活グッズを買う/推し活グッズをコレクションする/コラボカフェに行く/コラボイベントに参加する

【推しに逢う】

ライブや舞台を観に行く/推しのDVDや配信映像を鑑賞する/撮影スポット、ゆかりの地などの聖地巡礼をする/ファンレターを書く/推しにプレゼントを贈る

【推しに染まる】

推しと同じものを持つ/推しのイメージカラー(推し色)の服やコスメを集める

【推しを広める】

SNSで推しの魅力を語る/推しを他人に布教する

【推しを感じる】

一人静かに推しのことを想う/推しが生きて存在していることに今日も感謝する

〇23歳の社会人1年目の娘もご多分にもれずにこれまで様々な推しのアーティストのライブ等に行っていました。アルバイトで得たお金はほとんどそれに使われていたようです。ただ最近は先日も「昭和」について書きましたが、特に昭和時代の音楽が大好きなようで、わざわざ古いレコードやカセットテープを購入し、それに合わせてレコードプレーヤーやカセットデッキも揃えて楽しんでいます。時々「私も昭和に生まれたかった」と言っています。

〇推すという行為は「社会が多様化に向かっていることを象徴している」と指摘する人もいます。若者の間でも日本の従来からの終身雇用に固執することなく、自身のキャリアに積極的な転職を視野に入れておくことも普通になっています。また日常の消費に対しても、例えば大きな仕事が終わると少し高めのスイーツを買って自分へのご褒美などと言い、日々の活力や安息につなげています。

〇つまり「推し活をしている間はツライ日常を忘れることができる」「推し活のためにやりたくないことも頑張れる」というように、推しへの傾倒や消費そのものが自身を励ますことにつながることは理解できます。ただ一部で自身の経済力と見合わない推し活をし、昨今言われる「推し疲れ」のように「推す」ことをやめたいと感じることもあるようで、注意が必要です。

〇私は以前から「推しのもつ前向きで活動的な面を学校の活動にも活用できないか・・」と考えていました。例えば生徒が「この活動(委員会や部活動)は自分のモチベーションがあがる」「この教科をどこまでも深く突き詰めたい」など、それぞれの興味や関心を優先することももっと引き出してあげたいです。

〇そのためにも我々大人が自分のもっている興味や関心のレベルを保ちながら持ち続けつつ、一人ひとりの生徒が持っている興味・関心を伸ばすという視点を失わないようにしたいです。一見学校の授業とは関係ないように見えることでも、本人が興味を持ち集中して取り組んでいることをきっかけに学ぶことの面白さを体験することができます。そこから学びを深めていくことによる成長は目を見張るものがあると、これまでの教員生活で実感しています。

〇今年もあと3週間(2学期は2週間)と残り少なくなってきました。「今日も私は『●●という推し活』があるから学校に行きたい」と思ってくれる生徒が増えることを望んでいます。

須藤昌英

 

12月6日(金)1学年校外学習

〇本日の1学年校外学習は、公共交通機関の電車を利用し、上野恩賜公園にある博物館や美術館、動物園等の見学が主な行動です。

R6年度1学年校外学習スローガン「一意(いちい)専心(せんしん)~みんなでつくりあげよう~」

*スローガンのねらい

・他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中すること。

・この校外学習でクラスを1つに学年を1つに!

〇昨日は体育館で事前指導として、行程や注意事項の最終確認を行いました。

 

〇生徒用しおりに掲載した校長のメッセージです。

新しい発見と小さな感動の体験を! 校長 須藤昌英

1学年の皆さんを見ていると、4月の入学式の頃に比べて、中学校生活にも慣れ、充実した毎日を過ごしているようです。入学前に想像していた生活と大きな違いを感じる人もいるでしょうし、一方で段々と「中学校とはこういうところなんだ」と達観し始めている人もいることでしょう。

小学生だった頃までは、ある程度大人が計画したことを素直にやってみることを求められてきたと思います。しかし、中学生は自分で考え、実行していく力をつけていく必要があります。

今回の校外学習もあらかじめ決められたスケジュールはありますが、その一つ一つを「これは何のためにやるのか?」「どうやったら上手くいくだろうか?」と自分たちに問いかけてみましょう。人を頼りにするのではなく、自分で考え正しく判断し、自分でやり遂げていくことを「自立」といいます。

一人ひとりの自立した行動が、校外学習が成功するかしないかのカギとなります。そしてこの経験が、来年以降の林間学校や修学旅行につながる行事となることを願っています。

事前に調べたことを実際にその現地に行き、観察・実験・体験、さらには資料収集等をすることを「フィールドワーク」と言います。本やインターネットで見たり知ったりした知識は、実感が伴わないことが多いので、時間が経過すると忘れがちです。しかし、自分の目や耳、その他の感覚をフル稼働して体験したことは、それと関連した知識と結びつくことにより、「生きて働く知識」と昇華します。 

この校外学習で皆さんにお願いしたいことは、現地でどれだけ多くの新しい発見ができるか、そしてそれらを心の底から素直に感動できるかを意識して、楽しんでほしいということです。きっとみなさんにとって、上野の地が「学びの場」となることでしょう。

各クラスの実行委員の皆さん、よろしくお願いします。校外学習を終えてから、さらに一回り大きくなった、中学生としての皆さんの姿を見られることを期待しています。さあ出発しましょう!

〇朝から生徒たちの様子を随時アップしていきます。

【予定】

7:45生徒集合JR北柏駅

8:09北柏駅出発

8:12柏駅到着乗り換え

8:34柏駅出発

9:03上野駅到着上野動物園へ移動

9:15上野動物園前開校式集合写真撮影

9:40班別行動開始

11:55上野動物園前広場 昼食

13:10上野動物園散策

14:05閉校式

14:42上野駅出発

15:09柏駅到着

15:24柏駅出発

15:27北柏駅到着 解散                                

 

【生徒たちの様子】朝の北柏駅集合はスムーズで、電車の中でもマナーを意識した行動でした。素晴らしいと思います。冬晴れの青空といちょうの黄色が見事なコントラストの上野恩賜公園。朝から各博物館等は行列が出来ています。同様の校外学習の他、外国人観光客の多さに驚きです。国立の博物館や美術館は展示が充実しているので、とても短い時間では見学しきれませんが、大人になってもリピーターとして訪れるきっかけになって欲しいです。私も国立科学博物館に午前中いましたが、以前になかった地球館は、地下三階地上三階の大きさで、とてもじっくりとは観られませでした。また来ようと思いました。時間通りに元の場所に集合し、昼食は大噴水の前で持参したお弁当を食べました。美味しそうでした。その隣で食べ物のフェスをやっていたので、いい匂いがしていました。余計に食欲が増したようです。午後は上野動物園です。生徒に「見たい動物は?」と尋ねると、「レッサーパンダ、キリン、ホッキョクグマ・・」など様々。残念ながらジャイアントパンダはいません。ゾウを見ると道徳の教科書にあるお話し(太平洋戦争中に、空襲などで動物が逃げ出すことを避けるため、上野動物園のゾウを殺処分した史実)を思い出しました。園内には多くの保育園児や幼稚園児がいましたが、彼らもほんの少し前はあのように幼さかったと思うと、よくここまで成長しているなと感動します。あすなろ一組は担任の作成した園内マップに見られた動物のシールを貼ってまわっていました。閉校式も実行委員会を中心によくできました。このままであれば、来年の林間学校も大丈夫だと感じました。帰りは始発電車でみんなが座れましたが、途中から乗る人がいるとあえて立ち席を譲る生徒もいました。シルバーシートの意味もお互いに話していました。柏で乗り換えて、北柏駅で解散です。夕方は少し寒くなってきました。週末は体調に留意し、また月曜日に会いましょう。自宅まで気をつけて。さようなら。

【校外学習を終えて】

朝の上野恩賜公園での開会式に、「この公園は江戸時代まではすべて寛永寺というお寺の境内でした。広大ですね。それが160年前の明治維新で国内戦争があり、この上野で多くの人が亡くなり、寛永寺も焼け野原になりました。その後いろいろと整備されて今のこの公園になっています「今駅から通ってきた時に見たと思いますが、西洋美術館はもう長蛇の列でしたね。私たちは電車で30分で来られますが、あの列の中には飛行機や新幹線で全国各地から来ている人も大勢います。それだけこの地にある国立の施設(博物館や美術館)は素晴らしいモノが集められているのです。」「それを考えると君たちは幸せですね。今日だけですべての見学はできませんので、今日はあくまでも興味のあることにふれるきっかけになればいいなと思います。ディズニーランドのリピーターもいいですが、上野のリピーターになるのも面白いかもしれません。」と話をしました。

学校に帰って引率職員で反省会をしました。今回は私も含めて10名の職員で160名の生徒を引率しました。ただし来年と再来年の林間学校や修学旅行は、同じ人数で宿泊を含めた2泊3日を引率します。十分に事前の入念な計画と安全に関する指導はしていきますが、ご家庭でもそのあたりの事情も含めて、今日の話を聞いてあげてください。ありがとうございました。

須藤昌英

12月5日(木)「やさしい心が一番だよ」人権に関する講演会

〇昨日の午後は体育館で、柏人権擁護委員協議会主催の講演会を開きました。講師は、「いじめ問題の解決に取り組むNPO法人ジェントルハートプロジェクト」の理事である小森美登里さんで、全校生徒を対象に「やさしい心が一番だよ」と題して話をしていただきました。

〇小森さんは今から27年前、当時高校一年生だった一人娘の香澄さんをなくしました。いじめを苦にした自死でした。「娘と同じように苦しみそれによって家族などが悲しい思いをこれからは決してしてほしくない」という願いから、ご夫婦でNPO法人を起ち上げ、全国の学校を講演してまわっていらっしゃいます。著書も数冊あります。

〇私は前任校でも講演していただいたので、数年ぶりにお会いしました。講演前の校長室でいろいろお話をさせていただきましたが、今月も新書「いじめに対する大人の誤解―スクール虐待の現実―(新日本出版社)」を出版されるので、出版記念のトークイベントがあるなど、お忙しいそうでした。「娘も存命ならば、42歳になっています。今日も心を込めて生徒さんたちにお話しさせていただきます」とおっしゃっていました。

〇生徒たちは真剣に話に耳を傾けていました。特に「被害者責任論」と言われるものは決して容認されてはならないというお話が印象的でした。もしいじめを受けた被害者からの相談を受けた際、「あなたの方にも原因があったのでは?」「あなたから止めてほしいって言ったの?」「もっとあなたも強くならないとね!」などは禁句です。やはり「つらかったでしょう。もう大丈夫だよ」の言葉がけが何よりも大切です。その他、お子様から心に残っている話を聞き出してみてください。

〇講演後、「世界に一つだけの花(作詞・作曲 槇原敬之)」の一番だけを歌詞の意味を考えながら全員で聴きました。

花屋の店先に並んだ

いろんな花を見ていた

ひとそれぞれ好みはあるけど

どれもみんなきれいだね

この中で誰が一番だなんて

争うこともしないで

バケツの中誇らしげに

しゃんと胸を張っている

それなのに僕ら人間は

どうしてこうも比べたがる

一人一人違うのにその中で

一番になりたがる

そうさ 僕らは

世界に一つだけの花

一人一人違う種を持つ

その花を咲かせることだけに

一生懸命になればいい

〇最後に、小森さんの詩を山中教諭が朗読して終わりました。

「生まれてきてくれてありがとう~この詩を香澄へ、そしてすべての子どもたちへ贈ります~(小森美登里)」

ありがとう 生まれてきてくれて

ありがとう 病気をした時 いっぱいいっぱい心配させてくれて

ありがとう 多くの出逢いをプレゼントしてくれて

      そして 楽しい思い出 一杯くれて

ありがとう 生きる意味を考えるチャンスをくれて

      そして全ての命がいとおしいと感じさせてくれて

ありがとう お父さんとお母さんと出逢ったこと

      間違いじゃないって気付かせてくれて

ありがとう こんな私に子育てさせてくれて

      あなたをこんなに愛させてくれて

ありがとう 教室の中の子どもたちの苦しさ悲しさ

      いっぱい教えてくれて

ありがとう 「やさしい心が一番大切だよ」の言葉を

      残していってくれて

      そして、この言葉を伝える人生をくれて

ありがとう 15年と7カ月私と生きてくれ

      いつか逢える楽しみをくれて

      お母さん、それまで頑張って生きるよ

ありがとう ありがとう ありがとう

      言い尽くせない たくさんのありがとう

      でもごめんね 守りきれなくて

ありがとう ありがとう ありがとう

      全ての子どもたちへ 

生まれてきてくれてありがとう!

〇演題の「やさしい心が一番だよ」は、生前の娘さんが小森さんに何度かつぶやいた言葉だそうです。子どもも大人もかみしめていきたいものです。

須藤昌英

 

 

12月4日(水)職業人から学ぶ「企業来校型交流授業」(2学年)

〇昨日の5.6時間目に、一般企業7社の方々に来校していただき、「働くこと」への理解を深める交流授業を行いました。一つの授業(30分程度)を3ローテーションして行い、司会・運営・企業の方への挨拶等は全て生徒に行わせました。

〇ご協力をいただいた企業は、

1.みどり産業株式会社 様

2.東部重工業株式会社 様

3.ロマン産業株式会社 様

4.日新火災海上保険株式会社 様

5.(株)富士エコー 様

6.JAL Agriport株式会社 様

7.社会医療法人社団蛍水会名戸ヶ谷病院 様

〇激しく変化を続ける現代社会で、4~6年後に2学年の生徒たちは成人(18歳または20歳)となります。その時にはどんな職業で社会に貢献していくかのイメージをもっていることが不可欠です。自己の生き方を考えるようにするために、職業や自己の将来について考えるともに、その前提となる自己肯定感・自己有用感を育てることを、学校はすべての教育活動で目指しています。

〇学校で実施するキャリア教育は、あらゆることを他人事ではなく自分との関わりとして大切にする自我関与や物事を多角的・多面的にみる力を養うことなどをねらいとし、家庭、学校、及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動です。

〇ただ社会環境の変化に加え、産業・経済の構造的変化、雇用の多様化・流動化等は、生徒たち自らの将来のとらえ方にも大きな変化をもたらしています。特に生徒たちは自分の将来を考えるのに役立つ理想とする大人のモデルが見付けにくく、自らの将来に向けて希望ある夢を描くことも容易ではなくなってきています。さらに彼らの心身の発達も以前から変化し、例えば一般的に身体的には早熟傾向にありますが、精神的・社会的側面の発達はそれに伴っておらず遅れがちであるなど、全人的発達がバランス良く促進されにくくなっています。

〇そこへコロナの影響もあり、具体的には人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定できない、自己肯定感をもてない、将来に希望をもつことができないといった生徒の増加などが指摘されています。とどまることなく変化する社会の中で,生徒たちが希望をもち、自立的に自分の未来を切り拓ひらいて生きていくためには、変化や失敗を恐れず、変化に柔軟に対応していく力と態度を育てることが求められています。

〇昨日の交流授業では、私自身も環境や農業、製造や運送、保険や医療等の専門家のプレゼンを聞き、とても参考になったことが多くメモをたくさんとりました。やはり学び続けることは大切だと感じました。そして何よりも一緒に参加した生徒たちが疑問に思ったことを質問したり学んだことの感想を発表したりする姿が、通常の授業よりも立派であり、「いつもみているようでも、それ以上に成長しているな」と感心を通り越して感動しました。企業の方々からも「素直で熱心な生徒さんたちですね」と帰りがけに声をかけてもらいました。

〇私もそうでしたがよく中学生には「今何のために学んでいるのかわからない」という気持ちが絶えずあります。企業の方々も自分の経験談の中で、「自分が中学生の時には●●を勉強する意味がわからなかったけれど、今はそれがよくわかります。まずは興味をもつことを大切に授業を受けてください」とアドバイスがありました。今後の生徒たちの変化が楽しみです。

須藤昌英

 

 

 

12月3日(火)合格祈願マンホールカード

〇先日の広報かしわの掲示板に「合格祈願のマンホールカードをプレゼント」と題し、「丸いから『落ちない』、表面の凹凸で『滑らない』というマンホールの特徴にあやかり、マンホールカードで受験生や資格試験などを控える方を応援します」とありました。一人1枚先着500名とあったので、早速朝の9時にかしわインフォメーションセンターに行き、もらってきました。

〇全国には様々な合格祈願グッズがあります。神社のお守りや絵馬、お寺の達磨や破魔矢などは定番でしょう。語呂合わせで五角形の物が「五角形(合格)」を連想させるので、五角形の鉛筆やはし、私も大学受験の際に使っていましたが五角形のマグカップなどがあります。昨年の卒業生の時には、広島県の「宮島の合格しゃもじ」を校長室に飾っていましたが、今でもあります。

〇静岡県の大井川鐵道には「合格駅」があります。受験生にとって縁起の良いこの駅は、1927年に大井川鐵道が初めて部分開業した日に営業を開始した歴史ある駅ですが、元の駅名は確か「五和(ごか)駅」でした。私も昔3年生担任だった際に、現地に行き何だか忘れましたが何かのグッズを購入した記憶があります。

〇調べるとこの願掛け(お守り)の起源は縄文時代にさかのぼるようで、当時の人々が魔除けとして勾玉を身につけていたのが始まりだそうです。その後日本に仏教が伝播し寺で呪符が配られるようになり、さらに平安時代後期の懸守(かけまもり)には、仏像が彫られた木製の円柱が納められていたようです。いつの時代にも人間は、祈りと共に生きていたということでしょう。

〇今回はマンホールですが、世の中では珍しいマンホールを撮影して歩く人がいたり、「マンホール女子」という言葉もあったりします。各地ではマンホールにスポットを当てたイベント等も開催されており、予想外といっては失礼ですが、マンホールがひそかなブームとなっています。

〇東京の湯島天神は学問の神様で有名ですが、「合格守」というお守りはないそうで、そもそも普段からの勉学の成果が合格に結びつくものであるという考え方から、「学業成就」「学業守」となっているのだそうです。私もこれが本当ではないかと思います。合格祈願・学業成就は本人の努力が一番肝要で、それを精神的にサポートしてくれるのがお守りであり、たとえ受験の結果がどうであれその努力した経験こそ次にいきてくるのだと思います。

〇今年の修学旅行でも何クラスかは、学問の神様と言われる菅原道真を祀る京都の北野天満宮に団体参拝し、祈祷を受けてお札を授かりましたが、これも確か「学業成就」と書いてあったと思います。今は高校や大学の受験の際に祈願する人がほとんどでしたが、昔はもっと幅広く職人ならばその技能を、武士ならばその武芸の上達を願っていたのでしょう。

〇昨日の午後は本校の進路検討委員会を開き、現時点での3年生全員の進路希望先を確認しました。以前にも書きましたが、進路指導は窓口である担任が生徒や保護者とやりとりをし、その経過はすべてこの委員会に報告されます。この委員会の委員長は校長ですので、先月まで行ってきた生徒との校長面接の中で本人が述べていたこと(やりたいことや将来の夢)を思い出しながら参加しました。

〇きっとこの「柏市版マンホールカード」が、学び成長し続ける本校の3年生たちの奮闘を後押ししてくれると思います。

須藤昌英

12月2日(月)生徒の人権「子どもの権利」

〇12月に入り朝晩の冷え込みは冬を思わせますが、まだ日中の暖かさにはホッとします。先日のシグフィーでお知らせした「セクシュアルハラスメント等及び体罰に関する実態調査(学校生活アンケート)の実施について」は、12月が全国人権週間であることも踏まえ、毎年実施しているものです。

〇そもそも教職員によるセクシュアルハラスメント(性暴力を含む)を防止するには、正しい人権意識が不可欠です。1989年に国連総会において採択された「子どもの権利条約(18歳未満の人)」は、子どもが守られる対象であるだけでなく、権利をもつ主体であることを明確にしました。子どもが大人と同じように、ひとりの人間としてもつ様々な権利を認めるとともに、成長の過程にあって保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。

〇具体的には、「生きる権利」「成長する権利」「暴力から守られる権利」「教育を受ける権利」「遊ぶ権利」「参加する権利」など、世界のどこで生まれても子どもたちがもっている様々な権利が定められました。この条約が採択されてから、世界中で多くの子どもたちの状況の改善につながってきており、日本も例外ではありません。1989年はちょうど平成元年ですので、私が教員としてスタートして3年目にあたり、学校現場でもその話題が多くなってきたことを思い出します。

〇すべての教職員は日頃から生徒に対し、1対1で閉鎖的な状況で指導や対応をしない、不必要な身体接触はしない、管理職の許可のないメッセージ等の送信はしないことを認識しています。問題行動が発覚しても必ず複数の教員で、事実や原因の聞き取り等を決めつけや押し付けをしないで時間をかけても丁寧に行っています。確かに昭和の時代までは、該当生徒の言い分を十分に聞かずに状況を判断し、その後も「今回のことを自分で保護者に伝えるように」のような指導がありました。

〇しかし現在は、たとえ時間がかかっても生徒本人が自分のしてしまったことと正面から向き合い(多くはこれに時間を要します)、その時の心境や周囲との人間関係、その後の気持ちの変化などを浮き彫りにし、それを管理職も含めた職員の中で共有し、その詳細を保護者に伝えています。単純に比べることはできませんが、昭和の時代の指導よりも数倍の時間をかけています。これも「子どもの人権」を第一にした意識の変化です。

〇学校教育法第11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。 但し、体罰を加えることはできない」と規定されています。この懲戒とは、生徒に問題行動等があった場合に、これを正すために指導や助言、時には一定の行動制限を加えることをいいます。要約すれば、体罰(生徒の身体に対する侵害)は論外であり、前述のような生徒の人権を尊重した指導をしなければならないということです。

〇また生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの(指導中に生徒がトイレに行きたいと訴えても認めない、課題などを忘れた生徒に対して自席ではなく教室の後方で授業を受けさせるなど)も体罰の範疇になります。一方で懲戒権の範囲内と判断されると考えられる指導として、放課後等に残して話を聞く(指導する)、未提出の学習課題を課す、立ち歩きの多い生徒を叱って席につかせる等は認められています。いずれもそのことを通して生徒本人に振り返りの時間をつくったり、クラスなどへの影響を考慮したりしたものです。

〇冒頭の実態調査においては、生徒の記述があった場合には事実確認をしたり、調査結果を教育委員会への報告をしたりしていきます。お子様に回答内容を確認していただき、もし相談等があれば担任や職員に連絡をしてください。

 須藤昌英