校長雑感ブログ

2025年4月の記事一覧

4月14日(月)大阪関西万博&1年生給食開始

〇2025年日本国際博覧会が昨日開幕しました。4月13日(日)~10月13日(月)で2800万人の入場者を目指しているようです。3月までの前任校では、6月に修学旅行の1日目に万博にいくスケジュールですので、「もしかしたら行けるかも・・?」と少し期待していましたが、土中に転任となりましたので、それだけは残念です。

〇「万博」として私の記憶に残っている一番古いのは、昭和45年の大阪万博です。当時私は小学校1年でしたので、「面白そうだな、行ってみたいな」と思ってはいましたが、結局その機会はありませんでした。その後大学生の頃につくば万博が開催されましたので、何度か行きました。

〇今回の万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」で、公式ホームページには次のようにあります。引用します。

「私たちのいのちは、この世界の宇宙・海洋・大地という器に支えられ、互いに繋がりあって成り立っている。その中で人類は、環境に応じて多様な文化を築き上げることにより、地球上のいたるところに生活の場を拡大した。その一方で、人類は、利己を優先するあまり、時として、自然環境をかく乱し、さらには同じ人類の他の集団の犠牲の上に、不均衡な社会を作り上げてきてしまったのも事実である。そして今、生命科学やデジタル技術の急速な発達にともない、いのちへの向き合い方や社会のかたちそのものが大きく変わりつつある。」

〇「多様性」もしくは「ダイバーシティ」という言葉を最近よく耳にします。私自身も職員会議で、「生徒の多様性を尊重していき、可能な限りその生徒にあった『オーダーメイド』の教育を模索していきましょう」などと教職員に説明しています。

〇大切なのは、それを耳障りのよい「キャッチフレーズ」で終わらせてはいけないと思います。オックスフォード英語辞典によると、多様性(diversity)は、「互いに非常に異なる多くの人や物の集まり」と定義されています。

〇様々な立場や考えの違う人へ配慮や理解を示すことで、お互いを尊重しあい、調和のある場所を一緒につくっていきたいものですが、特に日本は、社会の多様性が見えにくい国と言われています。

〇日常生活の中でも、自分とは意見の異なる人と出会うことはたくさんあり、そのたびに相手を拒否したり遠ざけたりしたのでは、自分も内向きになりますし、周囲にも良い影響を与えません。

〇まずは大人の私たちから、意識を変えていく必要があると感じます。ただ、難しいことではなく、相手に接する際には、その相手の中に自分には及ばない点を一点見つけるようにする、つまり自然と相手を尊重(リスペクト)しようとする意識をもつことだと思います。

〇以前に読んだ本の中に、「多様性は社会的、経済的活力の源泉である」とありました。土中もそういう意味では、「多様性の宝庫」です。今週も各学年別の特別日課(個人写真撮影、発育測定、スポーツテストなど)ですが、今日から1年生も給食が始まります。

〇中学校の給食は小学校よりもカロリーや量も多くなり、最初は戸惑うかもしれません。また器の数や大きさも大きくなるので、配膳の勝手も慣れるまでに時間がかかることでしょう。給食は学校生活の中でもホッとできる時間ですので、少し緊張感をといてたくさん食べてもらいたいです。

〇午後は全校集会で、学校生活の流れや約束、生徒会活動などについて確認しました。特に登下校の交通安全や不審者対応、熱中症を意識した服装選びや清掃活動は、この時期に再度確認しておくことが大切です。素晴らしい参加態度でした。

須藤昌英

 

4月11日(金)全学年がそろいました&新発見「土中校歌・第三番」

〇昨晩の雨は「花散らしの雨」となり、桜の花びらが地に落ちてしまいました。桜の花が散るのを見るといつもその「潔さ」に感心します。人間は過ぎてしまったことをいつまでもクヨクヨしてしまいますが、桜は単純に「咲いたら散る」こと、つまり「前だけ向いて進んでいく」ことだけを意識している気がします。

〇昨日の入学式を終え、今日から1~3学年がすべてそろいました。やはり学校は主役の生徒たちがそろうと活気にあふれます。ただし1年生の給食は来週から開始ですので、今日だけ午前中日課になります。みんな一生懸命に中学校生活に慣れようと頑張っていました。

〇ホームページの「学校概要」にも「土中校歌」があり、歌詞のほかに音声でも聴くことができます。創立79年の伝統を感じさせる歌で、私もこの数日で何とか覚えることができました。

〇作詞が館山一子氏となっており、学校運営協議会の方に「土小の校歌も同じ館山一子さんが作詞しているんですよ」と教えていただきました。同じ地域の小中学校で、同じ人が作詞をしているのはとても珍しいことです。

〇赴任して校長室を整理していましたら、「柏と文学」という小冊子を見つけました。めくってみると、館山一子さんのページがあり、その略歴に「歌人、明治二十九年生まれ、東葛飾郡土村(現在柏市)に生まれる。大正八年歌人窪田空穂に師事し『国民文学』に作品を発表する。のちに『郷土』を創刊し、同誌の主宰として活躍する。昭和四十二年歿す。享年七十二年」とあります。

〇そして最後のページに「土小学校校歌」と「土中学校校歌」が刑されていますが、なんと土中校歌には3番があったことがわかりました。せっかくですので3番だけ紹介します。

三 われらの日々の研鑽に  未開の宝庫ひらくべく

  謙虚に学び堅く持し   優しく援け担いつつ

  豊かに伸びて倦まざらん

〇どうして3番が歌われなくなったのかは不明ですが、何となくもったいない気がします。来年の創立80周年に向けて、全校生徒に紹介し、彼らが了承するならば今後は3番も歌っていこうか・・・と考えています。

須藤昌英

 

4月10日(木)第79回入学式

〇午後2時から体育館において、第79回入学式で79名の新入生を迎えました。入場から退場まで、緊張した表情をしていましたが、その後の学級活動と記念撮影では、少しずつ笑顔が見え始めました。

【校長式辞の主旨】

七十九名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。そしてようこそ土中学校へ。皆さんの入学を在校生及び教職員一同、心より歓迎します。

今、担任の先生から呼名され、返事をしていた皆さんの姿を見ていましたが、「ドキドキの不安」とともに、「ワクワクの期待」も入り混じっていることがよくわかりました。今も緊張している人が多いですね。

この瞬間の心を忘れないでください。明日からは、先輩である2年生や3年生との一緒の生活が始まります。でも彼らもそれぞれ1年前や2年前は、皆さんとまったく同じ気持ちでこの場にいたのです。

人間にとって「経験する」ことが最も大切です。今の不安は、優しい先輩や親身になって指導してくれる先生方によって、すぐに安心感に変わります。しかしそれは、先輩や先生方も、皆さんと同じような経験を過去にしてきたからこそ、皆さんの不安が、手に取るようにわかるからです。

本校は昭和二十二年に創立しましたので、第1回新入生は、現在九十歳くらいになっています。今年の三月までの卒業生は、合計で一万四百人を超えています。

今日からは一緒に学習をはじめ学校行事・部活動を通して、これまでの土中の歴史をさらに発展させていきましょう。

入学にあたり、中学生としての心構えを3つお話しします。

中学校生活は、皆さんのこれからの人生にとって、重要な意義を持った三年間です。したがって、その時その時に、どうやって過ごしていくかを真剣に考えることが大切です。

まず学習では、算数が数学、図工が美術、体育が保健体育、家庭科が技術・家庭科になります。また英語も教科として本格的に始まります。

世の中はあらゆる分野で飛躍的に進歩しており、それに対応するには、「何を知っているか」だけではなく、「何ができるのか」が問われてきます。つまり、単に知っているだけでなく、その知識はどんな背景をもち、どこで使われるのかまでをイメージできてこそ、はじめて「生きて働く知識」となります。

一例を挙げます。皆さんは、小学校5年生で、三角形の面積を求める式を学習しましたね。そう、【底辺】×【高さ】÷2です。では、その公式はどうやって導き出されたのでしょうか?

近くの人と話し合ってみましょう。在校生の皆さんも復習です。どうぞ。

いかがですか?アイデアが浮かびましたか?まったく同じ三角形をもう一つ、逆さにしてくっつけると、2つ合わせて平行四辺形になります。平行四辺形の面積は、【底辺】×【高さ】ですから、そのちょうど半分が、三角形1つ分の面積になるのでしたね。

公式は単なる結果であり、それが導き出される過程(プロセス)が重要です。中学校の学習では、公式を覚えていることより、どうしてその公式が成り立つのかを、自分の言葉で説明できることの方が重要です。そういう力こそ、皆さんに身に付けてほしいと考えています。

さらに授業では、先生の話や友達の考えを聞いた上で、自分ではどう考えるかを発表したり、書いたりすることを大切にしています。それを3年間積み上げていくと、学力の中で一番大切な「学び続ける力」が身についてきます。授業に積極的に参加することを期待しています。

よく世間では、先ほどのように学んだ結果を「学力」と呼びますが、本来「学力」とは、「学」と「力」のあいだに、「び続ける」という字が入って、「学び続ける力」のことなのです。

次に、中学校には様々な活動が用意されています。総合的な学習、体育祭・合唱フェスティバル・校外学習・部活動などです。このような活動を通して、自分の力を大いに伸ばしてください。一心不乱に取り組んでいる姿は輝いて見え、やりきることで自分に自信が持てます。

最後に、このような学習やその他の活動を充実させるには、互いに相手を認め合い、支え合う関係を築くことが必要です。「気持ちのよい挨拶をされた」「不安な時に励ましてもらった」「自分の悩みを聞いてもらえた」など、友達や仲間に勇気づけられ、次の一歩を踏み出せるのが人間です。

ところで中学生ですから、今まで以上に世の中へ目を向けていきましょう。最近ではミャンマーで大きな地震が発生し、多くの方々が亡くなり、今でも救助されない方もいます。またアメリカ大統領の関税政策の影響が世界中に拡大し、株価が乱高下しています。その他世界中で戦争や紛争が続いており、悲しい思いをしている人は数え切れません。

皆さんはたまたま平和な日本に生まれましたが、日本でも過去に地震や津波などの天変地異が絶え間なく起きており、日本だけが世界からの影響を避け、今の幸せを継続できることはできません。

大切なことは視野を広げ、わからないことは自ら学びに向かい調べたり、また先ほどのように他の人と対話して問題の解決をはかろうとしたりすることです。学校の授業は社会で起きていることと密接につながっています。楽しく学び、世の中の出来事を探求していきましょう。

須藤昌英

4月9日(水)入学式練習・準備

〇本年度から市内一斉に小学校42校と中学校21校の入学式を同一日に行うことになりました。そのため今日は入学式前日練習と準備を行い、明日の午前中は通常授業(ただし学年内特別日課)となります。

〇本校は在校生(新2年・3年)も式に参加しますので、心を込めた準備とあたたかい雰囲気の当日になるように願っています。まず入学式の流れを全体で確認し、その後メイン会場の体育館と教室の飾りつけを行いました。

〇私もこれまで市内で6校の中学校に勤めたことがありますが、これほど準備をスムーズに、しかも嫌々ではなく楽しそうに、力をあわせて行っていた学校はあまり記憶にありません。「心が優しい生徒が大勢いるな」と思いました。

〇数ある美しい日本語の一つに、「寿ぐ」があります。読み方は「ことほぐ」で、別に「言祝ぐ」と書くこともあります。意味は字のごとき「言葉で祝う」「お祝いを述べる」「喜びを言う」などです。

〇特に「ほぐ」は、よい結果が得られるように、祝福のことばを唱えるという意味です。たとえば「新年を寿ぐ」といった場合に使われています。

〇私は初めてこの言葉を知った時、字から受けるイメージもそうですが、その読み方から「春の陽気によって人の心が和らぐ」と似た感覚があるなと思いました。

〇少し調べますと、この「ことほぐ」は、古くから使われていた語で、『古事記』などにも用例が見られるそうです。日本の言霊(ことだま:ことばにあるとされていた霊力)思想を反映した語であろうといわれており、ことばには発せられたことばの内容どおりの状態を実現する力があるというものだそうです。

〇明日の入学式に向けて、入学を寿ぐ「校長式辞」を作成しています。本番では全職員を代表して、心を込めて読みたいと思います。

須藤昌英

 

4月8日(火)自立・自律とタンポポ

〇今日は朝から学級活動、学年集会、身体測定など、生徒たちは忙しくスケジュールをこなしています。清掃活動も淡々と行い、「おはようございます」や「こんにちは」のあいさつも中学生らしくさわやかです。また給食も始まりますので、新しい教室で食べることは、新鮮さがあることでしょう。

〇昨日の始業式では、坂村真民(1909~2006)氏の「タンポポ魂」という詩を紹介しつつ、私から生徒へ「桜の花は見上げてみるので余計にきれいに感じますが、それに比べて足元にはいつくばるように咲いている蒲公英(タンポポ)は、地味な感じがするかもしれません。ただタンポポは踏まれた方が強くなる性質があり、一説によるとわざと踏まれるような場所で育っているそうです。」と話しました。

〇タンポポはキク科の多年草で、一年でその生を終えるのではなく、深く土の中に根を張り、冬の寒さにもじっと耐えて咲きます。東京大学名誉教授で国際政治学者の猪口孝氏は、その著書「タンポポな生き方」の冒頭で次のように書いています。引用します。

「『生き方』を考える時、私がいつも思い浮かべるのはあの黄色い花、タンポポです。春に家の近くを歩いていると、塀と道路の狭い隙間や、ヒビの入ったアスファルトの割れ目などから、ヒョロリと首を持ち上げて咲くタンポポを見ることができます。その姿は明るく健気で、『頑張っているね』と思わず声をかけたくなります。(途中略)

踏みつけられても立派に花を咲かせ、次世代につなげるタンポポのような生き方は、青春を生きる人たちにはピッタリだと思います。青春を生きる人とは、年齢が若い人ばかりではありません。よりよい人生の意味を考える人すべてです。先生も親も、教育関連の人も含めた多くの人を指すのです。」

〇中学生には「自ら主体性をもつ」ようにしてほしいと願っています。そのためには、まずは私も含めて大人である教職員が「ただの自立からその先の自律」へと意識を変えていくことが大切です。「自立」は、「他人に頼らず、自分で独立した状態」ですが、「自律」は、「自分で考え、行動の主体となった状態」です。どちらも先ほどのタンポポの姿がオーバーラップしてきます。

〇さらに猪口先生は続けます。

「『あなたは自分の性格で好きなところはどんなところですか?』これなら答えられるかもしれません。では、『あなたの欠点と思われるところは?』について考えてみてください。こんなふうに少しずつ自分を分解して考えていくと、自分の輪郭がはっきりしてきます。なぜ自分のことを知る必要があるのかというと、誰でもいつかは自分の力で生きていかなければならないからです。そのときに、自分のことがわからなければ『自立』できません。(途中略)

他人にいわれなくても、自分がどんな人間かを自分で知るためには、まず何かをやってみることです。自分で何かをやろうとしたら、うまくいかなかった、次に方向を変えたらうまくいった、というように行動を重ねることで、だんだん自分の傾向がわかってきます。その傾向が個性と呼ばれる核となるものなのです」

〇私も経験がありますので、生徒が「失敗したくないから・・」と尻込みする気持ちはわかります。でもそれは、「失敗は悪いこと、効率が悪いこと、恥ずかしいこと」という固定観念があるからです。そして生徒の固定観念は、そのほとんどが大人や社会の影響によるものです。

〇従来の日本の学校では生徒たちに、「効率よく学ばせる」ことを最優先してきた経緯があります。生徒はある意味でその「犠牲者」になっていましたが、これからはそういう状況からはやく脱却しなければなりません。たとえ失敗してもその原因を探しているうちに、修正して再チャレンジしたくなるのが「生徒の本性だ」と私は思います。

〇タンポポからも学ぶべきことはたくさんあります。冒頭に書いた生徒の活動の様子を見ながら、私も『頑張っているね』とつぶやいています。

須藤昌英