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2025年11月の記事一覧

11月17日(月)「人生、遅すぎることはない」

〇9月から始めた3年生との校長面接が一通り終わりました。一人ひとりの話を聞いて、先日のゲームの話とも共通していますが、自分が主役となり、「主体性」をもってやりたいことに挑戦していくために、志望した上級学校で学ぶということはとても大切であり、今後も応援していきたいと感じています。

〇ただ時々「自分自身に自信をなくしているのでは・・」と感じる生徒がいます。面接時間は一人15分間ですので、その原因を詳しく聞いたり、アドバイスをしたりすることはなかなか難しいのですが、そんなときいつも私の頭の中をよぎるのが「人生、遅すぎることはない」という言葉です。

○この言葉は、野球漫画で有名な水島新司氏(1939年~2022年)作の「あぶさん:84巻第3話」の題名です。この「あぶさん」もプロ野球を題材にした超大作の漫画で、41年間で全107巻、今から13年前の平成24年に長い連載の幕を下ろしました。

〇主人公の景浦安武(あぶさん)は、実在のプロ野球選手をモデルにしたキャラクターとして描かれ、チームのリーダーや中心選手ではなく、どちらかというとアウトサイダー(門外漢・厄介者)で、しょっちゅう酒ばかり飲んでいます。しかしいざという時に、チームに良い影響を与えるので、チーム内では特に若い選手から密かに慕われている存在でした。

〇私も全て読破したわけではなく、昔からたまに見かけると読んだくらいですが、野球だけでなく、身近な人達との人情的なやりとりがクローズアップされた作品が多く、読むと深くその物語に入り込んでしまうことがありました。

〇そして最終回では主人公が62歳でプロ野球を引退し、作者の水島新司氏が作中に自分自身を登場させたので話題になりました。62歳まで現役選手をするというのはいかにも漫画の世界の話ですが、今年私も同じ62歳になったので、余計に親近感があります。

〇今でも「人生、遅すぎることはない」というフレーズは、私の心に強く残っており、折に触れて自分自身に「何をするにも人生遅すぎることはないよ。今の自分に納得がいかず、何かを新しくはじめようとしたときがチャンスであり、そんな時こそ今まで自分の中に潜んでいた力が引き出されるのだよ」と言い聞かせてきました。

○私が「人生、遅すぎることはない」という言葉に出会ったのは、ひょっとしたことからでした。まだ私が30歳代で、今となってはあまり詳細を覚えていませんが、仕事で何かの壁にぶつかって悩んでいた時がありました。あれこれ試行錯誤をしてみるものの、状況が好転せず手詰まりの状態だったと思います。

〇そんな休日、家族と近隣の入浴施設に行きました。入浴後ロビーのソファー横の本棚にあったコミック雑誌を何となくパラパラとめくっていました。するとその中に、主人公が成績不振にあえぎながらもある人の言葉からまた立ち上がろうとする物語(あぶさん)が目にとまり、思わずその場で何度か読み返したことは今でもはっきりと覚えています。

〇新聞や雑誌を読んでいる時、同じ記事や文章を何度も読み返すことは滅多にありません。一度読んで何となく内容が頭に入ったら、次の瞬間は違うことを考えているのが常です。ただその時は、読んだ瞬間に何かパッと目の前が明るくなりました。

〇そして帰路では「やってもみないことをくよくよ悩んでも仕方ない、とりあえずやってみて、もしうまくいかなかったら、またそこで考えよう」と思うことができ、さっぱりとした気持ちで自宅に着きました。言葉の力はすごい!と思えた経験でした。

〇私はそれまでは「漫画やアニメは、自分の性に合わない・・・」と遠ざけていましたが、そのことをきっかけに、「メッセージ性やストーリーが優れている漫画やアニメもけっこうあるんだな」と再発見し、注目するように変わりました。

○「人生、遅すぎることはない」とは、中学生にも伝えたい言葉の一つです。自信をなくしている時の心情の奥には、「やってみたいけど、どうやったらいいかがわからない」があります。つまり見通しがないので、「とりあえずやってみよう」とは思えないのでしょう。

〇そういう生徒たちには、次のような言葉がけをしてあげたいと思っています。

⇒今まで何度かやろうとしたけれど出来なかったこと、今の自分では到底出来そうもないとあきらめてきたことなどは、誰にでも1つや2つはあります。しかしそれらは多くの場合、『本気』で取り組もうとする前に、尻込みしてしまったことがほとんどではありませんか?「あの人だからあんなことが出来るんだ」とか「自分には到底そんな能力はない」と思い込んでいませんか?生きているかぎり、何でも「手遅れ」ということはありません。周りからは簡単そうにやっているようにみえることでも、その人は他人が見ていないところで必ず努力しています。その表面だけの姿で判断せず、まずは自分の出来ることから始めてみること。そしてそれを工夫しながら続けてみること。そのきっかけが一番重要であり、まさに今、新たなチャレンジをする勇気をもってほしい。

〇「人生、遅すぎることはない」、これは裏を返せば「思い立ったが吉日(きちじつ)」、つまり「何かを始めようと決心したら、吉日を選ぶのを待たず、すぐに実行に移すのが良い」ということわざと同じです。またこれは本校のテーマである「学び成長し続ける土中」ともリンクしています。

須藤昌英