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2025年11月の記事一覧
11月6日(木)静かなる退職とキャリアアップ
〇40年近く前のある栄養ドリンクのテレビCMで、「24時間戦えますか?」というキャッチコピーがやたらと流れていました。当時私は20歳代の半ばであり、体力もあり余っていたので、それに踊らされるように、朝から晩までがむしゃら?に働いていました。
〇今振り返ると「よくやっていたな!」と思いますが、当時は人に言われてやらされるのではなく、自主的だったので決して嫌ではありませんでしたし、朝7時から夜22時頃まで、一日15時間くらいは学校にいました。
〇令和になり「働き方改革」が国を挙げて言われていますが、昭和から平成の時代に根付いた長時間労働や過剰な奉仕が、現代の労働環境では「持続可能ではない」という認識が広がっています。ある面では当たり前だとも感じます。
〇最近あちこちで聞く言葉に「静かなる退職」があります。最初は「何を意味しているのか?」と想像がつきにくかったです。「退職」といっても職場を辞める(去る)わけではありません。「静かな退職」とは、組織内での出世や昇進を目指さず、最低限の仕事だけをこなす働き方のことを指すようです。
〇これは3年前にアメリカのキャリアコーチが提唱した「Quiet Quitting」の和訳で、過度な奉仕や会社への積極的な貢献を控えつつ、自身の健康や私生活とのバランスを取ることを目的としているようです。少し調べました。
・「静かな退職」の特徴
会社などが求める最低限の業務はこなすが、それ以上の役割を積極的に引き受けたり、自己啓発に励んだりすることはしない。また残業を最小限に抑え、社内の付き合いや不合理な要求への対応も避ける傾向がある。昇進やキャリアアップへの意欲が低く、現状維持を望む。最大の目的は、仕事のストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)を避けるための自己防衛策として、また、プライベートの時間を大切にするための手段として選ばれる。
・「静かな退職」が広まる背景
仕事一辺倒ではなく、「ワークライフバランス」を重視する価値観が浸透していることの影響が大きい。多少の不満を抱えながらも不本意な退職・転職を避け、会社などに留まり続けるため、企業側にとってはエンゲージメントの低下や生産性の問題につながる可能性がある。最終的に本人を過度な負担から身を守り、持続可能な働き方を選んでいるともいえる。
〇またその一方で近年は、「キャリアアップ」という概念が広がっています。一般的に「キャリアアップ」とは、職務経験やスキルを高めることで、役職や収入、社会的な価値などを向上させること意味しますが、真のキャリアアップとは、「将来を見据えなりたい自分やなるべき自分に向けて経験を積み、キャリア面から理想の自分に近づくこと」だと思います。理想的にはいろいろな職務を経験することで、企業や社会に貢献することにもつながります。
〇それに関しては、自己啓発について書かれた本が山ほど出版されています。自己啓発とは、自身の意志で、能力を高めたり、精神的な成長を目指したりする自発的な取り組みです。本を読んだり、セミナーに参加したり、資格取得を目指したりするなど、具体的な方法で行われます。
〇昨日、学校の部活動は生徒が「自己実現(身体・精神的な成長やなりたい自分に近づく)」を目指すことが最大のメリットであることを書きました。そして今の中学生が将来社会人になった際には、自分で選んだ職業で同じように自己実現をしてほしいと考えています。
〇「キャリアアップ」の方向性は人によってまちまちですが、先ほどの「静かなる退職」とは180度対極にあります。また「働き方改革」は個人の問題ではなく、経済の問題のような気がします。働く人々すべてが健康でい続けることは、会社(企業)としてもパフォーマンス高く働いてくれる人材を確保し続けることにつながります。
〇もちろん過労で命を落とす人が出るのは避けなければなりませんが、自分の可能性を試して伸ばすには、ある意味「自分の限界」を幾度か経験することも必要ではないかと感じます。自分の限界を認識できた時、「次のステップとして自分は何に取り組もうか?」となるのではないでしょうか。
〇生徒が学校で行う委員会・係活動も、経験するからこそ見えてくるものや身につくスキルがあり、最後はその仕事で「学校やクラスを支えている」という貢献心がそれを続けることを可能にしていると思います。
〇1か月前に自民党の新総裁となった高市早苗氏がその就任時に、「私自身がワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」といういわゆる「馬車馬宣言」をした時には、正直驚きました。「えっ」という感じで自分の耳を疑いました。
〇自分自身への決意宣言であれば別に角は立ちませんが、一国のリーダーが公の場で、もしそれを「私も働くので、みんなも同じように働いてほしい」というメッセージとして言ったのなら、この令和の時代にそぐわないのではないか?と感じました。
〇若い頃に、「働くこと」は、「傍(はた)を楽(らく)にする」ことだと本で読んだことがありました。その意味は、自分の周囲の方々に自分が動くことによって、よい影響を与えることだと思ってきました。それが自分のモチベーションだったことは間違いありません。今の中学生にはこのことをどのように伝えたらいいか・・・?悩ましいところです。
須藤昌英
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