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2025年11月の記事一覧

11月28日(金)自分のトリセツ(メタ認知)

〇取説(とりせつ)は「取扱説明書」を短縮した言葉で、カタカナで「トリセツ」と書くことも多いです。10年以上前くらいに、若い女性歌手が同名の曲を歌う姿がテレビで流れてきた際、私も初めて「今は取扱説明書を略してトリセツと呼ぶんだ!」と初めて知りました。

〇トリセツには普通、その製品の「スペック(性能)や特徴」、「正しい操作方法」「上手な使い方」「使用上の注意」「故障の見分け方」「安全に関する注意事項」などが記載されていますが、最初からすべて読む人は皆無でしょう。必要な時に該当箇所を読んで対処することがトリセツの目的だと思います。

〇このように身近な家電などの操作を書いたトリセツは、まだなじみ深いですが、「『自分のトリセツ』とはいったい何のことだろう?」と疑問に思う方もいると思います。*シートを参照ください。

〇簡単に言えば、「自分を知る」ということであり、日頃から慣習的・統計的に「自分はこういう時にはこう考えたり行動したりすることが多い」と自分を客観視することです。確かに人によって無意識に行動する時の決まったパターンはあると思いまし、私もあります。

〇そのように自分の「心や内側」に関心をもち、徐々に自分の「輪郭や本質」を理解することは、中学生のように大人になる過程では欠かせないものであると思います。

〇ただし「どうせ自分は~のような人間だから」と開き直るのではなく、今の自分を出発点とし未来のなりたい自分をイメージしながら、やりたいことやるべきことに取り組めることが理想です。

〇自分のトリセツのきっかけになり得る一つの方法は、日記も有効です。また最近は日記に似ていますが、ライフログという記録も広まっているようです。

〇ライフログとは、LIFE(生活)とLOG(記録)を組み合わせた造語で、日々の生活体験、気づいた情報等を紙や手帳、スマホのアプリやブログ等にデジタルデータとして記録していくことを指すそうです。

〇それにその時の気持ちや行動も一緒に記録することで後から振り返りやすくなったり、自分だけのオリジナリティに富んだライフログとなったりするのが利点でしょう。

〇私も年号が昭和から平成に変わる時(今から38年前)、何か新しいことを始めようと思い立ち、本格的な日記帳を使い始めました。それまでも手帳に簡略してその日の出来事を書いていましたが、正式の日記帳に毎日書くことは新鮮でした。当時は25歳でしたので、これまで数冊の日記帳(3年日記、5年日記、10年日記など)があります。

〇日記からさらに転じて「自分のトリセツ(メモ)を書く」にはまず、自分の強みや弱みを把握することから始めるのがよいと思います。人にはそれぞれ物事の見方や感じ方の癖がありますが、それを癖ではなく「自分軸」と捉え、生きていく途中に迷ったりつまずいたりした時の参考に見るメモがとすれば、安心を得るなどの楽になるための大きな要素になります。

〇昔から「己事究明(こじきゅうめい)」といって、「自己とは何か」を究めて明らかにすることを、若者は求めてきました。たとえば中学生くらいになると、やたらに理屈っぽくなり、世の中の出来事も批判的に見るようになります。しかしそれは順調な成長でもあります。

〇一つのことを考え抜くのは大人への一歩であり、それは「哲学」に近いと思います。そして大人の言う「屁理屈(へりくつ)」こそ中学生には大切ではないか?とさえ思います。ただ気を付けたいのは、世の中(外)ばかりでなく、自己(内)に対しても批判的になりますので、極端に自己否定にならないようにすることも重要です。

〇自分のことを見つめることをマインドフルネスでは「内観」とも言います。よく「生徒の学習や大人の仕事でも予習よりも復習が肝心だ」と言われますが、私も含め日頃から自分自身について、丁寧に復習している人というのはあまりいないのではないでしょうか。

〇大人も子どももそれぞれ忙しいことを理由に、SNSなどの外部の刺激には反応しても、自分自身の身体にだけ意識を通し続けることは避けているのが実情でしょう。

〇自分のことを客観視する「自己モニタリング」は、ストレス対処やミスの軽減、自己パフォーマンスの向上に役立つといいます。その自己モニタリングに欠かせないのが、「メタ認知」です。

〇「メタ認知」とは「自分自身の認知(考える・感じる・記憶する・判断する等)を第三者的な立場から冷静に客観視できる能力」のことです。この能力によって自分が行っていることが正しいのか、また間違っているのであればどのように修正すればよいのかを判断することができるようになります。

〇中学生にもこの能力は十分にあり、自分の得意・不得意なことを的確に認識し、「自分ができないことをするためにはどうしたらいいのか?」という問いに対して自分で答えを出そうとします。

〇この客観的な視点から自身を認識することと、他人から見た自分の姿を一致させていくことで、本当の自己肯定感が生まれます。「自分には●●という長所があるので、それをいかして〇〇を頑張っていきたい!」とすべての生徒が言えるようにしてもらいたいと願います。

〇今日で定期テストが終わり、来週から12月(師走)になります。本校ではここまでインフルエンザ感染の大波はきていませんが、穏やかな年末になること願っています。

須藤昌英

11月27日(木)後期中間テスト

〇今日と明日の二日間で、5教科のテストを行っています。テスト範囲は9月~11月の授業内容です。ここまで各自が準備してきたことを出し尽くせるように祈っています。

〇先週の夕方、逆井駅の近くの学習塾(I個別指導学院)に出向き、担当者との打ち合わせと教室見学をしました。私は学生時代に家庭教師の経験はありましたが、塾の講師はしたことがないので、若い講師が生徒に寄り添うように学習支援していたのが印象に残りました。

〇その塾のパンフレットには、「一人ひとりに『わかる感動』を」と銘打って、個別指導でなければ成せないこと、顔や性格が異なるように最適な学習スタイルは生徒によって違うこと、「わかった」という感動と「できる」という自信を育むことが書かれています。

〇まったくその通りだと思います。確かに中学校卒業後は高等学校への進学を選択する生徒が多いので、目の前にある受験は大きな壁となります。私もそうでした。しかし「学ぶ」ということは完結することはありません。中学校までの知識や技術は、一生学び続けるためのツール(道具)にすぎません。

〇確かに良いツールがあれば良い仕事ができますので、今のうちに身に付けておく方がいいかもしれません。しかし実際は、生きていく中で必要を感じたときに、今の自分にはない知識や技術を学びなおせばいいだけですので、そんなにせっかちになり過ぎることもないだろうと思います。

〇つまり学びは定期テストや受験のためだけでなく、将来の夢を叶えるための力だと捉えることができ、例え計画通りにいかなかったり失敗したりしても、そこから立ち直る強さも育むことを目指しています。最近よく使われる「レジリエンス」はまさにそのことを表した言葉です。

〇「レジリエンス」は、もともとは物理学の「弾力」「復元力」を意味する言葉でしたが、心理学の中で「精神的回復力」として広く用いられ、近年ではIT分野におけるシステムの復旧能力や、ビジネスにおける危機を乗り越える力の意味でも使われています。

〇そのレジリエンスを高めるには、健全な資質(柔軟性、積極性、問題解決志向)、良好な人間関係(信頼できる人とのつながり)、健康的な生活習慣(睡眠、食事、運動、心のケア)などが重要です。またこれらに加えて、具体的な目標設定と小さな成功体験の積み重ねも自信と自己肯定感を育むために効果的です。

〇学校と塾の連携は、教育の一貫性を保ち、生徒の学習効果を高めるために有効です。具体的な方法としては、学校の授業内容を塾が補完することや、塾が学校の進度に合わせて個別の指導を行うこと、そして私が今回訪問したような定期的な情報交換があります。

〇学校が多様な生徒に平等な教育機会を提供する集団学習が中心である一方、塾は個別指導などを行っています。それぞれの良さを認識しつつ、学校の集団学習は基礎学力だけでなく、生徒が卒業した後の社会性を身に付けさせることも担っていることは認識していきます。

 須藤昌英

 

11月26日(水)キャリアパスポートに関する面接(2学年)

〇昨日から2年生を対象に、キャリアパスポートを活用した面接を始めました。3年生の校長面接は入試対策も兼ねていましたので、一人あたり15分程度でしたが、今回は約半分の7分とコンパクトに行います。初めに面接等の入退室のマナーを教えました。

〇キャリアパスポートとは、2020年度から本格的に導入されました。小学校から高校までを通して児童生徒自身が自身の学びや成長を記録・蓄積するポートフォリオ(学習成果物)です。学習活動や生活での経験を振り返り、自己理解を深め、将来の生き方を考えるための活動で活用されます。

〇生徒が自分のキャリアパスポートに書いた内容をもとに、生徒の「学びに向かう力、人間性等」や「将来の目標に向けた主体的な取り組み」を確認・支援するための質問を私からします。

〇キャリアパスポートの最も重要な点は「振り返り」と「自己理解」です。生徒自身の考えや思いを尋ねますので、決して難しい質問ではありません。上手く答えるというよりも、この機会であらためて自分と向き合うことになるので、今後にいかしてもらいたいです。

【主な質問事項】

1.中学校生活の振り返りと自己理解に関する質問

「中学校生活で特に力を入れて取り組んだことは何ですか?(学習、部活動、生徒会活動、委員会活動、学校行事、外部活動など)」

「その活動の中で、一番印象に残っている出来事は何ですか?また、それはなぜですか?」

「その経験を通して、どのようなことを学びましたか?」

「楽しかったことだけでなく、困難だったことや失敗はありましたか?それをどのように乗り越え(あるいは対処し)ましたか?」

「自分の長所や得意なこと、成長したと感じる点は何ですか?」

「逆に、課題や今後伸ばしたい力は何ですか?」

「大切にしている好きな言葉や憧れまたは尊敬する人物は誰ですか?」

2. 将来の展望とキャリアプランに関する質問

「将来の夢や、目指している大人像はありますか?」「土中卒業後の進路(進学・就職)について、どのように考えていますか?」

「なぜ、そうなりたい(そうしたい)と思ったのですか?その動機を教えてください」

「その目標を実現するために、残りの中学校生活で具体的にどのようなことに取り組みたいですか?」

「【貢献する】という意味は何だと思いますか?」              「あなたが将来働く上で大切にしたい【価値】は何ですか?」

〇面接では質問に対して、キャリアパスポートに書いた内容と一貫性を持たせながら、自分の言葉で具体的に話すことが重要です。

〇最後にアドバイスをしています。生徒たちは毎年、緊張した真剣な表情で取り組んでいますので、こちらも襟を正して行っています。

須藤昌英

11月25日(火)授業研修会と柏南高校創立50周年式典

〇金曜日は6教科の7つの授業で、外部から講師を招き、教員の授業力向上のための研修を行いました。

〇「教員の憲法」と言われる教育基本法には、「学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と明記されています。

〇どの授業も教えることはしっかりと教えた上で、「生徒の深い学びを目指すにはどうしたらよいか」について、授業後のリフレクション(省察・振り返り)で、活発な意見交換がありました

〇教員の仕事の一丁目一番地は、分かりやすくしかも社会とのつながりを生徒たちに感じさせる授業を行うことです。今週からの授業にいかされると確信しています。

〇22日(土)は、柏市民文化会館で本校の学区にある千葉県立柏南高等学校の創立50周年記念式典があり、来賓として出席してきました。柏南高にはこの50年間で1万9千人近くの卒業生がいて、現在も千人を超える生徒が在籍しており、県内でも一番の大規模校です。

〇式典ではまずその歴史が紹介されました。昭和50年に第1学年生徒が260名(6クラス)入学しましたが、まだ校舎も体育館も建設中で、入学式は土小の体育館を借りて行いました。また約1年間は、今の増尾西小の土地にプレハブ校舎を建てて授業をしていたそうです。地域との結びつきが強いのはこのためだとわかりました。

〇そして校舎完成後、一人一人が机と椅子をもって、今の増尾西小から柏南高までの約2㎞の道のりを一列に並んで運んだことを聞き、創立当初の大変さが思い浮かばれました。

〇式の全体の司会は、日本テレビアナウンサーの山本紘之さん(第30期卒業生)が務めていました。朝の番組のZIPを担当しているので、私も見たことがありました。高校時代はサッカーをしていたそうです。アナウンサーの話し方はさすがにプロでした。

〇また記念講演は、第9期卒業生の声優・俳優の三石琴乃さんが、自分の経歴を話しながら、あきらめずに挑戦することの大切さを生徒たちに語りかけていました。三石さんは有名な「セーラームーン」などの有名なアニメの声を担当してきましたが、私が一番馴染み深かったのは、ドラえもんののびた君の母親(玉子)さんの声でした。

〇生徒の代表者たちと山本さん、三石さんが協働して、エバンゲリオンという映画のセリフを実演した場面も楽しかったです。あえて映画中の専門用語ばかりの場面を想定し、みんなで入れ替わり立ち替わり吹き込みをしていました。高校生も放送部の生徒でしょうか?活舌も良くとても上手でした。

〇来年秋に予定している本校の80周年記念イベントの参考になりました。

須藤昌英

11月21日(金)1学年校外学習決議集会

〇来月の5日に上野恩賜公園で行う校外学習に向けて、1学年は昨日の6校時にオンラインで集会を行いました。実行委員が司会となり、各部から当日の約束や留意事項について説明し、質問に回答するかたちで会は進行しました。

〇事前に夏季休業中の課題として、リストから1~3つを選び、本やネットで調べてコラボノートを使ってまとめる作業を行っています。

【リスト】・上野恩賜公園 ・国立科学博物館 ・国立西洋美術館 ・東京都美術館 ・東京国立博物館 ・恩賜上野動物園 ・上野東照宮 ・国際子ども図書館 ・台東区立したまちミュージアム

〇学校の教科学習以外の「特別活動」の目的は3つあります。

(1)多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し動の仕方を身に付けるようにする。

(2)集団や自己の生活、人間関係の課題を見いだし、解決するために話し合い、合意形成を図ったり、意思決定したりすることができるようにする。

(3)自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、人間としての生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。

〇また特に今回の校外学習は、学年の生徒で協力し、普段のよりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して、集団への所属感や連帯感を深め、公共の精神を養うことを目指して行います。

〇さらに詳しく説明すると、次の4つ面が重点項目です。

①<計画・立案・事後指導>

・行事の計画の仕方を知る。

・一つの行事を成功させたという達成感を味わわせ,次への意欲付けとする。

②<グループ活動>

・小グループでの活動を通して,生徒同士の親交を深める。

・集合や解散,目的別の活動から社会性や協力性を高める。

③<生活面>

・集団で過ごすための基本的なルールを守ることへの意識を高め,学校生活に生かす。

④<学習面>

・グループごとにテーマを決めることで,目的意識を持って主体的にグループ活動に取り組めるようにする。

・体験学習の事前・事後指導を通して,調べ学習の手順や方法を知る。

〇各部会の仕事分担は、次のように分担しています。もちろん全員がどこかの部会に所属し、割り振られた仕事をします。

●実行委員⇒全体の企画・しおり作り・各部会の活動状況の把握と指導・各種集会・(報告集会の準備)

●班長生活部会⇒班の統率・班別行動中のリーダーシップ・ガイドブックの管理・地図・点呼・きまり・マナー・持ち物

●コース部会⇒コースの計画・時間管理など

●学習広報部会⇒班別テーマ・体験学習場所の調査・事後発表会・新聞作成のリーダーシップ・カメラの管理

●保健部会⇒各ポイントで行う健康観察

●食事美化部会⇒昼食時のマナー指導

〇校外学習当日は、班ごとに公共交通機関の電車(東武線、JR常磐線)を利用し、上野恩賜公園で開校式と写真撮影を行った後、周辺の博物館や美術館、動物園等を見学します。

〇持ち物や服装、行動の決まり等については、昨日の決議集会を受けて、最終案を作成中です。後日配付するしおり等をよく見て、上記の目的を達成できるようにしましょう。

〇3学年は5月に修学旅行、2学年は9月に林間学校をすでに実施していますので、1学年が最後となります。そして今回の経験をいかし、来年と再来年の宿泊を伴う学習へ繋いでいきます。

須藤昌英

実行委員 

1組 森下裕仁さん 中村瑠菜さん

2組 安野碧海さん 平川涼雪さん

部会長 

班長生活 1組高橋希菜さん 1組笠原夢乃さん

コース  1組染谷宣喜さん 2組堀川瑚夏さん

保健   1組金定明希さん 2組血琉衣さん

食事美化 1組森下裕仁さん 2組平川涼雪さん

学習   1組五十嵐みはるさん 2組谷澤孝太郎さん

 

 

 

11月20日(木)集団読書「マージナルマン―反抗期を迎えたすべての人に」

〇1・2学年は、全員で同じ本を読む「集団読書」を行いました。集団読書は、読んだ本の感想や意見をお互いに話し合う活動で、一人で読むだけでは気づけなかったその本の新たな魅力を見つけたり、より深い読書体験を得たりすることが期待できます。

〇今回読んだ本は、北原りゅうじ氏作の「マージナルマン―反抗期を迎えたすべての人に(少年写真新聞社)」です。子どもから大人へと成長していく青年期、これを「マージナルマンの時期」と呼ぶことは、私も初めて知りました。

〇調べてみると「マージナルマン」とは本来、二つ以上の文化や集団に属しながら、どちらにも完全に同化できず、境界に位置している人を指します。「境界人や周辺人」とも訳され、文化の交錯や異文化への移行、あるいは青年期のように大人と子どもの間にいる不安定な状態の人を指す社会学や心理学の概念です。

〇中学生はまさに反抗期に入っており、子どもの世界から抜け出そうと必死にもがき苦しむ時期でもあります。私も読みましたが、親しみやすいマンガもあり、文章というよりも詩に近い感覚で読みやすく生徒たちにも好評です。

〇「自律」と「自己表現」をテーマにしたこの本は、まだ視野が狭く、自分本位になりがちで不安定な中学生の心に響くと思います。北原氏は「あとがき」で次のようなメッセージを投げかけています。

【「マージナルマン―反抗期を迎えたすべての人に」のあとがき】

自分が反抗期にいた頃  社会や大人がつまらなく見えた

しかしよく見てみると  輝いている大人もいた

自分もそうなりたいと思った  その時から人生は変わりはじめた

つまらない大人になるのは たやすいことだ

流されればいいだけだから

自分の感情にただ流されて  言いたいことだけを言い

やりたいことだけをやればいい  またなんにも考えず

周囲にただ合わせていくだけでも結果は同じ

いずれにしても幸せとは程遠い  暗い淵へとはまりこむ

若い人よ  つまらない大人になることなく

輝く大人になろう  自分の可能性を信じて

心に夢を抱き  強い意志を櫂(かい)として

人生という大きな河を 自らの力で進んでいこう

〇本書は自分自身を見つめ、大人に成長していくための数々のヒントを生徒たちに与えてくれます。だれでも経験する反抗期への共感と、無限の可能性をもつ生徒たちへの励ましのメッセージは、保護者の方にも一読をおすすめします。

須藤昌英

【1学年の感想より】

・この本はイラスト付きで、とてもわかりやすかったし、「少し自分もこの場面とかにあてはまっているな」などと共感できた。

・この本を読んで、今自分は中学生で小学生ではないから、大人に近づこうとする。自己実現を目指して、前向きにしっかりと自分を信じて、生活態度をあらためようと思った。

・本を読んで、「私もこういうときあるなあ」と思いました。つまらない大人になるよりも、「自分を信じて生きていった方が楽しいんだろうな」と思いました。

・「欲求・感情」「理性」「理想」の3つのバランスが大切。「理想」だけが先走りすると、できなくてイライラしてしまう。「欲求・感情」は悪い所もあるけれど、良い所もある。だから「理性」が調整役をすることが大切。

・親のありがたさを知りました。まだ自分だけでは考えられないことも多いし、大人にコントロールされるばかりでなく、自由をあたえてくれる大人たちに感謝することが大切だと思いました。まだまだ大人ではないけど、自分で出来ることはやる!など、どんどん増やしていきたいなと思いました。

・「欲求・感情」があばれているときは、理性がとめるが、理性は年齢が上がるにつれて強くなっていく。ストレスが「欲求・感情」に入ると、悪にかわってしまい、親、先生、友だちに反抗をしてしまう。ストレスを減らすには、友だちと楽しい時間を過ごしたり、何かに熱中したりするということを学ぶことができた。

・私は自分の気ままを抑えることも、自分で規範をたて従うこともできない、やりたくないので、まだまだ自律には程遠いと思いました。「希望が通らないのは何故でしょう?それはまだ親の信頼を勝ち得ていないからかもしれません」が心に残りました。

・人生の中に、マージナルマンというのがあることを初めて知った。これからはやりたいこととかやりたくないことも、自分勝手にならないで考えることをふやしていこうと思う。自己実現しようとして、理性・理想・欲情のどれか1つだけが進んでしまうとダメだと思ってできなくなるから、少しずつでもあせらずに進んでいこうと思えた。

・信頼されるようになるためには努力が必要で、責任を果たしてはじめて信頼を勝ち取ることができる。責任を一つ一つ果たすことによって、自由の範囲も広がるのだとわかった。今、大人の世界で活躍している人たちは、マージナルマン時代に、必ず誰かの笑顔に出会っていて、誰かにはげまされているんだとわかった。

・自分らしさを発揮することで、笑顔や「ありがとう」であふれた日々が送れることがわかった。私は人に流されずに、しっかりと自分を信じて生活していこうと思います。

・今、この年齢ぐらいで反抗期があったりするけれど、それはマージナルマンになるためであって、マージナルマンになるには、イライラをへらすために、小さな理性を強くすることが大切だと思った。

・今まではゲームがしたいなどと言って、勉強があまりできていなかった。これからは自分の欲求や感情のままのことをするのではなく、勉強もして理想の自分になりたい。

・自分の好きな事ばかり優先してしまって、やらなければならないことをやらない時があったから、自分のやる気を自分でつくって、好きなことをしていきたいと思いました。

・親に反対されたとき、私なら心の中でいらついて終わっていたかもしれませんが、この本を読んでこれからは納得してもらう理由をそのときに出せるように日々努力したいです。

・「はやく大人になりたい」と思うこともあるけど、今はマージナルマンだからもう少し子どもでいようと思った。怒る時は獣が大きくなっていて、もう少し大人になったら青い鳥を見つけられるのだと思う。楽しみ。

・子どもから大人に向かって、私は今歩いているけれど、いつか将来の夢に受かって、とべるように成長していきたいと思いました。そのため自分の理性と向き合っていっきたいと思います。

【2学年の感想より】

・自分の感情をそのまま優先して過ごすのではなく、しっかりと物事を考えて、冷静に判断していきたいと思った。自分も青い鳥をつかまえて幸せになりたい。

・反抗期は理想が高すぎるときに起こるものだと思っていたが、欲求などが大きなり、理性が他より小さくなることによって起こることを知ることができた。

・反抗期は行動と言っていることが一致しないことを読んだので、自分を見直そうと思いました。これからは自分を客観的にみて、この行動は正しいのか?などと考えて生活したいです。

・周りの人の話に耳を傾け、本を読んだりたくさん感動したりしたら、論理的思考や客観的思考、状況判断力、他人への思いやりの心も育っていくのだと知った。

・この本に書かれていることを実行するのは難しいと思うけど、最後に書かれていた通り、流されず前向きに自分を信じようと思いました。

・大人の道はまだまだだけど、目の前の目標に向かって、寄り道せず、やる気も元気も出していきたいと感じました。

・親が叱ってくれるのは、今後の為ためだということがあらためてわかった。たくさん挑戦して、自分の理想と欲求を合わせることが大切だと思った。

・劣等感を感じることは、理想が強いからだとわかりました。理想が先走っていかないように、自分をちゃんとコントロールできるようにしたいです。

・この本を読んで、すぐに怒らないで、「なぜ反対されたの?」「どうして?」と考えることで、イライラを少なくできることを知った。良い本だと思った。

・「大人は絶対的存在」だと小さい時は思っていた。独自の理想や独立心を持ち始めることは大人になるための第一歩になる。

 

 

 

11月19日(水)風邪は治るが治せない

〇今朝は自宅近くの畑の表面にうっすらと霜がおりていました。手賀沼の近くに住んでいることもありますが、これから先は、もっと真っ白な霜柱がたつ朝がくることでしょう。

〇インフルエンザが流行中で、近隣の小学校でも複数の学年で学級閉鎖の処置をとっているようです。本校は来週に定期テストが予定されていますので、何とか広がらないように願っています。

〇個人の予防としては、ワクチン接種があります。私も住んでいる町内にある内科医院で、接種の予約をしました。その医院は今月から夕方の時間帯は、通常の診察はせずにワクチン接種専用としています。

〇その院長さんは、医院のホームページに「院長ブログ」を投稿しており、私も時々読んでいます。幅広いテーマでとても長文ですが、読んでいると書いてある内容がご本人の佇まいと重なってくるので、面白いです。

〇その中で先日の「風邪は治るが治せない」という記事が印象に残りました。風邪に対する私たちの間違った知識や行動について、専門家の見解がとても参考になるので、一部を抜粋して紹介させてもらいます。

⇒私は以前から「インフルエンザ流行時の対応」について注意喚起を繰り返してきました。それは、社会の「常識」には医学的な間違いが少なくなかったからです。発熱に対する認識もそう。あるいは、風邪薬や検査の必要性についてもそうです。「社会でごく当たり前になっていることには、あるいは医者がなにげなく行なっている診療にも、実は医学的に間違っていることは多いのですよ」と指摘したのです。

⇒それはこのブログを通じて繰り返し情報を提供してきましたし、患者さんに対しては診療をしている時に直接説明したりしました。また、私が校医をしている学校の養護教諭にも指導してきたことです。しかし、そうした努力はなかなか浸透せず、多くの人々の行動変容をもたらすほどの影響力はありませんでした。

⇒その後、新型コロナウィルスの感染拡大が社会問題化し、加熱するマスコミの報道でも誤った対応が喧伝されるようになりました。「検査はできるだけ早く、しかも何度でも繰り返す」「新型コロナに感染したと思ったらすぐに病院を受診する」などがその代表的な事例です。多くの国民がそうした情報にしたがい、必要のない検査をして国費を無駄にし、発熱外来に殺到して感染を広めたのです。

⇒当院では、風邪症状のある方には、あらかじめお電話をかけていただいてから来院してもらっています。それは感染症の患者の来院時間を指定し、待合室にいる一般患者とできるだけ分離するためです。しかし、そうしたことを知らなかった風邪患者が、事前のお電話がないまま直接来院することもあります。そんなときは院内が混雑し、一般患者と感染症の患者の分離に苦慮することもしばしばです。

⇒お電話でのお問い合わせの際に怒り出す人もいます。「なんで今すぐ診てくれないのか」というものです。感染症の患者さんにはできるだけ空いている時間帯を指定して来院していただいています。特に「今すぐ診る必要性が高くない患者」、例えば症状が出たばかりの方や風邪薬を服用してきた方たちには、「しばらく経過を見て、あらためて電話してほしい」と説明する場合があるのです。

⇒風邪は薬で治すことができません。自分の免疫力で治っていくものなのです。風邪薬は「風邪を治す薬」ではありません。むしろ風邪症状をわからなくする薬であり、ときに診療の妨げになる薬です。医師が風邪症状の患者に処方する薬は、その症状を緩和するためのもの。どのような薬を処方するかを判断するためにも風邪薬は服用しないでほしいのです。

⇒本来、「風邪」であるなら薬を服用する必要はありません。肺炎を合併しない限り、自然経過で数日のうちに必ず治るからです。なかなか治らない症状は単なる風邪ではありません。「早期発見、早期治療」と思ってか、「早く治したいので、早く薬を飲みたい」という人がいます。でも「早く薬を服用しても、風邪は早く治すことはできない」のです。「風邪に風邪薬」は「早めにパブロン」というキャッチコピーの誤った受け売りにすぎません。

⇒風邪薬を飲みながら会社や学校に行くと、周囲の人に感染を広めてしまうことにもなります。「風邪薬は飲まないでください」とお話しすると、「風邪薬を飲まなければ熱が下がらず、会社に行けないじゃないか」と言う人がいます。しかし、「熱がでたら会社や学校に行ってはいけない」のです。一般的に発熱しているとき感染力が強いことが知られています。「発熱時は自宅で療養」が原則です。

⇒熱があっても、よほど辛くなければ解熱剤を使用せずに経過観察。そして、熱がいつまでもさがらないのであれば(目安は「高熱が3日目に突入したら」「微熱であっても5日目に突入するなら」)医療機関に電話をして相談すべきです。発熱は「早く治すため」にも、また、「重症化を発見するため」にもとても大切な情報です。怖いあまりに解熱剤を多用していいことはありません。

〇いかかでしょうか?「風邪は自分の免疫力で治っていくものなのです」など、これまで勘違いしていたことも多かったのではないでしょうか?昔から「風邪は万病のもと」といいますが、インフルエンザなどの感染症も含めて、予防に努めた上で、もし発熱等があったら、適切に対応するしかありません。

〇結論から言えば、大切な自分の免疫力を高めるには、日頃からバランスよく食べ、面倒くさがらずに運動し、夜はしっかり休養(睡眠)をすることです。規則正しい生活は、風邪薬よりも効果があるということでしょう。

〇医師が「風邪は治るが治せない」と主張すると同じく、教育のプロとして「教員は教えることはできるが学ばせることはできない」と最近思うようになりました。「学ぶ」のは生徒が自主的になった時だけであり、我々教員はしっかりと教えつつ生徒が学ぶきっかけをつくって「待つ」しかないのです。

須藤昌英

【いつもお世話になっている内科医院】

11月18日(火)目のつけ所と目ざとさ

〇定期テストまで10日となり、各教室では生徒たちが真剣に授業へ参加している姿が見られます。授業をする教員としては、「この時間でどのようにすれば、生徒たちが教科の内容を理解したり身に付けたりしてくれるのか・・」を常に考えて前準備をしています。

〇また近年は、深い学びの実現に向けた授業改善を行うことが求められており、各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を発揮させたりして、学習の対象となる物事を捉え思考することにより、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(「見方・考え方」)を鍛えていくことに重点が置かれています。

〇「見方・考え方」を別に言えば、「目のつけ所」となります。「目の付け所」とは、物事を見たり評価したりする際に注目すべきポイント、つまり「着眼点」のことを指します。特に「目のつけ所がいい」「目のつけ所が違う」といった言い回しで、他の人とは違う視点や優れた着眼点を持っていることを褒める際に使われます。

〇私も過去に数学の授業をしていて、「この生徒は目のつけ所がいいな!」と感心することがよくありました。他の生徒が当たり前と思って気にかけないことでも、新たな視点で考え、「でもこれは~とも考えられるじゃないか~」と広い視点をもち、それを聞いて思わず周囲の生徒たちも「なるほど!」とうなってしまうこともありました。

〇また「目のつけ所が違う」は、もっと高いレベルで着眼点が優れていて、他の人とは異なる視点を持っているという意味で使われます。こちらはたとえ当人が周囲に説明しても、なかなかすぐには理解してもらえずに、場合によっては埋もれてしまうことさえあります。

〇世の中で革新的な技術やサービスを開発し、新しい市場を創造するいわゆる「ベンチャー企業」などは、他の人が気づかない点に気づき、物事の本質を突く鋭い洞察力をもつ設立者が何年も抱いていたアイデアが実現したのでしょう。日本の例では、誰もがスマホで簡単に自分の不要な物を売買できるアプリ「メルカリ」が登場し、その手軽さが特徴で急成長しています。

〇「目のつけ所がいい」と同じような言葉で「センスがいい」もあります。これも物事の微妙な違いに気づき、良し悪しを判断する能力や、洗練された感性を持っていることを言います。例えば私も数学の授業で、ある問題に関して幾通りかの解法があった場合に、「どれでも解答にはたどり着きますが、最も数学的センスがある解法は〇〇です。ぜひ他の方法との違いを味わってみてください」などと話していました。

〇教科における「見方・考え方」は、新しい知識・技能を既に持っている知識・技能と結び付けながら、社会の中で生きて働くものとして習得したり、社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために重要なものです。

〇とにかく長期的にみると、学校や家庭での学習や経験を通じて培われたその人独自の視点や思考のパターンが、その人の内面に深く根ざし、その後も影響を与え続けます。要するに中学校を卒業しても、いずれは教科等の知識は剥がれ落ちていきますが、身に付けた「見方・考え方」は一生涯残ります。

〇「目ざとさ」という言葉を時々使うことがあります。意味は、「他の人が気づかないうちに物を目にとめるのがはやい」で、「あの人はいつもめざとく見つけるね」のように、ほめているのか?けなしているのか?わからずに使っていることが多いです。

〇調べてみると「目ざとい」は、使われる文脈によって、ほめ言葉にもけなす言葉にもなり得るようです。基本的には、対象物を見つける速さや機敏さを表す言葉ですが、その使われ方によって意味合いが大きく異なるので、私も昔から気を付けて使ってきました。

〇年少組の孫の女の子は、我が家に遊びにくるたびに、例えば「クマのぬいぐるみの場所が違う!」など、前回来た時の違いをすぐに指摘します。そんな時は心の中で「この子はめざといな」などとつぶやきます。孫からすると気がついたことを単に言っているだけなのですが、言われたこちらは場合によっては「ハッ」とすることがあります。

〇でも「目のつけ所がいい」まではいきませんが、「目ざとい」こともよく観察しているという意味で、最近は「良いことではないか?」と思うようになりました。

〇毎日の授業でも中学生には、目ざとく先生やクラスメイトの話を聞き、その時に気づいたことを「みんなは~と考えているらしいけど、私は~と思うのだけど、どうですか?」と投げかけてもらいたいです。それによってみんなの「見方・考え方」が広がり深まっていきます。

須藤昌英

11月17日(月)「人生、遅すぎることはない」

〇9月から始めた3年生との校長面接が一通り終わりました。一人ひとりの話を聞いて、先日のゲームの話とも共通していますが、自分が主役となり、「主体性」をもってやりたいことに挑戦していくために、志望した上級学校で学ぶということはとても大切であり、今後も応援していきたいと感じています。

〇ただ時々「自分自身に自信をなくしているのでは・・」と感じる生徒がいます。面接時間は一人15分間ですので、その原因を詳しく聞いたり、アドバイスをしたりすることはなかなか難しいのですが、そんなときいつも私の頭の中をよぎるのが「人生、遅すぎることはない」という言葉です。

○この言葉は、野球漫画で有名な水島新司氏(1939年~2022年)作の「あぶさん:84巻第3話」の題名です。この「あぶさん」もプロ野球を題材にした超大作の漫画で、41年間で全107巻、今から13年前の平成24年に長い連載の幕を下ろしました。

〇主人公の景浦安武(あぶさん)は、実在のプロ野球選手をモデルにしたキャラクターとして描かれ、チームのリーダーや中心選手ではなく、どちらかというとアウトサイダー(門外漢・厄介者)で、しょっちゅう酒ばかり飲んでいます。しかしいざという時に、チームに良い影響を与えるので、チーム内では特に若い選手から密かに慕われている存在でした。

〇私も全て読破したわけではなく、昔からたまに見かけると読んだくらいですが、野球だけでなく、身近な人達との人情的なやりとりがクローズアップされた作品が多く、読むと深くその物語に入り込んでしまうことがありました。

〇そして最終回では主人公が62歳でプロ野球を引退し、作者の水島新司氏が作中に自分自身を登場させたので話題になりました。62歳まで現役選手をするというのはいかにも漫画の世界の話ですが、今年私も同じ62歳になったので、余計に親近感があります。

〇今でも「人生、遅すぎることはない」というフレーズは、私の心に強く残っており、折に触れて自分自身に「何をするにも人生遅すぎることはないよ。今の自分に納得がいかず、何かを新しくはじめようとしたときがチャンスであり、そんな時こそ今まで自分の中に潜んでいた力が引き出されるのだよ」と言い聞かせてきました。

○私が「人生、遅すぎることはない」という言葉に出会ったのは、ひょっとしたことからでした。まだ私が30歳代で、今となってはあまり詳細を覚えていませんが、仕事で何かの壁にぶつかって悩んでいた時がありました。あれこれ試行錯誤をしてみるものの、状況が好転せず手詰まりの状態だったと思います。

〇そんな休日、家族と近隣の入浴施設に行きました。入浴後ロビーのソファー横の本棚にあったコミック雑誌を何となくパラパラとめくっていました。するとその中に、主人公が成績不振にあえぎながらもある人の言葉からまた立ち上がろうとする物語(あぶさん)が目にとまり、思わずその場で何度か読み返したことは今でもはっきりと覚えています。

〇新聞や雑誌を読んでいる時、同じ記事や文章を何度も読み返すことは滅多にありません。一度読んで何となく内容が頭に入ったら、次の瞬間は違うことを考えているのが常です。ただその時は、読んだ瞬間に何かパッと目の前が明るくなりました。

〇そして帰路では「やってもみないことをくよくよ悩んでも仕方ない、とりあえずやってみて、もしうまくいかなかったら、またそこで考えよう」と思うことができ、さっぱりとした気持ちで自宅に着きました。言葉の力はすごい!と思えた経験でした。

〇私はそれまでは「漫画やアニメは、自分の性に合わない・・・」と遠ざけていましたが、そのことをきっかけに、「メッセージ性やストーリーが優れている漫画やアニメもけっこうあるんだな」と再発見し、注目するように変わりました。

○「人生、遅すぎることはない」とは、中学生にも伝えたい言葉の一つです。自信をなくしている時の心情の奥には、「やってみたいけど、どうやったらいいかがわからない」があります。つまり見通しがないので、「とりあえずやってみよう」とは思えないのでしょう。

〇そういう生徒たちには、次のような言葉がけをしてあげたいと思っています。

⇒今まで何度かやろうとしたけれど出来なかったこと、今の自分では到底出来そうもないとあきらめてきたことなどは、誰にでも1つや2つはあります。しかしそれらは多くの場合、『本気』で取り組もうとする前に、尻込みしてしまったことがほとんどではありませんか?「あの人だからあんなことが出来るんだ」とか「自分には到底そんな能力はない」と思い込んでいませんか?生きているかぎり、何でも「手遅れ」ということはありません。周りからは簡単そうにやっているようにみえることでも、その人は他人が見ていないところで必ず努力しています。その表面だけの姿で判断せず、まずは自分の出来ることから始めてみること。そしてそれを工夫しながら続けてみること。そのきっかけが一番重要であり、まさに今、新たなチャレンジをする勇気をもってほしい。

〇「人生、遅すぎることはない」、これは裏を返せば「思い立ったが吉日(きちじつ)」、つまり「何かを始めようと決心したら、吉日を選ぶのを待たず、すぐに実行に移すのが良い」ということわざと同じです。またこれは本校のテーマである「学び成長し続ける土中」ともリンクしています。

須藤昌英

 

11月14日(金)「中・高校生のなりたい職業」

〇ある教育関係会社が所管する教育総合研究所が毎年、東京大学社会科学研究所と共同で「こどもの生活と学びに関する親子調査」を実施しています。先日その中で、子どもの「なりたい職業」に関するランキングが発表されました。

〇中学生では、男子に人気の職業が「プロスポーツ選手」「教員」「医師」で、女子は「教員」「看護師」「保育士・幼稚園教員」が上位を占めています。

〇また高校生のランキングでは、男女ともに10年連続で教員が1位だったことに驚きました。中学生でも上位なのはとてもうれしい気持ちですが、一般的に中学生よりも将来の夢が具体的になっている高校生の多くが、教員を選んでいることに期待しています。

〇同調査の2015年と2024年のデータを比較すると、子どもたちの職業観に変化が見られるそうです。例えば、小学生では「YouTuber・VTuber」がランク外から4位に急上昇し、高校生では「SE・プログラマー」が13位から6位に上昇しました。一昔前には存在しなかった職業です。

〇同教育総合研究所の主席研究員は、教員が人気の理由として、「子どもにとって最も身近な職業であることのほか、学年が上がるにつれて、夢を追う職業から資格を要する現実的な職業への志向が強まる点が大きい」と指摘しています。

〇本校でも卒業生を中心に、大学での教職課程を履修する単位として必要な「教育実習」を受け入れています。3~4週間程度、学校現場の様子を直接体験することができるので、教員を目指している学生にとっては貴重な機会です。

〇私も40年前に小学校と中学校で別々に教育実習を経験しました。ただ母校ではなく、中学校は大学の付属中学校で、小学校は大学があった千葉市立の小学校でした。もともとの志望は中学校でしたので、小学校はあえて希望したのですが、若い時に小学校でも実習できたことが、中学校教員になってからもとても有意義でした。

〇教員の職務は、人間の心身の発達にかかわっており、その活動は、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えるものです。「教育は人なり」といわれるように、学校教育の未来は教員の資質能力に負うところが極めて大きいです。

〇このような重要な職責を遂行するため、大多数の教員は、教員としての使命感や誇り、教育的愛情等を持って教育活動に当たり、研究と修養に努めています。子どもに教えるには、知識や技術の意義や背景などを学び続け、まず教員自身が「情熱」「専門的力量」「人間力」を持つことが重要です。

〇その上で、単なる知識伝達に留まらず、学習指導力、児童・生徒指導力、教材解釈力などを駆使し、子どもの「主体性」「創造性」「感性」を育む教育を日頃から実践していく必要があります。

〇つまり教える知識や技術が「なぜ」「どのような目的で」必要とされているのか、その背景や意義を分かりやすく伝え、子どもが自ら課題を発見し解決する力を養うことが不可欠です。

〇現在の教員の年齢構成を見ると、50歳代の層と20歳代の層が多く、すこし歪な構成になっています。今後順次、50/60歳の世代が退職期を迎えることから、量及び質の両面から、優れた教員を養成・確保することが極めて重要な課題となっています。

〇今年の3年生にも面接の際に、「将来の夢は何ですか?」と尋ねたところ、教育関係(教員、保育士、心理士など)を志望している生徒が相当数いました。思わず私から「応援しているから頑張って!」と励ましました。

〇前述の会社と大学が連携したプロジェクトでは、子どもがなりたい職業を早期に決めることよりも、自分で自分の多様な可能性に目を向けることの大切さを強調しています。我々大人に求められるのは、子どもの選択肢を広げ、相談に対してともに悩んで、応援する姿勢であるということです。

〇私の経験から教員になりたいと思った人の多くは、「教えることや子どもが好き」という理由が最も多く、次いで「尊敬する教員に出会ったこと」や「部活動の指導をしたいこと」などが挙げられます。

〇特に「子どもが好き」の詳細は、「子どもの成長をサポートしたい」「子どもたちの成長に携わりたい」というもので、子どもに寄り添うことで、その成長を見守りたいという気持ちがあります。

〇また「教えることが楽しい」「教えることが好きだから」ことについては、教えた子どもが「わかった」「できた」と変化していく姿に喜びを感じるという思いがあります。

〇ただ今の教員は昔の教員とは少し役割が変化しています。一昔前は、教員は「教える・見せることが主な仕事で、それはティーチャー・パフォーマーとして、生徒と互いに向き合う関係」でした。それが今は、「支える・促すことに重きをおき、それはサポーター・ファシリテーターとして、生徒と同じ方向を見る関係」となっています。

〇極端にいえば、授業の主役が昔は教員だったのが、今は生徒となり、彼らが学びやすい授業を模索することで、一人ひとりが想像・創造する力を育んでいきます。

〇柏市の小中学校では今、1.500人が教員として働いています。今の中学生が教員となる7~9年後は、私は教員を辞していますが、「なりたい職業」の1番となっている今のうちに、マスコミ等で働く時間の長さを「ブラック」と揶揄されている職場環境を少しでも良い方向にしたいと思っています。

須藤昌英