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2025年10月の記事一覧

10月28日(火)「ゲーム」との付き合い方

〇校長面接などで、3年生に「受験勉強をしている時の気分転換の方法は何ですか?」と尋ねると、8~9割の生徒が「好きなゲームをしています」と答えます。そこでさらに「気分転換のつもりが、そのままハマってしまうことはありますか?」と質問を続けると、多くの生徒が苦笑いし、「それが一番の悩みです・・」のように打ち明けてくれます。毎回「正直だな」と思っています。

〇過去に担任をしていた生徒から、同じようなゲームに関する質問を投げかけられたことがあります。「どうしたらゲームを止められますか?」と。私は答えました。「方法はただ一つしかないよ。それはそのゲームをやる前にその攻略法を全部友達から教わってからやってごらん。わかると思うけど、そんなのはつまらなくてすぐに止めてしまうでしょ」。

〇少し逆説的な言い方ですが、人間はそのように何もかも事前に教えられてしまっては、まったく面白みを感じないのです。試行錯誤をする中で、「どうしたらいい?」と迷うことも楽しいのです。あらかじめ攻略法を伝授されると、ゲームの中で「自分で選択する機会」が前もって奪われ、冒険心や挑戦心などのやる気のもとがなくなってしまうのです。

〇「ゲーム」と聞けば私が思い出すのは、今から40年前以上に流行した「インベーダーゲーム」です。当時はまだ自宅で行うゲーム(ファミコンなど)は販売されていませんでしたので、高校生だった私はゲームセンターで夢中?になりかけていました。ただ段々とゲーム以外のことが忙しくなり、ゲームセンターに行くことも減ったので、お小遣いを使い果たすようなところまではいきませんでした。

〇しかし今は自宅でゲームが当たり前ですので、生徒たちが自らの制御力でゲームをする時間をコントロールしなければならない状況です。確かに自宅でできる便利さはありますが、逆にゲームとの程よい距離を保つことが難しくなっています。

〇先ほども書きましたが、私は生徒がゲームの中で自分が主役となり、「主体性」をもって課題に挑戦していくことは、人間の本質にあったゲームのプラス面であり、否定されるべきではないと思います。

〇数年前のYouTubeの対談で、東大名誉教授の姜尚中(カン・サンジュン)氏が指摘していたことも気になります。姜氏は「人生(実社会)はゲームではない」とし、「現代は政治、経済、人間関係などのすべてが、ゲーム理論に基づいて処理されている。ありとあらゆる領域から集めた情報をアナリストが分析したりそこからシュミレーションしたりして、現場の様子はモニターでみるだけ。そこに強烈な違和感をもつ。しかし実際に目の間で起きていることはもっと複雑で、ゲーム理論だけでは到底説明しきれない」と鋭く述べています。

〇これを見ながら深く考えさせられました。ゲームの良さは認めつつ、そこから実際の生活にいかに戻ってくるか。冒頭の受験生の悩みは、決して子どもの問題ではなく、我々大人も直面している問題だと思います。

〇人工知能AIに「ゲームと子どもの脳の関係」を質問してみると、次のように回答がありました。

「ゲームが子どもの脳に与える影響は、やりすぎると【ドーパミン】分泌への依存による前頭葉の機能低下や、学習意欲・集中力の低下などの悪影響が懸念される。一方で、戦略ゲームやパズルゲームには、問題解決能力や空間認識能力、論理的思考力などを高める可能性もある。重要なのは、ゲームの種類やプレイ時間を把握し、適切なルールを設けてバランスを取ること」。

〇とても模範的解答ですが、AIの欠点は身体性がないということです。ゲームに夢中になる人間の心理をAIは実感できませんので、少し上滑りの感じはぬぐいきれません。

須藤昌英