校長日記

校長日記: 校長室で指導された思い出

校長室にいると、

「校長先生、面白い実験をしているから、見に来て!」

と、3年生が窓から声をかけてくれました。

いっしょに行くと、虫めがねで日光を集める実験でした。

日光を集めたところは熱くなり、段ボール紙から煙が出て、穴も開きます。

 

その様子を見ながら、自分が小学生の頃の出来事を思い出しました。

理科室の掃除をしていた時のことです。

当時は、先生が学校でたばこを吸うことが許されていた時代です。

理科室に灰皿があり、そこにたばこの吸い殻をみつけました。

とても晴れていた日でしたので、

「もしかしたら、虫めがねでたばこに火が付くかも・・・」

と、思いつき、さっそく男子の友達数名と実験を始めました。

灰皿に残っているたばこの紙の白い部分を黒いペンで塗り、数人の友達と一斉に虫めがねで日光を集めると、思っていた通り白い煙がのぼってきました。

「やったぞ!」

と、思った瞬間、理科室のドアが開き、いつもは来ないはずの担任の先生がはいってきました。

おそらく、女子が言いつけたのでしょう。

 

担任の先生にこっぴどく叱られたのはご想像の通りですが、

「校長先生にも、叱ってもらいます!!」

と、校長室に連れていかれたのでした。

校長先生は、集会の時くらいしか見たことがなく、どうなってしまうのかとても不安な気持ちでいっぱいでした。

校長室のフカフカのソファーに座ると、

「君は児童会の子だよね?」

「はい。」

「理科好きなの?」

「はい。」

「灰皿の中でやったの?」

「はい。」

「でも、万が一、火事になると困るからダメだぞ。」

「はい。」

 

大声で怒鳴られるのかと思っていたので、少し拍子が抜けた気分でした。

怖くて校長先生の顔を見ることもできなかったので、どんな顔で話されていたのか分かりませんが、その時は、

(校長先生って偉い人だなぁ)

と、なぜか感心したのを覚えています。

 

今、自分の学校で、同じことが起こったら、校長としてどう対応するでしょう。

絶対に学校で火事を起こすわけにはいかないですが、もともとは教職員が残していた吸い殻ですので、子供だけの責任にはできません。

担任がしっかり指導したので、これ以上厳しく言う必要はないかもしれません。

子供の理科への関心や、好奇心は育てたい。

など、いろいろと考えて悩みます。

 

状況が異なるでしょうから、 答えはでませんが、子供を指導することって、本当に難しいですね。

50年くらい前のことを忘れないのですから。

念のため、タバコに火をつけて、吸うつもりではなかったことは、付け足しておきます。

あくまで、理科の実験のつもりでした。

校長先生、担任の先生、ごめんなさい。(校長 佐和)