校長雑感ブログ

2024年8月の記事一覧

8月14日(水)パリオリンピックが終わって3(自宅から投稿)

〇お盆のこの時期は、自宅で本を読んだり、墓参に出かけたりと、いつもよりはゆったりとした時間を過ごせています。このブログも通常は朝に校長室から投稿していますが、この数日に自宅から投稿するときは、日頃の自分の思いなどが自然と湧き出てくるので、少し焦点がずれた内容になることは自分で理解していますが、ご容赦ください。

〇近年のオリンピック選手は、各種目特有のフィジカルやスキルトレーニングはもちろんですが、加えてメンタルトレーニングにも相当な比重をおいていると聞いています。国を背負う選手たちは、期待という重圧に対処するために、スポーツ心理学者やパフォーマンスコーチと連携し、瞑想法、呼吸法、適応力など、最高のパフォーマンスを発揮するために必要な精神的対処法を身につけているそうです。

〇我々も大きな行事の前には、頭の中が不安や迷いでいっぱいになり、体がこわばって呼吸が乱れたり、行動に落ち着きがなくなったりすることは、経験しています。周囲からの期待や責任だけでなく、それに自分が自分にプレッシャーをかけていることも多く、その両方を上手くコントロールできたら、いつもの力を出せることは誰にでもわかりますが、実際にそれをすることはなかななか難しいです。

〇気持ちのコントロールというと、私は2015年公開のアメリカのアニメーション「インサイドヘッド」を思い出します。ディズニー映画ですが知らない方もいると思います。これがとても心理学を踏まえた面白い作品で、何気なく観始めましたが、どんどん吸い込まれるようにストーリーの中に引き込まれました。実際の自分の感覚と心理学の理論をうまく融合させているなという印象でした。

〇あらすじは、ある少女の頭の中を舞台に、そこに住む「喜び」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐れ」の5つの「感情」を題材とし、擬人化されたそれらの5名のキャラクターが主人公となり、彼らが自分たちの主人である少女を幸せにしようと奮闘する様子が描かれている冒険ストーリーです。

〇5つの感情はヨロコビをリーダーとして、少女の頭の中にある「司令部」で、曲がったことが嫌いなイカリ、嫌なものを遠ざけるムカムカ、心と体の安全を守るビビリという仲間も同居しています。そして一番厄介なのは、カナシミというとても消極思考の仲間がいることです。

〇彼らの感情によって少女にできた思い出は、黄色(ヨロコビ)青(カナシミ)赤(イカリ)緑(ムカムカ)紫(ビビリ)のいずれか1色に色分けされた「思い出ボール」となリ、少女の脳内にある「長期記憶の保管場所」に保存されます。

〇少女の人生にとって重要な意味をもつ5つの思い出は、すべてヨロコビの黄色をした「特別な思い出」となり、「長期記憶の保管場所」ではなく司令部の中に保管されます。そして「特別な思い出」が、「ホッケーの島」「おふざけの島」「友情の島」「正直の島」そして「家族の島」という性格の島を脳内に製造することで、アイスホッケーと友達と家族が大好きな陽気で正直な少女の性格を作り上げていきます。

〇物語の終盤、ヨロコビは「少女にとってカナシミという感情も時には必要なんだ」と悟り、カナシミと協力して少女の成長を助けていきます。この最後の場面は、昨日書いた「思い通りになる」「思い通りにならない」という二項対立とリンクしています。

〇人間は自然と、「思い通りになる」と喜び、「思い通りにならない」と悲しみます。でも一見、人生は喜びばかりの方が「幸せ」と思ってしまいますが、本当は悲しみも人間の成長には必要で、悲しむからこそ自分を振り返り、家族や周囲の人たちの存在に感謝できるのです。そしてそのことが「人間としての厚み」を増すことにつながります。

〇この映画を観ていると、自分の脳内の感情についても、客観的に見られるようになりました。特にこれまでの思い出が蓄積され、潜在意識として時々思い出されるのは、まさに脳の知られざる働きなのだと思います。現在3歳の孫娘も日々、目の前の経験を通して様々な感情が湧き、その一部が思い出として蓄積されていることが、祖父として傍から見るとよくわかります。

〇私が昔、担任をしていたクラスの生徒に対しても、その生徒の過去の経験や思いが時々垣間見えることがありました。そういう心理学の知識は、大学で教えてもらっただけではあまり役に立ちませんでした。やはり一人の人間同士として、生徒と本心で話ができていないと、とても相手の心情を推察することはできません。

〇生徒と教員のこのような心の交流のためには、普段から教員が多忙で仕事に追われるのではなく、生徒とじっくりと向き合う時間が必須です。そのための教員の働き方改革であるようにしたいです。

〇この時期に、また少し心理学の本でもパラパラ見直してみようかと思いました。

須藤昌英