校長雑感ブログ

2024年10月の記事一覧

10月25日(金)「やればできる」と「できるからやる」

〇教員として38年間、目の前の生徒の可能性を引き出し伸ばすことを最大の目標として取り組んできましたが、いつも迷うのは、「やればできる」と「できるからやる」の2つのどちらが正しいか?です。「鶏が先か、卵が先か」みたいな話ですが、自分としては最大の課題です。

〇「やればできる」は、昔から言われている「努力を美徳として、楽な方を選ぶことを嫌う」が根底にあります。コスパの面から考えると、苦労せず楽に成果が得られるのであれば、最適最良です。

〇しかしその一方で、教育的側面からは、努力を通じてスキルや知識を習得することで定着が強固になるという従来の考えにも、妥当性はあると思いますし、昭和から平成へと教育の主流はこの「努力の継続」でした。

〇前にオレンジの服が印象的だった芸人さんがテレビなどで、そのポジティブな性格を前面に出し「やればできる!」というフレーズを連呼していたことを覚えています。確かに明るい笑顔で言われると、その気になってきます。

〇その芸人さんは、「僕の『やればできる』っていうのは『やれば成功する』ではなくて『やれば成長できる』よねっていう思いを込めています」と説明していました。それを聞いて私もそれにはまったく同感しました。

〇若い時に担任をしている時も、「やろうと思わないから出来ないんだよ」みたいなことをよくクラスの生徒に言っていた記憶があります。叱咤激励のつもりでしたが、言われた生徒はどう思っていたのだろう?と今さらに思います。

〇しかし最近は少し違ってきました。むしろ人は「できるからやる」という見方の方も、正しいのではないかと思っています。努力し挑戦すること(やればできる)によって生徒たちは日々成長していますが、その前提として可能性という「成長の種子」を生まれつき自分の中にすでにもっていて、その種子を開花させている(できるからやる)に過ぎないのではないでしょうか?

〇「やればできる」の陥りやすい点は、今出来ていることはあまり重視せずに、次はコレをするその次はコレをする・・と果てしない無限ループになりやすいことだと思います。精神的に疲労します。

〇一方で「できるからやる」については、失敗を極端に恐れるという今の若者の特徴がその意識を薄めていると感じます。人は誰でも失敗し、その失敗を次にいかして前へ進んでいくのであり、一つの失敗で「すべてがダメ」と自分を否定してしまうことがとてももったいないと生徒たちを見て思います。

〇その原因の一つは、大人(保護者や教員など)が生徒たちに今取り組んでいることの結果を性急に求めすぎることがあると思います。私も含めて「信じて待つ」という大人の姿勢が正直足りないと思います。

〇「失敗を成功で上書きする」という言葉があります。「失敗を失敗のまま終わりにせず、それを小さな成功つなげる」ということを、生徒たちには折に触れて伝えていきたいと思います。

〇最後に昔、ナイキというスポーツメーカーのCMに、マイケルジョーダンというバスケットボールのスーパースターが出演していました。彼は私と同じ年齢ですので、バスケットボールに興味がなかった私もその存在感には注目していました。

〇その彼のCMの中でのセリフが今でも頭に残っています。紹介します。「キャリアで失敗したシュートは9000本。300試合に負けた。26回ウィニングショットを外してきた。今までミスしてきた。何度も何度も・・・。だから私は成功する」

〇今の生徒は彼のことは知らないかもしれませんが、みんなからスーパースターと言われている人でも、数知れない失敗を経験してきていることは伝えたいなと思います。

須藤昌英