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校長室より(令和2年度)
「ポストコロナ期を生きる君たちへ」
とても良い本です。図書室にあります。ぜひ読んでみてください。

今回のコロナパンデミックによって、僕たちの世界はその「外装」を剥ぎ落されて、そのなんともみすぼらしい骨組みが露呈しました。
グローバル資本主義というものは人・モノ・資本・情報が国民国家の国境線を自由に超えて超高速で行き来するというシステムのことです。でも感染拡大のせいで、電磁パルス以外の形状のものは簡単に国境を超えることができなくなりました。ブレグジット(イギリスのEU離脱)と「アメリカ=メキシコ国境の壁」に続いて、今度のパンデミックで、国境線といういずれ賞味期限が切れると思われていた政治幻想は強固な現実として再構築されました。
グローバル資本主義は「金さえ出せば何でも買える」という信仰箇条の上に基礎づけられていましたが、実は「マスク」一つさえ買えないことがあるということもわかりました。「必要なものは・必要なときに・必要なだけ・金を出して買う」という「ジャスト・イン・タイム・システム」による在庫ゼロをスマートな経営の理想にしていた国はどこも医療器具・医薬品の戦略的備蓄の不足に苦しみました。「商品」として仮象しているモノのうちには「ほんとうに要るもの」と「ほんとうは要らないもの」があるということも、今回の教訓の一つでした。自動車やコンピュータは「あると便利」ですけれども、「ないと死ぬ」というものではありません。でも医療資源や食料やエネルギーは「ないと死ぬ」。そういう物資を他の商品と同列に扱うことはできません。でも、資本主義はその平明な事実を隠蔽してきた。「ほんとうに要るもの」を人々が市場で調達することを控えて自給し始めても「ほんとうは要らないもの」を手に入れるために命を削ることを止めても、資本主義は立ち行かなくなるからです。
医療は商品だという信憑も崩れました。医療は金を出して買うものである、金がない者は医療を受けることができない。病気で苦しんでも自己責任だというのが新自由主義の時代の「常識」でした。でも一般の疾病はそれで済んでも、感染症相手にはその「常識」が通用しません。アメリカには2750万人の無保険者がいます。彼らは発症しても適切な治療が受けられないまま重症化します。放置しておけば、彼らを感染源にウイルスは蔓延し続ける。感染症は「全住民が等しく良質な医療を受けられる社会」でなければ抑制できない疾病です。そしてアメリカはこれまでそういう社会ではなかった。
ウイルス一つによって、わずか数か月の間に、ほんの昨日までのこの世界の「常識」だと思われていたことのいくつかが無効を宣告されました。それがどのような歴史的な意味を持つことになるのか、人々はまだそのことを主題的には考え始めてはいません。日々の生活に追われて、そんな根源的なことを考える暇がありませんから。
でも、中高生たちはこの「歴史的転換点」以後の世界を、これから長く生きなければなりません。彼らに「生き延びるために」有益な知見や情報を伝えることは年長者の義務だと僕は思います。
「ポストコロナ期を生きる君たちへ」 内田樹 編 晶文社 より
「ポストコロナ期を生きる君たちへ」 内田樹 編 晶文社 より
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学校感染症による療養報告書
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