校長室より

勉強することの意義 自制心


 勉強するといいことがあるのだが、それがなんだかおわかりだろうか。勉強すると一番いいことは知識が増えること以上に、頭がよくなるということだ。「勉強すると頭が良くなる」ということは意外に見落とされているが、「なぜ勉強をするのか」とうい問いへの一つの端的な答えである。運動すると運動神経が良くなる。運動部に入って何年かやっていると、元はそんなに動きが鋭くなかった人でも、ある程度、体が動くようになる。それと似ている。勉強すると頭が良くなる。頭が良くなると同時に心のコントロールもうまくいくようになる、というのが大方の筋道だ。勉強しすぎてものすごくキレやすくなったという人の率よりも、ぜんぜん勉強しないでブチキレている人の率のほうが圧倒的に高い。勉強すると頭がおかしくなるかのような言説を撒き散らす人がいるが、基本的にそういうことはない。
 勉強というものをすることによって、ある種の自制心というメンタルコントロール(心の制御)の技術を学ぶことができる。そういう心の技がセットでついてくるわけである。これは、言ってみると人類長年の知恵である。考えてみれば当たり前のことに過ぎない。勉強することの基本は、人の言うことを聴くことである。耳を傾けて我慢して聞くという心の構えが求められる。「おれが、おれが」という自己中心的・独善的な態度を一度捨てる必要がある。「自分に理解できないことは全部価値がない」という、自分の好きか嫌いかが世界をすべて決めるという態度では何も学べないのだ。
 先人たちの発見したことに対して耳を傾け、しっかりと聴くということが、学ぶということの基本だ。そうした学ぶ構えができている人は、他の人に対しての意識を持つこともできやすい。人の言葉を聴いている間は自己中心的な態度をやめているということだからだ。

                       「教育力」斉藤孝 著より抜粋


学ぶ構えを身につけよう。勉強することで心のコントロールと相手の立場を尊重できる人になろう。勉強すれば価値観が変わり新しい自分が見えてくる…。