校長室より

初心忘るべからず

「初心忘るべからず」というと「新人のころの、あるいは初めのころの感動や純粋な気持ちを忘れずに、ひたむきに物事に取り組め」という意味でとらえている人が多いのではないでしょうか。しかし本当の意味はそうではありません。この言葉は 世阿弥の書「花鏡」で述べられた芸術論であり、 「しかれば当流に万能一徳の一句あり。 初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。①是非とも初心忘るべからず。②時々の初心忘るべからず。③老後の初心忘るべからず。この三、よくよく口伝すべし」という一節からのものです。世阿弥は、人生の中にいくつもの初心があると言っています。若い時の初心、人生の時々の初心、そして老後の初心。その時々のダメな自分を忘れるなと戒めているのです。初心とは「段階ごとに経験する芸の未熟さ」のことなのです。未熟な時代の経験、無様な失敗やその時の屈辱感を忘れないように、常に自らを戒めれば、上達しようとする姿を保ち続けることができると教えてくれています。初心とは決して良いものではないのです。学び続けることの大切さ、常にアップデートする姿勢の大切さを改めて教えられる言葉です。校長として未熟な自分を戒め、精進しようと思います。