創立79年目 学び成長し続ける富勢中
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校長雑感ブログ
3月4日(火)生徒の可能性を最大限に引き出す方法
〇本日の9時に、千葉県公立高等学校入学者選抜の結果が発表されます。ここまで目標に向かって精一杯準備してきた彼らの姿を身近に感じてきたので、「どうか全員に・・・良い結果」と今朝は職員一同で祈っています。
〇グロースマインドセット(成長志向)という概念が、最近注目されています。もともとは企業などで人材を育成していくことを目的としていますが、要するに中学生も同様に、人間の成長を促進する思考パターンのことであり、自分の成長可能性を信じていれば、難しい問題や課題に積極的に取り組んでいけるという考え方です。
〇グロースマインドセットを提唱したキャロル・ドゥエック氏は、社会心理学、発達心理学を専門とするスタンフォード大学の心理学教授です。マインドセットとは、経験・教育・先入観から形成される、心理状態や思考パターンのことを言います。例えば、思い込みや価値観・信念がこれに該当します。思い込みのことを「パラダイム」とも言い、新たな情報や経験によって自身の思い込みに気づき、思い込みが変化することを「パラダイムシフト」と言います。
〇内容はそんなに新しいことではありませんが、わかっていても継続してできないのが現実でしょう。
1.褒め言葉を使って自尊心を高める。
2.失敗をポジティブに捉えるよう促す。
3.継続的な努力が必要であることを理解させる。
4.努力が成功につながることを示すため、適切なフィードバックを提供する。
〇教員となって38年間(小学校3年、中学校35年)、実に多くのそして多彩な児童生徒との出会いがありました。「教えることは教わること」と気づき始めたのは、教員生活をスタートして数年が経過したころでした。
〇「今の教え方で本当にいいのだろうか?」と壁にぶつかった時、目の前の児童生徒が「学ぼうとする姿」をつぶさに観察しました。すると自分の一方的な思いでは何も伝わらないことや、その生徒の姿が新たな手法を私に教えてくれていることを実感しました。
〇3年生はこの3年間を見守ってきましたので、その成長ぶりは常に実感していますが、昨日の3年生を送る会では特に1・2年生の成長ぶりに驚きを超え感動を覚えました。これからの学校はこれまで以上に「成長志向」がキーワードになっていくと思います。
須藤昌英
【昨日の3年生を送る会】
3月3日(月)3年生を送る会の準備とネタバレ?
〇久しぶりの雨の朝です。満開の梅の花もしっとりしています。花粉症の生徒には少し楽かもしれません。ただ午後は気温が下がり、雪もちらつくかもしれないとの予報です。気温の変化による体調変化が心配です。
〇1・2年生は先週までに、本日の午後に行う「3年生を送る会(3送会)」に向けて、それぞれの発表の練習を体育館や武道場で懸命に行ってきました。きっと心のこもったあたたかい会になると今朝から期待しています。
〇今年の3送会の3年生への招待状は、一人ひとりではなくクラスへ1枚ずつでした。ジグソーパズルのようにピースを組合せ、表面がメッセージ、裏面が3年の各担任の笑顔になっています。それに映っている担任のそれぞれの笑顔がとても印象的です。
〇少し細かいことを言えば、卒業式は学校主催行事であり、すべて校長の責任のもとに執り行います。それに対し3送会は生徒会主催行事で、企画から準備、本番まで生徒会が主体となって実施します。前者が例年ほぼ同様なプログラムなのに対して、後者は年によってバラエティーに富んでいます。
〇昔は「3年生を送る会」のことを「予餞会(よせんかい)」と言っていました。「予餞」とは「あらかじめに送る会」という意味で、何に対してあらかじめかというと、「卒業証書授与式」のことです。
〇卒業生にとっては、3年生を送る会で後輩の1・2年生とお別れをし、卒業式では保護者の方々にここまで育ててくれたことに感謝の心をもって参加する意義があります。
〇ここで、3送会で各学年が行う発表内容を紹介したいところですが、「ネタバレ」はしないでおきます。ダンスや劇、合唱などの心のこもった卒業生が喜んでくれること請け合いの発表とだけお伝えしておきます。
〇3.4校時に下級生が3年生を送る会の最終リハーサルと準備を行ないました。今日の給食はひな祭りをお祝いして、「ちらし寿司、ぶりの照り焼き、もやしのポン酢和え、菜の花のすまし汁、黒糖大豆、牛乳」でした。外は雨ですが、体育館は今月から新しくし使用できるようになった空調設備が稼働して、暖かくなっています。午後が楽しみです。
〇給食中から雨から大粒の雪に変わり、神秘的な風景となる中、5・6校時に3年生を送る会を行いました。卒業をお祝いする在校生、それに感謝する卒業生。学校はやっぱり素晴らしい場所です。
〇明日は9時から、千葉県公立高等学校入試の合格があります。どうか全員が希望が叶うように、職員全員で祈っています。
須藤昌英
2月28日(金)これからの人生でためになる授業(3学年性教育)
〇この3日間は春本番の陽気となり、寒さに対してはだいぶ楽になりましたが、その一方で花粉症などのアレルギーを持っている生徒は大変なようです。近年のコロナ禍によるマスク常用の影響であまり目立たなくなったこともありますが、この時期には花粉対象のマスクをしたりメガネでガードしていたりする生徒を以前はもっといた気がします。
〇屋外に出て体を動かすのがおっくうになったり、室内にいても学習や諸活動に集中できなかったりすることが、本人が一番つらいだろうと思います。少し調べたら、簡単な花粉症対策として、外出から戻ったら顔を洗う方法があるそうです。目の周りや鼻の周りには花粉がついていて、それを洗い流すと吸入する花粉の量が減るのでけっこう楽になるようです。
〇昨日の5校時、日本医科大学付属病院の産婦人科医師である小川淳先生をお招きし、体育館で3生生に性教育を行いました。冒頭に小川先生から「勤務している病院が最近のテレビドラマ『まどか26歳、研修医やっています』の撮影に使われています」と話があると、生徒たちがざわついていました。
〇卒業式を来週に控え、「いのちや性」について深く学ぶ機会を通し、生徒の将来に役立つ講話をしていただきました。主な内容は次の5点でした。
1 男女の身体の変化
2 望む妊娠と望まない妊娠
3 性感染症
4 子宮頸がんとHPVワクチン
5 LGBTQ+と性別違和
〇特に産婦人科医として強調されていたのは、4の内容です。子宮頸がんは「唯一予防のできるがん」であり、以前には副作用の関係で避けられていたHPVワクチンの接種が、小6~高1の女子に国が公費を出して受けられること、海外では男子も受けていることなどを紹介していました。私もこのワクチンが男子も対象であることを初めてしりました。
〇また5の内容に関しては、人を好きになる性(性的指向)は人様々で、どの性別が恋愛対象になるのかは多様であることから入り、性は生物学的な性別だけでなく、様々な要素の組み合わせで成り立っていることに触れていました。自分の性別をどのように感じるのかなど、最近はこころの性(性自認)とからだの性(生物学的な性) がバラバラであることはよくあることと認知されつつあります。
〇親や教員が伝えにくいことについても、現場の医師というプロならではの説明していただき、生徒は真剣に聞き入っていました。やはり専門家の言葉は自らの経験をもとにしていますので、彼らにとっても重みがあるのでしょう。講演会後に校長室で、日本の少子化で産婦人科も危機を感じていることや教員と同じく医師の働き方改革がすすんでいることなどを伺いました。
〇帰り際に小川医師は、「私の話の中で何か一つでも生徒さんたちの心に残ればありがたいです」とおっしゃっていました。思春期は心も身体も揺れ動くので、ちょっとしたことでも専門医に相談することで、安心感が得られることが大切だと感じました。
須藤昌英
2月27日(木)卒業式の練習(3学年)
〇今週から3学年は特別日課に入り、その中で次のような各クラスの実行委員を中心に、11日に行う卒業式練習が始まっています。クラスでの基本練習と学年全体で体育館での学年練習を並行して行っています。
(運営・企画) 学年委員
1組石黒さん、村越さん 2組伊藤さん、宮前さん
3組天瀬さん、中村さん 4組新野さん、松本さん
5組石塚さん、黒川さん
〇私はこれまでも義務教育9年間の最終年にあたる中学3年生には、「保護者や先生などから言われたからその通りにする」のではなく、いろいろな人の視点に立って(想像力)、自分はどうすべきかを考えること(創造力)を育んでもらいたいと願ってきました。練習を後ろからそっと見ていると、そういう力が一人ひとりに備わってきているなと感じました。
〇卒業式は学校行事の中で最大でかつ最重要であり、フォーマルな場です。そこで最初は礼法や作法の確認を行います。これもあくまでも基本を教えますが、あとは自分なりのその基本動作を応用し、堂々と参加してもらいたいです。生徒に指導した主な点として、
1 座る姿勢(頭をむやみに動かさない)
男子:足を自然に開き、拳は軽く握って膝と股関節の間に置く
女子:足を閉じ、手は重ねて膝と股関節の間に置く
2 座る→立つの動作 (「卒業生、起立」の号令)
背筋を伸ばす(立つ準備)をして、スッと立つ。
3 立つ姿勢(手は体側に)
踵をつけて、つま先は拳1つ分程度開き、視線はまっすぐ遠く。
4 座礼と立礼(若者らしく)
腰を基準にして、1・2・3で45°程度曲げる
5 歩き方(手は自然に振る)
「パタパタ」と音をたてるのはNG、まっすぐ遠くを見る。
〇「ずいぶんと細かい所まで教えるなあ~」と感じる方もいるかもしれませんが、卒業式は彼らにとっても小学校以来3年ぶりのことであり、知らないことや忘れていることも多いものです。最初は各所作の意味や社会人の常識みたいなものまで含めて説明し、だから「~しなさい」ではなく、教わったことを生徒自身が自分でかみ砕いて考えることが最も大切だと考えています。
〇当日に一番生徒が緊張するのが、卒業証書授与の場面です。最初ステージにあがると、ぎこちない動きでしたが、みんな一生懸命取り組んでいて、みていて清々しい気持ちになりました。来週の予行練習では、保護者席に在校生を座わらせて、本番の緊張感で最後の確認をしていく予定です。
須藤昌英
2月26日(水)楽しく学ぶ土台は「アハ体験」
〇昨日は1学年の3クラスにおいて、3学期期末テストの答案用紙返却を各担任と一緒に行いました。今回の出題範囲は、空間図形と資料の活用が主でしたので、生徒の図形認識の違いなどで好き嫌いやが出やすい内容でもありました。
〇半年前から柏市の中学校でも、定期試験の自動採点システムを導入しましたので、各教科担任は生徒の答案用紙をスキャンし、第一次採点をコンピュータで行います。その後それを確認するために、教員が目で2回目の採点を行います。
〇昨日の3クラスでは、一人のみ採点の修正を行いました。記号で答える問題でしたが、よく見ないといわゆる「くせ字」なので、コンピュータと人間のダブルチェックも認識できなかったようです。本人に私から事情を尋ねたところ、「自分は〇のつもりで書きました」と答えがあったので、誤答から正答に変更しました。
〇ところで今回の久しぶりの生徒たちとの直接的な授業のやりとりで、いつもと違う生活パターンで少し疲れます。しかしその一方で自宅に帰って食事後に「ボーッ」としたり入浴したりしている時に、「そうだ!明日は~をやってみよう」などの思い付きがあります。そういう時はワクワクするものですし、脳の働きはますます神秘的だなと思います。
〇同じく脳の不思議な能力として、昔一時期、テレビなどで話題になりましたが、「アハ体験(a-ha experience)」があります。簡単に言うと、「あ、そうか、わかったぞ」という心のつぶやきや体験を表す言葉で、やはり「ひらめき」や「創造性」に関する脳のはたらきのことです。
〇よく使われる例として、古典物理学者のニュートンが、木から落ちるリンゴをみて万有引力の法則を発見したことがありますが、もちろんあれも常に一つのことを考え続けた末、フッとした瞬間に知識どうしが結び付く一つの「アハ体験」だと言えます。
〇少し調べてみると、人間は「アハ体験」の最中の0.1秒ほどの短い時間に、脳の神経細胞がいっせいに活動して、世界の見え方が一瞬で変わってしまうそうです。
〇大げさに言うと、それまでわからないで悩んでいる時の不安感や焦燥感が、ひらめいた時の「ああ、そうか!」一気に消え去り、と同時に大きな喜びや解放感を感じることによって、今までとは違った自分になってしまうということです。
〇そのような感覚を体験することで、関係する脳の回路を強化され、その後は、わからないことが出てきてもじっくりと考え、ひらめきを育むことの大切さを、楽しみながら学ぶことができるでしょう。
〇ただし、アハ体験は、いつ起こるかなど予測は不能で、コントロールもできないという面があります。またそれに近い体験を実際にしても、いつのまにか見過ごしていることもあります。やはり今の自分が何を感じているのかを、常に意識しておく必要がある気がします。
〇生徒たちには、私とのやりとりの中で、何か一つでいいので、小さな「アハ体験をしてもらいたい・・」と思っています。「この計算はこういうときに使うのか!」とか「この数学の公式は確かにこの場合には便利だ!」など、自分で感じたことを書いたり、人に話したりするアウトプットを積み重ねると、普段の学習への意識が高まります。
〇脳科学者の茂木健一郎氏は、インタビューで次のように語ります。
「生きていくのは何が起こるか分からないこと。学校では答えの決まっていることは教えてくれますけど、人生をいかに生きるべきかという教科はありません。何が起こるか分からない人生をどう生きるかという時に、感情がフル回転するんです。脳にはうれしいことが起こった時に放出される『ドーパミン』と呼ばれるものがあります。何か行動してドーパミンが出ると、その回路が強化される。これを強化学習と呼びます。ですから、頭を良くしようと思ったら、何かを学んで喜ばなくてはいけないんです。アハ体験は気付くことに喜んでドーパミンを出してほしいというもの。気付くということに対して、トレーニングする機会はないんです。答えが決まっていることを素早くやることも大事ですけど、それだけでは今の世の中はやっていけない。何か新しいことに気付くことがすごく大切なんです。脳はオープンエンド、一生学び続けるものですから」
〇今日の授業も、生徒の「アハ体験」をどうのように引き出せるか?楽しみです。
須藤昌英