創立79年目 学び成長し続ける富勢中
文字
背景
行間
校長雑感ブログ
2月25日(火)見方・考え方を身に付けることの重要性
〇1学年数学を担当していた宗形教諭が先週から産前休暇に入り、私が4クラスの数学の授業の一部を来月まで担当しています。ただし宗形教諭は授業で行う教科書の内容をすべて終えていますので、私は1学年の内容を復習や補強をするようなスタイルで授業を行っています。
〇最初の授業では、「算数と数学の違いは?」から入りました。小学校の算数は実生活を基盤とした具体的な数理(長さ、重さ、広さ・・・)、を対象としますが、数学はそこから余分な概念をあえて除きもっと抽象的な世界でイメージすることの違いがあります。
〇まず先週行われた「千葉県公立高等学校入学者選抜」の数学問題の最初を提示しました。これは1年の学習なので、配点は5点です。生徒は「え~」と驚いていました。この他に図形の問題でも1年生で解答できるものがありますので、「君たちも2年後には受検しますが、特に数学は学習内容を積み上げする特徴のある教科なので、コツコツと復習をして土台を固めることを心掛けてください」と話しました。
〇普段から人間は思い込みで生きています。「〇〇だから●●だ」と、自分の経験や人の意見を信じて物事を判断しています。ただ時々、「本当にそれでいいのか?他に考えはないのか?」を疑ってみることも大切です。数学は別の見方や考え方がないか・・と思考を広げることに楽しさがあるので、そのことも触れてみました。
〇また計算の決まりとして、乗除法は加減法よりも優先して計算をするという約束は知っていても、「どうしてそうしなければならないの?」と問われると、「どうしてだっけ?」になります。時々それも振り返ってみることで、計算の本質がつかめ、計算ミスも防げます。法則や規則の根底をつかめるようにしてもらいたいと思っています。
〇1時間を通して、「数学的な見方・考え方の重要性」にふれ、多角的・多面的な見方をするためには、「本当にこれは正しいのか?」「この他に方法はないのか・・・」などを常に自分に問いかけることを生徒達には伝えました。
〇数学だけでなく全ての教科にはそれぞれ特有の「見方・考え方」があり、授業の内容を学習することを通して、その「見方・考え方」を身に付けさせるようにすることが大切です。年月が経つと、やがて学習内容は剥がれ落ちていきますが、見方・考え方はいつまでも残り、その人の思考の基盤となります。
須藤昌英
2月21日(金)ヒトはなぜ、歩くのか?(その2)
〇昨日紹介した雑誌にもう一人、元陸上競技日本代表で現在は会社代表をしている為末大氏の「歩いていると、どんどん思考が深くなります」という記事も注目に値します。
〇為末氏は、男子400mハードルの日本記録保持者で、2001年世界選手権で日本人初の銅メダル、2005年ヘルシンキ世界選手権で銅メダルを獲得。 初めて日本人が世界大会トラック種目で2度メダルを獲得するという快挙を達成しています。このようなトップアスリートの考えは説得力があります。
〇また一部を引用させてもらいます。
「25年間のアスリート人生にピリオドを打ったのは、12年前。カラダを鈍らせないため、引退後はジムに通ったりランニングしたり。でも筋トレは性に合わず、ランでは現役時代に酷使した膝に痛みが生じがちでした。それで7.8年前くらいから歩き始めました。歩いているだけで思ったより太らないし楽しい。だったら歩きでいいかなと。ランとウォークでは体感的にエネルギー消費量gは数倍違うような感じがしますが、実際には30分走るのと1時間歩くのとではそんなに違わないんです。(略)現在のところ、一日の目標歩数は1万2千歩程度。都内なら目的地の2.3駅前で降り、散歩感覚で歩く。(略)僕は油断すると『そもそも○○とは何か?』と考えてしまうんです。その考えを巡らせている間はほとんど歩いています。歩いていると思考がどんどん深くなっていきますね。電車の中での移動中に本を読んで、そのまま電車を降りて歩きながら自分の頭で考えて、たどり着いたカフェで何かを書き始めるときれいなコンポ(組合せ)になります。思うに、脳内の接続みたいなものは脳の活動だけではつくりだすのは難しいんじゃないかと。基本的に人間は狩猟採集活動をすることで脳の接続を進化させてきました。だから身体活動で血流がよくなって異なる接続パターンが生まれたときに、ひらめきが得られると思うんです。
〇この記事を読む前から為末氏については、現役選手にもかかわらず知的なイメージがあり、引退後も身体に関する様々な本も書いたりYou-tubeでも多くの動画を投稿したりしていましたので、関心をもっていました。
〇特に上記の内容では、「思考と身体の関連性」について、特別な人だけの限られた感覚ではなく、誰でも身近に経験していることを書いているところに一番感心しました。これは昨日の青山学院大学の福岡教授と共通です。
〇2月5日のブログに、人間の脳は、「ボーッ」としている方が、何かを考えているときよりも多くのエネルギーを使っていて、そのデフォルト・モード・ネットワークが働いているときは、あらかじめ蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアや発想が生まれやすくなる、つまり「創造性」に富む可能性があると書きました。これとも通じるものがあります。
〇私がこのブログで研究者などの話を引用する場合に、「人間の身体や宇宙の神秘みたいなことが多いのでは・・・?」と読んでお感じになっていられる方もいると思います。それはその通りで、私の一番の関心は常にそこにあります。
〇脳も含む人の身体はまだまだ不明瞭な部分が多く、これから解明されるだろうと思われるものもあります。例えば、「なんで手や足の指は5本なのか?」「どうして心臓の位置が少しだけ左寄りなのか?」など、まだまだあります。またそれは未知な宇宙を研究している方々のテーマと同じではないか?と思っています。
〇身体や宇宙の話からからいつも連想するのは、生徒たちの可能性の無限さです。自分が中学生くらいの頃、「将来自分はどんなことができるようになるのか・・」「でも今のままでは大したことはできないのではないか・・」などといつも期待と不安が入り混じっていました。
〇でも60年以上生きてきて今は生徒たちに、「大丈夫、あなたたちには自分でやろうと思ったことを実現するための力が、もうすでにその身体に潜んでいるからね」と自信をもって言ってあげられます。というか、そういうことを校長という立場ではなく、大人として伝えてあげなければいけない・・とさえ最近は感じます。
〇歩くこともその一つです。「歩くことなんてただの移動にすぎない・・」と私も若いころには割り切っていました。また思春期には時々部屋に閉じこもってあれこれと考えることも大切ですが、それに飽きたら思い切って外へ出て、自分の五感で感じたことを大切にしてもらいたいです。
須藤昌英
2月20日(木)ヒトはなぜ、歩くのか?(その1)
〇昨日までの千葉県公立高等学校入学者選抜で本校では、具合の悪い生徒などはおらず、全員無事に終えました。したがって追検査を受検する生徒もいません。結果は来月の4日です。良い結果を待ちます。
〇今日から来月の卒業式まで、20日間をきりました。3学年は来週から特別日課になります。生徒たちには3学年がそろって生活する残りの日々を大切にしてもらいたいです。
〇一年前のくらいの雑誌「Tarzan(ターザン)」に、生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一氏が、表題のテーマで随筆を投稿していました。その一部を引用させてもらいます。
〇まず副題が「誰に教えてもらわなくても、ヒトはあるとき歩き始める。実はそれは、生き物としてのとても希有で難しいアクト。大人になると我々は歩くことを億劫に感じてしまう。実はそれは、生き物としての在り方から遠ざかる行い。そもそも『歩く』という行為にどんな意味があるのか?」とあります。思わず内容に引きずり込まれてしまいました。
CHAPTER1(直立二足歩行の恩恵)
〇人間は生物の中でも非常に特殊な存在です。特殊性の一つは直立二足歩行をするということ。アライグマは立てますが一瞬ですし、鳥やかつて存在していた恐竜は二足歩行ですが体幹が前傾していて直立ではありません。重心が足の真上にあってすっくと立って歩けるのは人間だけなんです。
〇それ以前に比べて高いところから遠くを見渡せるようになり、獲物や敵をより早く見つけるようになりました。また手が使えるようになって、道具が扱えるようになり、同時に手をコミュニケーションの道具として使えるようになりました。肉親や友達などの手助けをし、これが他者と共存し共生する、利他的な行為になったと考えられます。
CHAPTER2(歩きこそ、動的平衡)
〇まず2本の脚で立つということが難しいんです。カラダの中を血液が循環していたり呼吸をすることで重心が常にゆらいでいるので、常にバランスを取り直さなければならないからです。この動きながらバランスを取ることが生きていることの本質、動的平衡です。
〇歩いて前に進むには一歩踏み出さなければならない。その結果、一本脚で立つ瞬間が生まれます。これは立つ以上に不安定な状況。でもあえて不安定な状態をつくり出すことによって、前に進む推進力を生み出す。そして不安定さを回収するために次の一歩を踏み出す。
CHAPTER3(生物の老いと、歩き)
〇「エントロピー増大」という宇宙の大原則があります。これは形あるものはいずれ必ず形がなくなる方向にしか動かない。(略)歩くという行為も同じです。元気なうちは脚を高く上げて大きな不安定さをつくり出せますが、歳を取ると筋力が衰えて、推進力も鈍くなります。
〇動物は常に新しい環境を求めて動き回ります。(略)ところが今は、インターネットやAIが何でも教えてくれる。自分自身が移動して新しい者を探索するのではなく、寝転んでネットを世界に触れられるので動いているという錯覚に陥ります。でもこれでは、エネルギー代謝も鈍るので、動的平衡の行為を放棄することになってしまいます。
最後に・・
〇脳は五感からさまざまな外部情報を取り込んで、それを交通整理する器官。予測不能な自然の中で感覚器官を全方位的に開いているときこそ、新しい思考が浮かんできます。歩こう。水辺を、公園を、森の中を。
〇いかかでしょうか?歩くという当たり前のことも、人類史上では多くの経緯があってのことだがわかります。私も意識して月に数度は、徒歩で出退勤をしています。自宅から学校へはたった2㎞(往復4㎞)ですが、朝や夕方に歩いていると、見慣れた風景でも新しい発見があって楽しくなります。自動的に様々な思いや新しい考えが整理されているような感覚を覚えます。
〇3年生との校長面接では、「何かを覚えたりするときに歩いたり口に出したりすると記憶に残りますよ」と数人にアドバイスしました。まさに福岡教授が指摘しているとおり、手足などの感覚を研ぎ澄ますことは、良い面が多くあります。人口知能AIは、自分の興味や関心などに関係なく多くの知識を蓄えていますが、ヒトは好きなことや知りたいことを徹底的に探究すれば良いので、その為には歩くのも有効です。
須藤昌英
2月19日(水)3学期期末テスト(1・2学年)
〇昨日の3年生の千葉県公立高校入学者選抜は、公共交通機関の遅れから、すべての高校で開始1時間遅れのスケジュールに急遽変更されました。ここまで大きなトラブルは私も経験した記憶がありません。
〇その後は無事に終わったようですが、引き続き今日も実施されます。それに合わせて、1・2年生は今年度最後の定期テストを昨日から受けています。
〇朝の登校時間にも参考書などを手に抱えている生徒も多く、意気込みが感じられます。中学生期は一生の中で一番、知識や技能を脳に蓄えたり身につけたりすることの出来きやすいので、今の自分(物忘れが徐々に多くなって)を考えるとうらやましい気がします。
〇前にも書きましたが、東大薬学部教授の池谷裕二氏よると、そもそも勉強は「復習」に主眼をおくべきで、覚えられる範囲をストレスなく覚えること、これが記憶の性質に適した学習方法です。比でいうと、『予習:学習:復習=0.5:1:4』が理想的だそうです。
〇池谷氏は、「脳の海馬という部位に入ってきた情報が溜まっている期間は、情報の種類によって異なりますが、短いと1か月程度です。海馬は情報を1か月かけて整理整頓し、『何が本当に必要な情報なのか』を選定しています。もし入ってきた情報を際限なく記憶していくと、脳のキャパシティーはいっぱいになり、パンクしてしまうということでしょう。」と指摘しています。
〇また心理学者ビネーは、「脳はインプット(入力)よりもアウトプット(出力)を重要視している」と示しているところから、復習の中でも手で書いたり口で話したりすること(アウトプット)で、海馬に「この情報はこれほど使用する機会が多いのか、ならば覚えねば・・」と判断させ、「短期記憶」から「長期記憶」に格上げさせることが有効な方法です。
〇つまり「詰込み型(ガツガツと一方的に覚える)」よりも「知識活用型(余裕をもって双方的に身体を使ってみる)」の方が効率的だということです。そのようなことから教科書や参考書を何度も見直すよりも、問題集などを何度も解く復習法の方が良いと言われています。
〇当然毎回の定期テストも「1つのアウトプットの機会」と考えられます。テストへ向けて準備をしてきたことを一気に押し出すように解答用紙に吐き出すイメージでしょうか。ただし私もそうでしたが、学習したことを正確にアウトプットするのも結構大変で、「失敗(不正解)」することも多々あります。
〇しかしまたその失敗が脳に強い刺激を与え、「あのとき失敗したからこそ今ではそのことをきちんと覚え理解できている」ということもあります。生徒たちの奮闘を期待します。
須藤昌英
【武道場前の紅梅は6分咲き】
2月18日(火)千葉県公立高等学校入学者選抜
〇いよいよ本日と明日、千葉県立及び柏市立高等学校の学力検査が行われます。昨日の給食の時間は、いつもよりもどことなく大人しく緊張感をもっていることを感じました。無事に自分の力を出し切れるように祈っています。
〇合同帰りの会を事前指導として体育館で行い、確認事項(時間、持ち物や身だしなみなど)に加え、「トラブル対応」も話しました。
【受検票を忘れた】
・あわてずに受付に『学校名、氏名、受検番号等』を申し出て相談する
・受検票は合格発表の際も必要なので、受検後も大切に保管する
【電車やバスを乗り間違えた】
・できるだけ公共交通機関を利用する(ただし感染症対策で車の場合は保護者判断)
・もし待ち合わせの相手がいてもその場所に時間とおりに来なければ、自分一人で予定通りに高校へ向かう
・もし間に合いそうになかったら、直接志望校に公衆電話等や近くのコンビニにお願いして連絡する
【体調不良(感染の疑い)】
・前日までに判明した場合には、富勢中に連絡する
・当日の場合には、直接志望校に連絡し、その後富勢中にも連絡する
・追検査(27日)を受けることになった場合、はやい回復を目指してしっかりと休養する
〇千葉県の入学者選抜の歴史をさかのぼると、今から38年前までは、一部の専門学科を除きすべての普通科では、1回のみ(2日間で行う学力検査等)でした。その後当時の文部省の通知で「受験機会については、同じ高等学校においても定員の一部を留保して、入学者選抜を2回にわたって実施するなど、受験生に複数の機会を与える工夫をすることが望ましい」とあったのを受けて、昭和61年度から平成14年度までは、「推薦」と「一般」に分かれ、徐々に募集定員に対する推薦枠を拡大(普通科で最大40%)していきました。
〇さらに平成15年度から22年度は、「推薦」に変わり「特色ある入学選抜」が導入され、生徒の多様な能力・適性等を多元的に評価するようになりました。そしてその理念を継承しつつ、3年前までは、「前期選抜(2月中旬)」と「後期選抜(2月下旬)」の2回行っていました。確かに受験生にとっては2回受けられるという精神的な安堵感や受験パターンを戦略的に構築できるなどのメリットはありました。
〇上記のような入学者選抜の推移をみると、単純に言えば今の制度は40年前に戻っているということですが、中学校の校長としては、「いつまでこのような選抜を行うのか・・、志願者はすべて入学させるような制度はいつになったら構築されるのか・・、少なくともそうなるための選抜方法の議論を不断に継続してほしい・・」などの疑問や要望があります。
〇学力検査(国語・社会・数学・理科・英語:マークシート解答)以外の検査については、各高等学校が決めて実施しています、いくつかを紹介します。
・面接(複数の面接官と受検生の個人面接や集団討論など)
・適性検査(作文・小論文を書く、運動・音楽の技能の検査など)
・自己表現(当日にパフォーマンスや実技等を行うなど)
・思考力を問う問題(論理的思考力や表現力などを問う内容)
〇公立高等学校を受検しない3年生は、1時間だけ登校しその後下校します。私立高等学校へ内定をもらっている生徒がほとんどですが、かれらも仲間の健闘を心から願っています。
〇過去には2月は雪の影響などで、受検会場に行くことを心配したことがありましたが、今日と明日はそれはないので、防寒対策をしっかりして、全力を出してほしいです。ガンバレ!126名!!
須藤昌英
【朝から良い梅の香りがただよい3年生を応援しています】