サーバー室のとなりから

明治43年の高等小学読本巻1

  30年程前に教育研究所に寄贈された古い教科書について昨年紹介した。その中で興味がわいた「読本」から一冊とりあげた。明治43年発行の『高等小学読本巻1』である。

明治36年に教科書が国定化され、明治40年には義務教育が4年から6年に延長された後の教科書である。尋常小学校6年を終えて進学する高等小学校、現在の中学校用に相当する教科書である。

写真で目次の一部を示したが、内容が実に幅広い、この巻1には第1~30課ある。例えば、

第3課の「真の知己」は走れメロスのような話であり、道徳の教材に使えそうである。

第5課の「布哇通信」はハワイからの便りで当時の島の様子がよくわかっておもしろい。

第7課の「頼山陽」ではその一生がコンパクトにまとまり、人となりがよくわかる伝記である。

第9課の「武器の変遷」は弓、刀、槍、鉄砲、機関銃、飛行機と武器を通して歴史が概観できる。

所々にリアルな挿絵もあり、読んでいて飽きない楽しい教科書である。全教科領域を網羅した、総合的な学習の明治版といえよう。ただ、読めない漢字も出てくるのが難点である。当時の生徒は読めたのだろうか。

巻2も読みたくなった。

12課以降は、ペートル大帝、風、太田道灌、都会と田舎、水遊び、資本、盲啞学校、言語、熱帯地方の果樹、象狩、伝染病、馬の忠義、万里の長城、共進会の模様を報ずる手紙、四季の月、盗人を誡む、害虫と益虫、スパルタ武士、母の愛