校長雑感ブログ

5月1日(月)自立とタンポポ

〇今日と明日は、連休の間ということもあり、今朝登校する生徒の表情も様々でした。ある生徒は「明後日からまた休みだから、今週は今日と明日だけ頑張ればいい」と言うかと思えば、別の生徒は「今日と明日も休みなら、もっとゆっくりできたのに・・」と本音をつぶやきます。これだけみても、人の見方や考え方は時として両極端があるなと思います。

〇5月に入ってもまだまだタンポポの花をよく見かけます。もともとタンポポはキク科の多年草で、一年でその生を終えるのではなく、深く土の中に根を張り、冬の寒さにもじっと耐えて咲きます。東京大学名誉教授で国際政治学者の猪口孝氏は、その著書「タンポポな生き方」の冒頭で次のように書いています。引用します。

「『生き方』を考える時、私がいつも思い浮かべるのはあの黄色い花、タンポポです。春に家の近くを歩いていると、塀と道路の狭い隙間や、ヒビの入ったアスファルトの割れ目などから、ヒョロリと首を持ち上げて咲くタンポポを見ることができます。その姿は明るく健気で、『頑張っているね』と思わず声をかけたくなります。(途中略)

踏みつけられても立派に花を咲かせ、次世代につなげるタンポポのような生き方は、青春を生きる人たちにはピッタリだと思います。青春を生きる人とは、年齢が若い人ばかりではありません。よりよい人生の意味を考える人すべてです。先生も親も、教育関連の人も含めた多くの人を指すのです。」

〇中学生には、「自ら主体性をもつ」ようにしてほしいと願っています。そのためには、まずは私も含めて大人である教職員が「ただの自立からその先の自律」へと意識を変えていくことが大切であり、「自立」は、「他人に頼らず、自分で独立した状態」ですが、「自律」は、「自分で考え、行動の主体となった状態」です。どちらも先ほどのタンポポの姿がオーバーラップしてきます。

〇さらに猪口先生は続けます。

「『あなたは自分の性格で好きなところはどんなところですか?』これなら答えられるかもしれません。では、『あなたの欠点と思われるところは?』について考えてみてください。こんなふうに少しずつ自分を分解して考えていくと、自分の輪郭がはっきりしてきます。なぜ自分のことを知る必要があるのかというと、誰でもいつかは自分の力で生きていかなければならないからです。そのときに、自分のことがわからなければ『自立』できません。(途中略)

他人にいわれなくても、自分がどんな人間かを自分で知るためには、まず何かをやってみることです。自分で何かをやろうとしたら、うまくいかなかった、次に方向を変えたらうまくいった、というように行動を重ねることで、だんだん自分の傾向がわかってきます。その傾向が個性と呼ばれる核となるものなのです」

〇生徒が「失敗したくないから・・」と尻込みする気持ちはわかります。でもそれは、「失敗は悪いこと、効率が悪いこと、恥ずかしいこと」という固定観念があるからです。そして生徒の固定観念は、そのほとんどが大人や社会の影響によるものです。以前から学校でも生徒たちに、「効率よく学ばせる」ことを最優先してきた経緯があります。生徒はある意味でその「犠牲者」になっていましたが、これからはそういう状況からはやく脱却しなければなりません。たとえ失敗してもその原因を探しているうちに、修正して再チャレンジしたくなるのが生徒の本性だと私は思います。

〇冒頭に書いた生徒の様子を、明日はもう少し別の視点から分析したいと思います。

須藤昌英