校長雑感ブログ

6月3日(金)最近の脳科学からわかること

〇先日紹介した、横浜創英中学・高等学校の工藤校長との共著で「自律するこの育て方」を執筆した応用神経科学者の青砥瑞人氏の見解も注目すべき点があります。長文ですが、引用させもらいます。

⇒ 考えたり記憶したりすることが人の成長や学びに大きなベクトルをもたらすこと、「学び」と「ウェルビーイング(しあわせ)」こそが教育の究極のゴールではないか。すなわち「率先して自分を成長させられる脳」かつ「率先して幸せな状態をつくることができる脳」を育てることが大切で、次の3点がそのためのポイント。

*脳の大原則①使わなければ失くすだけ

・普段から使っているネットワークはその状態を維持することができるが、使っていないネットワークは、休眠状態になるわけではなく、回路自体を切ってしまう。その理由は、脳の質量は体重の2%しかないのにもかかわらず、体内で使われるエネルギー(グルコース)は約25%を脳が占める

*脳の大原則② 人の意識は有限である

・人の脳のワーキングメモリーには限りがあり、同時にいくつもの作業はできない。このとき「どの情報を処理するか」を決定づけるのが、いわゆる「意識」や「注意」。脳の作業台(ワーキングメモリー)が雑多な情報やストレス、心配事などで散らかった状態のままでは、人は深い思考も高い集中力も発揮できない

*脳の大原則③ 人は本来ネガティブ思考が作動しやすい

・ネガティビティーバイアス(自己否定)に陥りやすい。その理由の一つは、脳の前頭前皮質には「エラー検知機能」があり、誤字脱字や計算ミス、他人の欠点や弱点を見抜く機能を備えている。また前帯状皮質には「自分のエラー検知機能」もあり、これは自分の欠点や弱点、自分の中の異変に注意を向けさせ、生存確率をあげようとする先天的な機能。もう一つの理由は、「人間の記憶の引き出し方」で、ポジティブよりもネガティブな記憶を強く思い出してしまう傾向がある。「人間は感情の生き物」でいかに理性的に考えようとしても難しい。子どもたちは褒められることよりもダメ出しされることに対して圧倒的に敏感。「子どもにダメ出ししたら、その分褒めればいい」という話ではない ⇒

〇特に私は、3つ目の「ネガティブな記憶を強く思い出してしまう」が大変気になりました。生徒に指導をする場面はたくさんありますが、それを「ダメ出し」と捉えさせるのではなく、「ここを直すともっと成長できるよ」というメッセージと受け止めてくれるようにしないと、本人のためを思っての指導が逆効果になってしまうなと感じました。

須藤昌英

(昨日の2学年林間学校より)