校長雑感ブログ

4月28日(金)アウトプットを前提としたインプットと自問自答

〇先日、精神科医の樺沢紫苑氏が著書(アウトプット大全)の中で、「心理学」「脳科学」の見地から、人間が学ぶ際には、「インプット時間の2倍近くをアウトプットに費やすようにする、つまりインプットとアウトプットの黄金比は3:7」と指摘していることを紹介しました。

〇その樺沢先生が、姉妹本である「インプット大全(サンクチュアリ出版)」において、学び方の本質にかかわる内容を書いています。引用させてもらいます。

「ロンドン大学の興味深い研究があります。あるものを暗記してもらう実験で、最初のグループには、『これが終わったらあとにテストをしますので、暗記してください』といいます。もうひとつのグループには、『これが終わったあとに他の人に教えてもらいますので、ちゃんと記憶してください』といいます。同じ時間をかけて暗記してもらい、両方のグループに同じテストをしました。結局、『教える』ことはしませんでしたが、『教えてもらいます』と伝えたグループのほうが高い得点をとったのです。『テストする』も『人に教える』も両方ともアウトプットですが、『教える』ほうが圧倒的に心理的プレッシャーの大きいアウトプットです。心理的プレッシャーのかかるアウトプットを前提にするだけで、実際にはそれをやらなかったとしても、脳は活性化し、より記憶力はアップし、学びの効果が上がるのです。」

〇いかかでしょうか?私も本を読むときに、ただ漠然と読むよりも、例えば「これは雑感ブログに内容を紹介したい」と思ったときの方が、頭に内容がスムーズに入ってきます。学校の授業でもこの心理を利用し、生徒に自分の考えを友達に説明(アウトプット)する機会を多くしています。生徒は相手に説明する際、自分は何がわかっていて、何が不明なのかを瞬時に判断し、説明を聞く相手の心情までを想像しています。

〇もう一つ、日頃から私も考えていることを、樺沢先生が後押ししてくれている箇所があります。引用します。

「『質問』は、自分の興味・関心をキャッチするアンテナを立てるための最も簡単な方法といえます。たとえば、『自分の短所は何か?』と自分で自分に質問します。『コミュニケーションが下手』と答えたならば、『コミュニケーションを上達させる方法』はないのか?とアンテナがたちます。脳は『質問』されると、その『答え』を探そうとするのです。」

〇これはいわゆる「自問自答」にあたります。わからないことを先生などに質問する前に、まずはこの「自分で自分に質問する」ことがその質問を焦点化します。私の経験からもよく考えている生徒は、「自問=素直に疑問を持つ力」と「自答=自分なりに仮説をたてる力」の2つを無意識レベルで繰り返しています。そしてこの力が、どの教科学習においても必要不可欠な力です。

〇この人間の心理をうまく活用しているのが、NHKの「チコちゃんに叱られる!」というクイズ番組です。日常に潜む素朴な疑問をテーマにしており、その質問は「人と別れるときに手を振るのはなぜ?」など、あらためて考えてみるとよくわからない問題ばかりです。でもチコちゃんに問われると、だれでもすぐに考え始めてしまいます。「自問自答」は、それを絶え間なく自分の中でやっているイメージです。逆にいえば私も含め大人の多くは、根本的な問題を「そんなこと考えても無駄」と切り捨て、自問自答する時間を避けている気がします。チコちゃんに「ボーっと生きている」と叱られないようにしないといけません。

須藤昌英