校長雑感ブログ

1月16日(月)「君ならどうする?」

〇今年のNHK大河ドラマは「どうする家康?」で、昨日2回目が放映されました。人気アイドルグループ嵐の松本潤さんが主役を務めているので、注目を集めているようです。私は内容も面白そうですが、それ以上にまずそのタイトルに興味を持ちました。

〇2学期の保護者会の中でも話しましたが、学校での授業内容が、「いつでも使える知識」となるためには、知っているや分かっているだけでなく、「では自分ならその場合にどうするか?」と当事者意識をもつことが最大のポイントです。「江戸に幕府を開いたのは誰で、いつ?」から「家康が江戸に幕府を開いたのはなぜ?」へ、さらに「君が家康だとしたらどこに幕府を開くか?」へとその問いが段々と深くなっていくことで、生徒の当事者意識を引き出していく授業が理想です。

〇中学校3年間は、発達心理学からみると思春期前期にあたり、「自分はどういう人間か」と「周囲から自分はどのように見られているのか」の間で葛藤し、それを乗り越えて「アイデンデティー(自我同一性)」を獲得する大切な時間です。でもそのためには授業の中で、常に「自分はこう考えたが、友達はそう考えるのか」を繰り返し経験することが近道になります。ただ「教科書にそう書いてあるし、先生も同じことを言っているから・・」と受け身になっているのはもったいないと思います。

〇さらにこのドラマでは、最初は気弱で何も決断できなかった家康が、周囲の助けを受けながら少しずつ成長していく姿を描くようです。没後に「東照大権現」と神としてあがめられている家康ですので、さぞトップダウン型で家来たちをリードしていたかのようなイメージを持ちますが、ドラマでは優秀な家来からの進言を大切にし、結果として二百六十年も続いた幕府をつくったことを描くようです。このように適切に周囲に「ヘルプ」を出せることが、リーダーにとどまらずこれから「自立・自律」をする生徒には欠かすことのできない資質とも思います。

〇よく昔からそれぞれの人柄をたとえ話で、織田信長「鳴かぬなら殺してしまえほととぎす」、豊臣秀吉「鳴かぬなら鳴かせてみせようほととぎす」、家康「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」は有名ですので、3人の中では一番我慢強いイメージはありますが、晩年の“狸親父(たぬきおやじ)”も強いイメージとしてあるので、“気弱なプリンス”像とのギャップを楽しみ?ながら観ていきたいと思います。

〇今の本校にはいませんが、昭和の終わりから平成にかけて、教員の指導などまったくきかず、授業エスケープなど勝手な振る舞いをする生徒も各校には数人ずつくらいいました。私も自分のクラスや生徒指導担当として他のクラスにいるそのような生徒と向き合ってきましたが、こちらから「~しなさい」と言ってもまったく耳をかしません。その時に必ず使った魔法の言葉があります。それが「君はいったいどうしたいの?」です。中学生ですから当然今やっていることは間違っていていることを生徒本人は心の片隅で自覚しています。しかし実際にはその反面、自分ではどうしようもない心の葛藤を抱えています。そのとき、自分の本心を言葉で発することで、自然と落ち着きを取り戻します。そしてその生徒が「実は~したい」と言うことをまずはこちらが受け止め、「では次は~したらどうかな?」と話を続けていくと、噓のようにその後はこちらの話も聞くようになったものでした。

〇ご家庭でも生徒本人に判断を任せるよう機会をみつけ、「〇〇ならどうする?」と問いかけてみてください。すぐに答えなくてもあまりせかさずに見守ってください。その問いかけをされると、「自分は信頼されているから尋ねられているのだ!」とわかる時が来ます。

須藤昌英