校長雑感ブログ

5月2日(火)デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)

〇今日は柏市内一斉に教員の研修会があるため、生徒は3時間授業で下校となります。しかも明日からゴールデンウイークも後半で、5連休に入ります。時間をもてあまし、「何もしないで一日ボーッと過ごすことが多い」という生徒も多いかもしれません。保護者会でも話しましたが、効率(コスパ・タイパ・スぺパ)を優先する傾向のある現代では、これを「時間の無駄」と切り捨てる風潮があります。しかしその一方で、生涯にわたって学び続ける上には、この「無駄」と思われることが、案外意味があるということがわかってきています。

〇それが脳科学の分野で研究が進んでいる「デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network)」という状態で、端的にいうと、ぼんやりした状態の脳が行なっている神経活動のことです。ある一つのことに集中したり注意が払われたりするのではなく、ただぼんやりとしてあれやこれやと雑念している時や睡眠中の脳が示す神経活動のパターンのようです。

〇これはよく車のイメージに例えられ、デフォルト・モード・ネットワークは、車のエンジンのスイッチはONですが実際には走行していない時の「アイドリング状態」です。日常生活の中で、何も考えずにボーッと散歩しているとき、一息つくために好きな飲み物を飲んでいるとき、身体がリラックスした状態で入浴をしているときなどに、デフォルト・モード・ネットワークは活発化しています。

〇脳神経外科医の奥村歩氏によると、脳は以下のプロセスで情報を処理しているのだそうです。

1 入力(インプット):五感を通して情報を収集する

2 整理:(DMN)入力した情報を取捨選択する

3 出力(アウトプット):言葉や行動として表す

デフォルト・モード・ネットワークが重要になるのは、2番目の「整理」段階で、この状態で自分の過去の経験や記憶を整理・統合したり、これから起きる出来事にどう対応したりするかを想定しています。

〇逆にデフォルト・モード・ネットワークの働きが弱いと、脳内で情報が整理されず、物が散乱した机上のような「脳過労」状態になり、インプットした情報が脳に定着しづらくなったり、脳の活動自体が低下してスムーズなアウトプットにつながらなかったりするといった恐れがあるそうです。脳内にたまった情報をスッキリと片づけ、脳疲労を防ぐためにも、DMNをオンにすることは重要です。

〇一番注目したいのは、デフォルト・モード・ネットワークの働きは「創造性」と関係しているらしいことです。これが活発になるとあらかじめ蓄えられた情報がそれぞれ結びつきやすくなり、新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。私も先ほどのように散歩などをしてリラックスして過ごす時間に、フッと「そうだ!あれをやってみよう」などの思い付きがあります。これを実行に移すアウトプットは、どこか楽しくたとえ予想通りの結果が得られなくても、次のチャレンジの意欲につながっていることが多いです。

〇ただデフォルト・モード・ネットワークが活発化していると、脳内では通常時よりも数倍以上のエネルギーを必要としているそうです。つまり「ボーッ」としている方が、何かを考えているときよりもエネルギーを使っていることは意外な感じがしますが、それほど重要だともいえます。

〇少し時間があると、大人も子どもスマホとにらめっこして、ボーッとする時間が少ないようです。もしお子様がボーッとしていても、脳はその子に新しいアイデアを用意してくれているかもしれません。ぜひ「何か思いついた?」のような声掛けをしてあげてください。

須藤昌英