校長雑感ブログ

1月31日(火)素直と成長(自主性があると未来が開ける)

〇昔から「素直な子はのびる」と言われますが、「素直」とは誰からみたものかによっても変わってきます。広辞苑で「素直」を調べてみると、「①飾り気なくありのままなこと。曲がったり癖があったりしないさま。質朴。淳朴。②心の正しいこと。正直。③おだやかで人にさからわないこと。従順。柔和。「忠告を―に聞く」④物事がすんなりゆくこと。とどこおりないさま。⑤技芸などで、癖がなく、すっきりしていること。「―な字」」とあります。

〇まず親や教員からの視点で素直とは、「きちんと言われたことをやり、たとえ間違いを指摘されても反意を示さずになおそうとする」が一番強いイメージだと思います。乳幼児期は初めて挑戦することばかりで成功と失敗を繰り返しながら、コミュニケーションやその他のスキルを身につけていきます。その際は「~したらいいよ」と大人の意見をまずはそのまま受け入れる子がほとんどだと思います。しかし中学生になって、乳幼児と同じ質の「素直」であったならば、それはそれで心配になります。

〇逆に「素直さが欠けている」となると、「自分の非を認められない、人の話を聞こうとしない、わからないことをそのままにしておく、自分のやり方に固執する、人に感謝ができない」など、大人からみると「厄介な子」となるのでしょう。私なども小学校高学年から中学生の頃は、「これではいけない」と思っていても、指摘された内容よりも、「~しなさい」に対して理由もなく反感を抱いていました。しかしだれもが成長過程で一時期にそうであったのではないでしょうか。素直になれない原因は、他人と自分の違いを意識したり、自分は自分で考えてやってみたいと思ったりすることが多くなったわけですので、ある意味「順調な成長」とも受け止められます。

〇では中学生以上の青年期の「素直」とはどんなことでしょうか?私は何より、だれもがもっている自分の「弱さ」と向きあえるかどうかだと思います。私たちは不完全な存在ですから、至らないことも間違うことも、すぐにはできないこともたくさんあります。それでも生きていく中で、小さな気づきとか発見をすることがあります。そこでそれがたとえささやかな気づきであっても、「あーなるほどそうだったのか」「これまで自分は間違っていたなぁ」と気づくことができます。

〇そしてその弱さや不完全さに誠実に向き合い、気づいたことをためらわずに、これからの生き方に反映できる、それが「素直」であり、そういう自分も大人でありながら「そうありたい」と常々思っています。ただしそのためには、自分の中に自己を認め肯定する気持ちが絶対に必要です。私もクラス担任として生徒に注意をするときに、やっていることは間違っているけれど、それをやっている生徒本人を否定すること(こちらがそう思っていなくても相手がそう思うことも含めて)が極力ないようにしてきました。

〇北海道にある植松電機という会社は、解体やリサイクルを主事業としつつ宇宙開発(ロケット制作)にも実績があります。その植松社長さんは、幼いころから宇宙への憧れをもっていましたが、親や先生に「どうせ無理だよ」という言葉を浴びせられながら、最後は自分の信念を貫いた人です。そこから会社に児童生徒を招待してロケットを見せたり、「思うは招く」というメッセージを送ったりしています。一度Youtubeですが講演会を視聴したら、「若い時に苦しくなったときは、自分で自分自身に『ただいま成長中!』と言えばいいんです。』との言葉が印象に残っています。

〇今の日本には様々な課題はありますが、少なくともだれもが「自分の人生に対して、自分で決めていける」環境は用意されています。自分で決めることで、何かうまくいかないことにぶつかっても、人のせいや条件のせいにして逃げることを踏みとどまることができます。

「素直」・・今の自分を大切にし(自己肯定感)、将来の自分に期待する(自己有用感)生徒 を育てていくことが、学校の使命だと思います。

須藤昌英