創立79年目 学び成長し続ける富勢中
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1月23日(木)学びの主体としての記憶の種類と授業研究
〇昨日は6つの授業において、市教委から指導主事を招き、授業検討会を行ないました。教職員には研修の義務があり、その項目の一丁目一番地は授業研究(いかに工夫して展開するか)です。以前は「生徒にとってわかりやすい授業」を目指していましたが、今は「生徒が学びの主体となり、自ら学びに向かう」ための工夫が焦点となっています。
〇教員はもちろん丁寧に基本事項などを生徒に教える技術も必要ですが、「生徒にとってわかりやすい授業」となると教員側の視点に重きがおかれ、どうしても生徒は「受け身」の立場になってしまいます。そうではなく「生徒はすでに自ら学ぶ力をもっており、その力を引き出しつつ授業の最後にはより深い学びに導く」ことを教員の一番大切な視点にしています。
〇高校入試が連日行われ、3年生の生徒たちは中学校3年間の授業内容を復習して試験問題に取り組んでいます。言うまでもなくすべての学習の基本は、「まず覚えられる範囲で基礎的な事項を覚えつつ、次に理解できた事項を確実にいつでも使える知識にする」ことです。
〇記憶をつかさどる人間の脳の海馬については前にも書きましたが、海馬の活躍に期待するのには、テスト準備の期間中もできるだけ睡眠を確保し、食事や運動を含め規則正しい生活をすることが重要です。
〇昔から「一夜漬け」つまり直前に詰め込むやり方の是非が議論されてきましたが、「一夜漬け」のようなものを「集中学習」と呼ぶに対し、逆に毎日コツコツ勉強することを「分散学習」といいます。ただし「分散」とは注意力が散漫で集中していないという意味ではなく、時間を区切って少しずつ行うことです。
〇また学習とは、「ものごとの関連性を習得すること」でもあり、今まで独立していた事実が頭の中でつながることです。簡単な例では、「GO」と「行く」のように、英語と日本語の意味の結び付けを行うことがあげられます。このつながりを強固にするには、繰り返し「学び続ける」しかありません。
〇「上手に覚える」ような成功を導き出すためには、それだけ多くの失敗が必要で、記憶とは「失敗」と「繰り返し」で形成・強化されます。何度も失敗すると、それでやる気がなくなっていきそうになりますが、その解決策の一つが、「得意な面を活かして学習する」ことです。苦手な教科は誰にでもあるもので、その苦手分野でクヨクヨせず、逆に得意を素直に活かすと、全体として成績が上昇することが知られており、教育心理学では「特恵効果」といいます。
〇これはテスト当日にもあてはまります。テストを受けている際中も、自分の得意な問題から手を付け、そこから自信がつくと、やる気や集中力が高まります。よく食事で、「美味しいものを最後に食べる」「美味しいものは最初に食べる」のような話がありますが、学習については圧倒的に後者が有利で、「得意なものは最初にとりかかる」です。
〇このような学び手の科学的な学習の仕組みを教える側の教職員も理解した上で、冒頭のような教材研究をしていかないといけません。授業後の検討会でも授業者、参観者、指導主事の中で活発な意見交換がありました。私もそうでしたが、このような話し合いでは目の前に生徒たちが学びに向かう姿を思い浮かべながら行っています。「次の時間ではこんな工夫をしてみよう?」これがまた教職員としてはとても楽しい時間なのです。
〇また今日も各クラスで行われている授業を参観していきます。
須藤昌英