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活用する力

 ヒンディー語に「Jugaad(ジュガール)」という言葉があります。日本語には該当する言葉がないので翻訳するのが難しいのですが、「最低限の道具や材料でどうにかして問題を解決すること」というような意味があります。

 フランス語にも「Bricolage(ブリコラージュ)」という言葉があって、「ありあわせの材料や持ち合わせた道具で現状を切り抜けること」というような意味です。もともとは「取り繕う」「誤魔化す」といったニュアンスがあったのですが、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースがブリコラージュには「創造性」や「機智」が必要で、それらは人類が古代から持っていた知の在り方であると紹介したことから、ポジティブな意味で使われるようになりました。

 この、自分が知っていることを活用する力こそ、「生きる力」の本質なのではないでしょうか。これはブルーム・タキソノミーの「適応」「分析」「総合」「評価」に対応します。もちろんベースとなりツールとなる知識や技術を習得していくことは基本なのですが、大事なのは、それを問題解決の手段にできること、それぞれの現場で活用できることのはずです。知らない・できないからあきらめる、というようなことがないようにするのがこれからの教育の中心課題だと言えます。

 

         『先生、この「問題」教えられますか?教育改革時代の学びの教科書』

                         石川一郎・矢萩邦彦 共著 洋泉社 より抜粋

 

「ありあわせの材料や持ち合わせた道具で現状を切り抜ける」ためには、持っている材料や道具は多いに越したことはないはずです。学校で学んだり経験したりすることは必ず役に立ちます。というより、自分が今現在持っている知識や経験をどう生かすのかということが重要になるわけです。つまり、一番よくない姿勢としていえることは「これはやっても意味がない」とか「受験に出ない」とか、今の価値観で学びを止めてしまうことだと思います。学び続けることで多くの材料や道具を手に入れることができるのだと思います。