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授業で勝負!(6年生)
6年生の教室をのぞくと,真剣な話し合いが行われていました。
「川とノリオ」という教材を扱った国語の授業です。
昔から6年生の国語の教科書に載っているお話なので,保護者の方の中には記憶されている方も多いかと思います。
戦争を扱った教材です。
美しい情景描写や多彩な比喩表現を使いながら,戦争の中で成長する一人の少年「ノリオ」を描いた作品です。
川は,流れる時間や変わりゆく状況を象徴してノリオにとって,癒しの場であり思索の場でもあります。
表現は独特で,内容を深く読み取るりは,表現の細部まで目を配り,想像力をふくらませなければなりません。
話を戻します。6年生の教室です。
実はこのクラス,とても明るく活気のある子どもたちなんです。
ですから,いつもですと,教室に足を踏み入れるなり,「校長先生こんにちは!」と元気なあいさつが聞こえてきます。
ところが,今日は違いました。
何やら教室がしんとしています。とても落ち着いた雰囲気,というよりも空気に重みを感じました。
そして,子どもたちは次々と真剣に意見を発表しています。
それもそのはずです。子どもたちは完全に,「川とノリオ」の物語の世界に入り込んでいたのです。
授業は終盤に差し掛かっていました。
この時間の学習問題は「川はどんな様子で,戦争に行く父はどんな様子だろうか」でした。
黒板には子どもたちの発言した意見が所狭しと書かれています。
私は心の中で「すごい!」と思いました。
その理由は二つあります。
第1に,子どもたちの読み取りが深かったからです。
子どもたちの思考は,「戦争に行く父親」だけでなく,それを見送っている母親にも及んでいました。
いかに子どもたちが真剣に物語文に向かっているのかが一目でわかりました。
「すごい」の二つ目の理由。それは授業をしていた先生が素晴らしいからです。
この教材を扱う授業は実に難しいのです。
それは,冒頭に述べた通り,この物語の独特な世界観に起因します。
力量のある先生でないと,「良い授業」が成り立たちません。
授業後,先生にインタビューをしました。すると,こんな答えが返ってきました。
「私も『いい国語の授業』がしたいので,先輩の先生の授業を参観させていただいて,勉強しました。このような形で授業ができるまでに10年かかりました。」
そうなんです。子どもたちを惹きつけ,思考を深めさせ,深い学びにつながる授業を行うために,教師は日々努力を続けています。
「これではだめだ,もっといい授業がしたい。」そう思いながら,長い年月をかけて,授業を創り上げていくのです。
どうして,そんなにがんばることができるのか。
それは,いい授業ができた時の,子どもたちの目の輝きが忘れられないからです。その姿が見たいからです。
この写真を見てください。
今日の授業のまとめを書いている子どもたちの様子です。
真剣に話し合いをしただけに,授業のまとめにも力が入ります。
子どもたちのノートから,いくつかご紹介します。
★川は,昔から流れているノリオにとって親しいものだった。父は,どうしても行かなければならないことに母と悲しんでいた。そして,ノリオに愛をこめていた。
★ノリオが言った言葉には,「まだ幼いからこそわかるんだなぁ」と思いました。そして,「川」の表現や,夕焼けを見てどう思ったかなどの,悲しい思いが伝わり,川が昔からの友達みたいな存在だと改めてわかりました。自分がもしノリオの立場だったら,絶対にノリオと同じく,「父さんが必ず帰ってくる」と信じています。もし私が母さんの立場だったら,「もう父さんはいないし」とくじけてしまいます。父さんの分までと考えるお母さんはすごいと思いました。
★ぼくは,○○さんの「『すすきのほ』がいってらっしゃいのよう」ということを聞いて,新たな発見をする小尾ができました。最初はあまり思いつかなかったけれど,○○さんなどのたくさんの意見を聞いて,たくさんの考え方を発見できました。例えば,「川はいっときの絶え間もなく=戦争も続いている」という考え方や,「夕焼けをながめていた=生きて帰ってきて」など,たくさんの発見ができました。
今日は,「プロの教師」が展開する「本物の授業」についての話題をお送りしました。
そういえば今日の授業,「プロの技を盗もう」と,若手教員が熱心に参観していましたっけ。(^^♪
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