校長コラム

「伝 え 合 う こ と の 大 切 さ」

 「会話で気持ちが伝わらない。」,そんなことを感じたことはありませんか。ライン,ツイッター,メール,ブログなど,情報機器用語にとまどいを感じる大人も多くいます。しかし,若者の世界では「伝え合う手段」として極めて当たり前のことになっています。日々,子ども達の生活を見ていると,「伝え合う力」の不足からいざこざへと発展する例が見られます。「ごめんなさい」,「ありがとう」の一言が出ないばかりに気まずい集団生活を送ることもあります。でも,面と向かって言えない「ごめんなさい」が,スマホ,タブレット,パソコン等の画面を通してのラインやメールでは言える,それは相手の反応を見ずにすむからです。相手の目を見て,時には頭をさげて「ごめんなさい」と謝る,それが心や気持ちを伝えること,と教えられた世代には考えにくい行動です。電話の声の向こうに相手の思いが見えると言われますが,ラインやメールの向こうに本当の思いが見えるのでしょうか。言いづらいこともラインやメールでは言える,逆を返せば攻撃の言葉もラインやメールでは言えるのです。しかも,相手の怒りや悲しみの表情は見えず,ゲームのようにボタンを押すだけで何度でも攻撃することができます。ゲームの世界ではリセットで人は蘇りますが,現実の社会はリセットでは心の痛みは消えません。
 「友だちは百人なんていらない…今の若い人は,スマホやネットでつながった友だちを一人でも増やそうとしているようなきらいがありますが,一人の人間に百人の友だちがいるほうがおかしな話で,むりやりに友だちの輪を広げても仕方ありません。知って欲しいのは,人間はいくつになっても基本的に一人なのだということ。」、作家,宮部みゆきさんが「親と子で考える 14才からの人生学」で書いている「十四才。人生にはまだまだ先がある」の一節です。「スマホ等のアドレス帳の人数が友だちの数」,そんな妄想から抜け出ない限り真の友はできません。共に汗を流し,会話を交わしながら,互いに理解し合い真の友となっていく,それが思春期には大切なことではないでしょうか。また、「伝え合う」ための力を蓄えるためには,時には友だちから離れ一人読書の世界に浸ることも大切です。
 「伝え合う言葉」,国語の教科書の題名です。教科のみならず全ての教育活動を通して,子ども達の「伝え合うことの大切さ」を教えていきたいと思います。


                                      柏の葉中学校校長 加藤定浩